「園子温」恋の罪 Yさんの映画レビュー(感想・評価)
園子温
「冷たい熱帯魚」と同じで、心の奥底にある願望を満たす映画だと感じた。その対象が男か女かの違いで、「冷たい熱帯魚」は男が主体で女が対象、「恋の罪」は女が主体で男が対象。でも結局その願望を満たすってゆう行為のその先にあるのは破滅というのは同じ。だけど、「恋の罪」は主人公が死ななかったからちょっと違うのかも。でんでんと冨樫真はどちらもその育ちに言及してることからも、自らの願望を満たした果ての破滅だと考えられるけど、吹越満も最後死ぬのに対して、水野美紀の最後のセリフ、「分からん」というのは、この状況とか愛人の言葉とかをバカバカしく感じてるようにも聞こえた。久しぶりに家族そろってご飯食べたくなったのよとか言ってたし、願望を満たしたいけどその先に待つ破滅(自殺と今回の殺人で2回)を目の当たりにしたから、それよりこの幸せな家族ってゆうものを求める選択をしたようにも見える。神楽坂恵の最後のシーンはその反対で、そういう幸せとかをあきらめて欲望のまま生きることを選んで、その結果めちゃくちゃ満たされた顔してるけど、その先に待つのは破滅だけ。その両立は無理。それは男も女も同じ。でもどっちが良いのか、どっちがおれにとって良いことなのか、今の時点で決めかねる。中村文則の「掏摸」でも結局幸せを求める側に行くし、「恋の罪」も結局、願望を満たした先にあるのは破滅だけ。でも、その破滅を肯定できたら話は全く変わってくるんじゃないか。破滅、すなわち死は、幸せに生きようが欲望のまま生きようが変わらずやってくる。そこに違いはない。ならどっちでも同じじゃない?今のままで幸せな自分を想像できないなら、一旦神楽坂恵のように欲望に素直になって、心の奥底にある願望を、こうやって園子温の映画を見るだけじゃなくて、実際に満たしてみても良いのかもしれない。どっちにしたって今のおれの人生は幸せとは言えないんだから。