はやぶさ 遥かなる帰還のレビュー・感想・評価
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ボロをまとったマリリン・モンロー
映画「はやぶさ 遥かなる帰還」(瀧本智行監督)から。
小惑星探査機「はやぶさ」打ち上げ直前に訪れた「NASA」の関係者が、
宇宙のはるか彼方へと送り出す「追跡管制室」をこう例えた。
「ここはボロをまとったマリリン・モンローだ」と。
NASAの管制室と比べると、月とスッポンほどの差があるが、
大切なのは、ロケットの完成度であり、スタッフの技術力だと、
皮肉ながらも、私は彼らの「嫉妬」とも受け止めることができた。
要は「外見ではなく、中身だ」・・そう言う意味で使われたと思う。
下町の工場は、小説「下町ロケット」(池井戸純著)を彷彿させるし、
宇宙のトラブルは映画「アポロ13」(ロン・ハワード監督)を思い出した。
しかし本当の意味の「ボロをまとったマリリン・モンロー」は、
管制室ではなく、小惑星探査機「はやぶさ」ではないだろうか。
宇宙を旅している時の姿は美しいし、度重なるトラブル・アクシデントも
多くの人の協力で、なんとか乗り切っていく。
最後は、美しい地球の姿を撮影して、大気圏で燃え尽きちゃったけれど、
波瀾万丈の人生を送って燃え尽きた「マリリン・モンロー」に例えても、
けっして誇大な表現ではない快挙には違いないのだから。
「燃え尽きたか・・」の関係者の台詞に、辻井伸行さんの音楽が重なり、
「はやぶさ」に感情移入して、涙腺が緩んだ私がいた。
この作品の主役は、やっぱり「はやぶさ」だな、
人間の私からみても、この小惑星探査機はカッコ良かったから。
頑張れ町工場。
記念すべき、はやぶさ映画、第二弾!
今回のは渡辺謙主演で、いかにも東映らしい(?)
人間ドラマがメインの泥臭い内容の作品だった。
第一弾(竹内結子の)と比べてどうかといわれると、
まぁ好き好きですよねぇ^^;としか言えないが、
私的には第一弾はエンターテインメントであり、
この第二弾は熱血人間ドラマだなぁーと思う。
はやぶさ本体の作りや操作性など、惑星探査機の
あれこれは第三弾にお任せするいうことにして^^;
それぞれに特色があるので、いいのでは?と思う。
(どうでもいいけどこの三作、タイトルでの分類が
面倒くさいので、よくある邦画タイトルのように…)
「竹内結子のはやぶさ。」
「渡辺謙のはやぶさ。」
「藤原竜也のはやぶさ。」
…じや、ダメなの?その方が分かりやすいんだけどな。
さて真面目に。本作は…
はやぶさに関わった人間達を深く掘り下げ、その葛藤や
意見の相違などのぶつかり合いを、これでもかと見せる。
開発者達の熱意と、それに応えようと頑張るはやぶさの
イオンエンジンの光が痛々しいほどに胸に迫ってくる。
第一弾でもそのシーンはあったが、これほどの人間ドラマ
があったとは…なのでこれはこれで観て良かったと思える。
いかに沢山の人間が関わっていたかというのが見せ場。
民間のサラリーマンでありながらイオンエンジン開発者の
吉岡秀隆がクロス運転を巡り、江口洋介とぶつかるシーン、
試作品を請け負った町工場の親父・山崎努と娘の夏川結衣、
工場に興味を持つ孫との触れ合い、そして神頼みのシーン、
どんな天才でも、どんな冷静沈着な人間でも、やっぱり
最後は神頼みなワケだ…というのに、なんだかホッとした。
長い壮大なプロジェクトには相当の予算が必要なワケで、
巧くいって何歩、巧くいかなくても何歩、彼らの熱意が
すぐさま資金に代わるものなら、幾らでも生み出せたろうに。
開発者達が何を考え、どれほどの苦悩を抱え、それでもなお
消えない熱意と希望が胸を梳くという、リアルで温かい物語。
同じ題材で同じ動向を辿るストーリーでも、作り手の見解で
これほど映画の内容は変わる、といういい例だと思う。
第一弾で「宇宙バカ」という台詞を褒めちぎったが、
今作でもそれは十分に使える。どれほど冷静に考えようと、
諦めるべきだと追い詰められようと、自分の信念をそんなに
簡単に捨ててたまるか!という熱意。世間の興味は一時的に
それを持て囃し、成功すればもちろん大ニュースに化そうが、
失敗すれば総スカンなのである。あのNASAでさえも…(汗)
技術開発に勤しむ人々には、大いに励みになるのではないか。
だけど惜しむらくは、高い技術力を誇りながら(中小ゆえに)
経営が成り立たない町工場の現状である。
どんなハイテクが世間を賑わしても、たった一つのその部品が
そこの技術でしか生み出せないものだったらどうなのだろう。
人間が作り出すものには、まずはその人間を育てることから
きちんと始めないと、豊かな創造力なんて拝めっこないのだ。
(しかし何回観てもはやぶさ帰還の映像は泣ける…よくぞ帰った!)
別角度の宇宙から描くはやぶさと人間のドラマ
はやぶさを取材した映画やと去年、堤幸彦版が公開されており、展開に新鮮味は薄まっているが、人間ドラマとしての味わいはまた違う面白さが有った。
堤版では案内スタッフの竹内結子が可愛らしく丁寧に説明してくれるので、解りやすさを強調していたのが大きな特徴。
それをふまえたうえなのか、今作のナビゲーターは、プロジェクト責任者の渡辺謙が務める。
チームのトップが総指揮を取っている姿を追っているため、計画の中身に更に一歩踏み込んだ世界観に仕上がっていた。
より濃密に工程を描写する故、内容面が難解になり、把握しづらくなる恐れが高い。
そんな眠気防止のため、女性記者・夏川結衣の父親であり、部品の製造者でもある下町工場の社長・山崎努にクローズアップしているのが、今作の大きな特徴。
協力者の心中に迫る事で、堤版とは違う深さの人間ドラマを発掘している。
スタッフの江口洋介と吉岡秀隆との熱い衝突もとても見応え有り、危機感を煽り、息を呑む。
神社で山崎努と渡辺謙が帰還の祈願をするツーショットを観た時、
「あれ!?この2人の光景どこかで観たなぁ〜」としばし、考え込んでしまった。
鑑賞後、温か〜いラーメン食って帰りたいなぁ〜と思った際、
「あっ、そうや、タンポポやがな〜!!」
と、ようやく思い出した。
伊丹映画で一番好きな作品だったんだよねぇ〜。
たしか、ガンさんとロクちゃんやったっけ?!
(役名は思い出せない…)
あの時は最強のラーメン屋作りに切磋琢磨していたけど、30年近く経た今じゃ〜最強の宇宙衛星作りやもんねぇ〜〜。
つくづく時代の流れを感ずる。
私は何か変えられたことがあっただろうか?
夜空の星を見上げて、ふと呟く。
まっ、いいや。
ラーメン食って帰ろ〜っと。
その前に短歌を一首
『宇宙(そら)の波 乗り越え掴む 星の砂 のぞみ燃えども 夢を見上げて』
by全竜
はやぶさは燃え尽きたが、私たちの心の中で永遠に輝き続ける。
私達と大きくは変わらぬ等身大のヒーロー達は、不屈の情熱で、試練を乗り越え、はやぶさは満身創痍で地球へ帰還する世界的快挙を成し遂げた。はやぶさが燃え尽きる前に撮影した不鮮明な地球の写真は、あたかも、はやぶさの地球に対する万感の思いも映っているようだ。はやぶさには間違いなくはやぶさを愛する日本人達の魂が乗り移っていたのだ。はやぶさは、オーストラリアの上空で明るい流星のように燃え尽きたが、そのはやぶさの魂は失われることなく、私たちの心の中で永遠に輝き続ける。あなたにとっての『はやぶさ』とは何かと問いかけながら。
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