「ク-リングオフって何すか?」戦火の馬 しんざんさんの映画レビュー(感想・評価)
ク-リングオフって何すか?
安心安全なスピルバーグ印である。
スタッフも毎度いつものメンバーでそこにはいつもの映像、音楽がある。
それは間違いなく今回も素晴らしい。
そしてスピルバーグらしい甘さと残酷さもいつもどおりある。
そういう意味で安心安全しるし。
けど気に入らない点も多い。
前半は親父がサラブレッドをセリ落とす点にどうしても納得がいかないし、サラブレッドがいるぐらいなら、草レースもあろうもんだが、レースに出さず、農耕馬に仕立てようとすることも引っかかり、映画に乗り切れなくさせる。親父のかっこよさはおふくろさんのセリフにしかなく、ダメ親父にしか見えないのはイタい。
まあ、中盤の展開ありき、だからここは我慢しよう。
しかしラストの、下のレビュアーAKIRAさんの素晴らしいレビューの
「『勇気』と『誇り』が伝わる美しいエンディング」
はまったくそう思うんだが、親父がそんなだから、その美しい映像ほどの「心情的な感動」は無いんだよね。
馬のジョーイは人間だったら真っ先に戦死してしまいそうな、前に出るタイプとして描かれちゃっているので、いささかヒーローくさく、そこはマイナス。一方、別に元の飼い主のところに帰りたかったわけでなく、世渡り上手な部分もあったりしてる。
そんなジョーイも散々振り回され、重火器や戦車に関わり、しまいにぶちキレ、
「おまえらなにしよるんなら」
と駆けずりまわる姿は同情するし、馬に共感してしまう。
その後がこれまた痛そうなんだよね。
スピルバーグさん、好きねぇ。
しかし馬でいうと、もっと馬が走るシーンを見たかったというのもある。
戦時中の各エピソードはいずれも急に非常にドライな形でそれぞれ幕を閉じる。それはそれでいいとは思うんだけど、ジョーイのドラマチックな性格付けとドライな展開がどうもかみ合わない感じがどうしてもあった。
ジョーイを挟んでの敵同士のやり取りはあんまり好きではない。あざといんだもん。まあ、らしいっちゃらしいか。
そんな感じで全編良くも悪くもスピルバーグ印のドラマチックな演出で終始しているので、オレのように違和感を感じる人もいるだろうが、まったく違和感を感じない人もいておかしくない。それはそれでいいんじゃない。
スピルバーグを観に行ったんなら、間違いなくスピルバーグを観た、と言える映画。ディズニー、アンブリン映画ということで、「宇宙戦争」の甘口りんごとはちみつとろーり溶けてる感じか。
あ、「宇宙戦争」は好きだな。