「息子の思いを受け止め、父は強くなる」リアル・スティール 銀平さんの映画レビュー(感想・評価)
息子の思いを受け止め、父は強くなる
劇場で2回目の鑑賞を終え、改めて感想を書きます。
2011年の締めくくりに、この映画が公開されて良かったと思います。
何ヶ月も前から楽しみにしていた甲斐があったし、期待を裏切らない作品でした。
2回目は友人も一緒に連れて行ったのですが、「すごく興奮した、面白かった!」と喜んでいました。
ロボットバトルに興奮して手の平に汗をかいていました。
私は、一度見てストーリーを知っていても、やはりクライマックスの盛り上がりでは、涙を流してしまいました。
「最強のゼウス」との最終ラウンド。
会場の歓声が一瞬静かになる。
そこに映し出されたのは、かつて現役ボクサーとして、夢と情熱にあふれていた頃の、プロボクサー「チャールズ・ケントン」。
ATOMと共にゼウスと闘う、一人の父親の姿。
現役を辞め、本当の意味で「真剣に闘うこと」からは、どこか逃げていた感じのあったそれまでの彼の姿は、もうそこには無く。
ただ一心に、全身全霊でゼウスに拳を振るう。
そしてその姿を見ているマックスと、長年チャーリーを支えてきたベイリー。
二人はチャーリーの本気の戦いを目にして、涙を流していた。
「あの頃」のチャールズ・ケントンが戻ってきた。
二人の涙に、見ている私も泣いた。
特にベイリーの嬉しそうな笑顔が印象に残っています。本当に優しさにあふれていたと思う。
「俺には無理だ」と弱腰な父親に、マックスは言います。
「父さんなら、絶対にできる」。
まっすぐに父を見据えて、父を信じて。
この場面が、この映画で語られる、父子の絆の全てを表していると思います。
そして、この父子を強く結びつける役割を担うATOM。
ATOMはロボットなのに、まるで人間のように心があるかのようでした。
マックスとの友情関係を築き、必死に「立て!」と呼びかけるマックスの声に応えて、ATOMは何度倒れても、再び立ち上がる。
それは試合を見ていた多くの人々の共感を呼び、心に感動を与えました。
思い起こせば、スクラップ置き場で、ATOMの腕だけが土から剥き出しになっていた。その動かぬ腕こそが、マックスの命を救った。
2回目に見た時は、もう、この運命的な出会いのシーンで、こみ上げるものがありました。
この物語の「奇跡」が始まった瞬間だと思いました。
「強さ」とは、強大なパワーか、屈強なボディーか。
どちらも、おそらく間違いではないでしょう。
でもそれよりも大事なものは、障害を前にしても、それを乗り越えて前に進もうとする、諦めない心なのではないでしょうか。
思いの力が、人を一番強くするのではないかと思います。
試合終了後、リングに立つチャーリー、マックス、ATOM。
その勇姿は、間違いなく「みんなのチャンピオン」と呼ぶにふさわしいものでした。