「天才的子役 大活躍」リアル・スティール DOGLOVER AKIKOさんの映画レビュー(感想・評価)
天才的子役 大活躍
新作映画「リアル スチール」、原題「REAL STEEL」を観た。
スチーブン スピルバーグ製作、指揮。監督:ショーン レビ。
1956年の「スチール」という題の短編小説をもとにして作られた作品。
ストーリーは
近未来のアメリカ。
ボクシングは 人命に関わる危険なスポーツなので、禁止されている。代わりに、ロボットボクシングが盛んだ。男も女も 巨大なドームに集まって、人の何十倍も大きな鉄の塊のロボットとロボットを戦わせて、一方がバラバラになるまで 激しい打ち合いをさせることに熱狂している。
チャーリーは 元ボクサー。今は飲んだくれのロボット狂だ。ロボットボクサーをトレーラーに乗せて、全米を興行して回っている。何年も前 とっくの昔に家庭を捨てて ドサまわりをしている。勝っても、負けても飲むばかり。しかし、最近では自分がチャンピオン戦を戦っていたボクシング時代と違って、ロボットもコンピューター操作のリモートコントロール。自分の思うように勝ってくれる訳ではない。自分よりも もっと資金をかけてテクに強いロボットに負かされてばかり。
父親の跡を継いで ロボット修理工場を経営する女、リリーのところに転がり込んで 何とか頼み込んで自分のロボットを修理しながら居候していたが 借金がかさむ一方だ。とうとうリリーに 愛だ恋だの言うよりも お金を返して と冷たく突き放されてしまった。ロボットボクシング興行主に払わなければならない借金もとうに期限が過ぎている。
進退窮まったところで、警察から連絡が入り、何年も前に捨てた妻が 亡くなったという。裁判所に呼び出されて、ひとり残された11歳の息子、マックスと、父親チャーリーは再会することになる。死んだ妻の妹が マックスを引き取りたいと言う。彼女は裕福で年の離れた老紳士と結婚していて、マックスを養子にして 立派な教育を身につけさせたい と思っている。
それを知ったチャーリーは 即座に義妹の夫に「750で どうだ?」ともちかける。息子を裕福な男に売って 得たお金で新しいロボットを買い、ボクシングの試合で勝って借金を返せる。これですべて円満解決だ。
5万ドルを前金で 残りは一月後に。義妹夫婦はイタリアで暮らしていたが、マックスを引き取るに当たって、イタリアの家を処分して ニューヨークで マックスと暮らせるように準備する。その期間1ヶ月だけ実父チャーリーのところにマックスを預けていく。ということで、話し合いはついた。
10万ドルで父親に売られた息子は1ヶ月だけ ろくでもないロボット狂の飲んだくれのところに預けられた。父の顔など覚えていない。昔 父親に捨てられて 母を失くしたばかりのマックスは 自分が売られた金でチャーリーが手に入れたロボットに対面する。
新しいロボットは日本製、超悪男子という名のロボットだ。新しいロボットに夢中のチャーリーを尻目に、マニュアル時代の元ボクサーチャーリーよりも、コンピュータ操作は 新世代11歳のマックスの方が「うわて」だ。リモートコントローラーは、いつの間にかマックスの手に。
チャーリーは 新しいロボットをトレーラーに積んで、マックスを伴いボクシング会場に行く。しかし、このハイテクの新機種ロボットは アッと言う間に 叩きのめされて 鉄くずに。
チャーリーにはこのロボットの修理する資金もない。ロボット解体所に忍び込んで部品を盗んで来るしかない。真夜中 マックスを連れて部品を探索している最中 マックスはロボット廃棄場の巨大な穴に誤って落ちてしまう。寸手のところで捨てられたロボットに引っかかって マックスは命拾いをする。助かったマックスは チャーリーが止めるのも聞かず、自分の命を救ってくれた古いロボットを抱えて連れて帰る。
その「アトム」という名のポンコツロボットは 修理してみると、昔の鋼鉄で出来ていて、リモートコントローラーで操作するよりも、自分の前の人のまねをするロボットだった。マックスが飛び跳ねれば、アトムも飛び跳ねる。マックスとアトムが楽しそうに 一緒に ヒップホップのダンスする様子を見て、チャーリーは これは 使えるかもしれない と考える。そして、元ボクサーは アトムにボクシングの戦い方を教えて、訓練する。
チャーリーとマックスの アトムを連れた興行の旅が始まった。ロボットアトムとマックスのダンスは どこでも受けた。そのあとで、ボクシング試合をさせても、なかなかアトムは よく戦ってくれた。アトムは小さいながら鋼鉄製だから、セラミックや新素材のロボットよりも 壊れても修理が効く。リモートコントローラーか効かなくなっても、アトムはチャーリーの動きをコピーすることができるから 続けて戦うことができる。そんな、アトムに人気が出てきて、活躍することになった。しかし、一ヶ月があっという間に経って、養父母が帰ってきて、そこで、、、。
というお話。
天才子役 という言葉があるが、11歳のダコタ ゴヨの マックス役が素晴らしい。母に死なれて、父に10万ドルで売られた息子という難しい役を 実に自然に演じている。ヘラルド紙やロスアンデルスタイムスでも、ダコタ ゴヨを手放しで褒めていた。「ナチュラル チャーム」生まれてついた魅力、というか、全く役を演じていると思わせない自然さで 役柄になりきっている。
カナダ トロント生まれ。生後2週間でテレビのコマーシャルに出たのが、デビューだったそうで、5歳のときから 俳優としてテレビや映画に出演している。最近の映画では2009年「アーサー」、2011年の「THOR」、2012年「ライフ オブザ ガーデアン」など、ハリウッド映画に出演している。
印象的な子役といえば、2006年の「リトル ミス サンシャイン」のアビガイル ブレスリン、2001年の「アイ アム サム」のダコタ ファニング。1986年の「スタンドバイミー」のリバー フェニックス。
その前になると 1952年の「禁じられた遊び」のブリジット フォッセイ、1948年の「自転車泥棒」ビットリオ デ シーカ監督が使った子役などが、最高だった。大人を見上げる懸命な瞳の光の強さは 大人にはまねできない。ダコタ ゴヨはこれから きっと大活躍してくれることだろう。
ヒュー ジャックマンは ブロードウェイで 踊りも歌もうまいと ミュージカルで認められ人気者になったオージー俳優だ。「エックス メン」で鉄の爪を持ったスーパーヒーローを演じ、「オーストラリア」では、荒馬にまたがり勇敢なカウボーイをやった。背が高く、美しい肉体を持ち、シャープな顔をしている。同じオージー俳優でも、メル ギブソンやラッセル クロウのような アクの強さはないが、その分 どんな役でもできる。とても良い役者だ。飲んだくれの元ボクサーの役など とても似合う。
しかし、この映画では、そんなマルチタレントのヒュー ジャックマンがかすんで見えるほど 子役のダコタ ゴヨが光っていた。
アトムに潰されて 次々と新しいハイテクロボットを開発するのが 日本人の怖い顔をした技術者だったり、アトムの前の日本製ロボット:超悪男子が、日本語でしかリモコンが作動しない、など、笑えるシーンもたくさんあった。日本製イコール優れた技術ロボット というイメージは健在なようだ。
ハリウッド製娯楽映画。おもしろい。
見る価値はある。