「軽やかな日常に死の痕跡」東京公園 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
軽やかな日常に死の痕跡
大変に軽やかな作品で、平板な日常をカメラで「見る」ことで異化効果的にちょっといつもと違うものに見せてくれる。浮気調査を依頼された主人公が、公園を巡る女性を撮り続ける。一方的な見る・見られるの関係性は、映画を見るということにもつながる行為というか、一方的に世界を覗き込むことはいかがわしさを含む行為なのだなと感じさせる。
この映画には死の痕跡がある。死んだ友人が主人公にだけは見えていて会話できる。死んだ母の写真を飾っている主人公の部屋。その母は主人公が追いかけている公園の女性と瓜二つだ。(どっちも井川遥が演じている)
カメラで撮った写真は現実そのものかを切り取っているのかだろうか。カメラは、現実の痕跡を残すものではないかと思う。映画も何かの痕跡を残すもの。それは人が死んだ後も残っていく。痕跡を残すことを軽やかに描いた、とても豊かな作品だと思う。
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