劇場公開日 2011年11月5日

「ざわざわ・・・、わざわざ」カイジ2 人生奪回ゲーム ダックス奮闘{ふんとう}さんの映画レビュー(感想・評価)

1.5ざわざわ・・・、わざわざ

2011年11月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

幸せ

「ごくせん THE MOVIE」などの作品と手掛けた佐藤東弥監督が藤原竜也を主演に迎えて描く、人気漫画に新たな解釈を交えて描くサスペンス作品。

前作「カイジ 人生逆転ゲーム」において描かれていたのは、主人公カイジが徹底的に追い詰められていく絶望感を容赦なく描き切る極めてサスペンスに満ち溢れた高揚感と、目の前にぶらさがっている利益のために相手の裏の裏をかく心理戦の圧迫感にある。

これまで日本映画が手を付けずにやってきた露骨な金への欲望を生々しく提示する意外性と、いやらしさ。その「汚さ」に、ほんわかほっこり家族万歳作品に飽き飽きしていた観客は驚き、喜び、麻痺した頭をがつんと叩かれた。そう、その「お前等、目を覚ませ!」と声高に叫ぶ野性味にこそ、前作を注目させる要素が凝縮していた。

その端正な日本映画界に突如として現れた「異端児」作品が、満を持して続編に挑む。閉塞感と、思うようにならない現代への疑惑が溜まりに溜まっている我が国の社会に、どう戦いを挑むのか。観客の期待は高まっていたはずだ。

で・・・わざわざ自腹で鑑賞した結果がこの有り様である。地下での強制労働から脱出を果たした前作の後、再び借金を重ねて泥にまみれた生活を過ごしている主人公の描写から始まる本作。絶望と、未来への違和感が人間を突き動かしていた衝動は単なるコメディ描写の前提のように使われ、這いつくばるような「汚さ」が見事に拭き取られる。

まずい・・と思った貴方は大正解。後は、前作の怒りと涙のエピソードをなぞって、描き直しての繰り返し。高い金つぎこんで作る映画とは思えない、適当な人間ドラマとふわふわした吉高氏のちぐはぐ世界。

伊勢谷友介の軽快な表現と、藤原竜也の蜷川先生仕込みである熱い、熱い叫び。疲労と違和感ばかりが積み重なる奇妙な騙し合いに、前作にあった不条理への抵抗という希望は、陳腐な人間愛へとすりかわる。現代に対する宣戦布告、その期待は見事に蹴散らされてしまうものすごい作品である。

今、この時代に叩きつける価値があるのかと言われると大いに疑問視される一本。終盤のとあるシーンで、きちんと火薬と使った事ぐらいだろうか・・評価できるのは。ただ、「ざわざわ・・・」と現代映画界への不信感が芽生える。

ダックス奮闘{ふんとう}