「名作の証明…「東京物語」へ愛をこめて」東京家族 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
名作の証明…「東京物語」へ愛をこめて
山田洋次監督生活50周年記念作品。
レンタルDVDで2回目の鑑賞。
小津安二郎監督の言わずと知れた名作、「東京物語」へのオマージュに溢れた作品。初鑑賞時は「東京物語」が未見だったのでなんとも思いませんでしたが、鑑賞後に改めて観た今回、カメラワークやセット、セリフのひとつひとつに至るまで忠実に再現されていたことを知って、度肝を抜かれました。
しかし、ただのリメイクやオマージュに留まらない魅力がたくさんあるように感じました。松竹大船調の伝統を受け継ぐ山田監督が、名画への並々ならぬ敬意を払いながらも、現代社会に抱く想いをぎっしり詰め込んだのだろうな、と…
根底に流れるテーマは「東京物語」と共通していました。
ストーリーがほぼ同じなのでそうなるのは必然ですが、やはり心に響いて来る。家族の繋がりや他者との関わりが急激に変容していく現代社会で、それと比例するかのように希薄になっていると言われる事柄に対し、監督は非常に危機感を抱いているのかもしれないな、と…。製作段階で発生した東日本大震災を経たことで、より一層他者との繋がりと云う部分に重きを置いて問題定義をしようとしたのかなと思いました。
そんな状況だからこそ、普遍的なメッセージがこめられている「東京物語」をブラッシュアップし、再び世に問う必要性を感じたのかもしれません。それは同時に同作が紛れも無い名画であることの証明でもあり、後世に伝え残していかなければならない作品であることを改めて痛感しました。
※修正(2022/05/16)