「バンカラ時代の上澄み」コクリコ坂から よしさんの映画レビュー(感想・評価)
バンカラ時代の上澄み
1960年代初頭。下宿屋を切り盛りする女子高生と、新聞部部長の淡い恋を描く物語。
宮崎吾郎監督のジブリ作品ですね。ネットでは割りとネガティブな意見を目にする作品ですが、金曜ロードショー放映を機に鑑賞。結果、それ程悪い作品とは思えませんでした。
作品は、恋愛物。60年代の学生運動全盛期の高校を舞台に、カルチェラタンの存続運動を絡ませながら物語は進みます。
主人公の海。いかにもジブリ作品に出てくる女性らしいキャラですね。綺麗で、逞しくて、生活力があって・・・それでも可憐で、一途で・・・とても魅力的です。
絵も流石にジブリクォリティ。キャラも安定していますし、表情もしっかり。アクションはそれ程ありませんが、動きもなめらか。
ネガティブな評価の中に、兄妹の恋愛が描かれていることで「気持ち悪い」との感想があるようですね。でも、それは流石に無理があるように思います。ず~と一緒に過ごしている兄妹ならまだしも、一度も一緒に住まず、存在も知らなかった間柄。その二人が先に恋愛感情を持ってしまったら、気持ちを抑えられなくても仕方ないでしょう。寧ろ「兄妹だからこの恋はお終い」と割り切れる人間の方がどうかしています。
ただ、宮崎監督がこの時代を描く動機、理由が分かりません。これが駿監督が描くのであれば、意味も想像出来ます。
自らが生きたバンカラ時代への郷愁。その良さと勢いを映像に残す・・・となれば、その気持ちに共感出来ます。
でも、吾郎監督は1967年生まれ。この時代を積極的に描く動機があるように思えません。カルチェラタンの生徒たちのデフォルメされた言動や、女子生徒達が大掃除に駆け付けるシーン等は、バンカラ時代の上澄みを救ったような底の浅さを感じてしまいます。
「実は兄妹ではない」の経緯もご都合主義に感じますし、海がカルチェラタン存続の中心人物になった描写も少し足りないようにも思えたのも残念なところ。