「昭和の香りが心地よい上品な映画。…退屈だけど😅」コクリコ坂から たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
昭和の香りが心地よい上品な映画。…退屈だけど😅
「コクリコ荘」という下宿を切り盛りする女子高生の松崎海は、文化部部活棟「カルチェラタン」の存続のために活動する先輩、風間俊と出会う。
2人はお互いに惹かれあっていくが、とある疑惑が持ち上がる…、という学園青春アニメーション。
脚本/企画を担当するのは『となりのトトロ』『千と千尋の神隠し』の、言わずと知れた天才アニメ監督にして本作の監督である宮崎吾朗氏の父、宮崎駿。
主人公、松崎海を演じたのは『世界の中心で、愛をさけぶ』『涙そうそう』の、「東宝シンデレラ」長澤まさみ。
海と惹かれ合う先輩、風間俊を演じたのは『木更津キャッツアイ』シリーズや『ゲド戦記』の、「V6」のメンバーである岡田准一。
俊の父親、風間明雄を演じたのは『世界の中心で、愛をさけぶ』『ゴールデンスランバー』の大森南朋。
コクリコ荘に下宿する女医、北斗美樹を演じたのは『平成狸合戦ぽんぽこ』『もののけ姫』の石田ゆり子。
海たちが通う港南学園高等学校の理事長、徳丸を演じたのは『20世紀少年』シリーズや『カイジ』の香川照之。
第35回 日本アカデミー賞において、最優秀アニメーション作品賞を受賞!
日本一可哀想な映画監督、宮崎吾朗の第2回監督作品👏
本作は『崖の上のポニョ』公開後の2008年に、宮崎駿が計画した「ジブリ3ヶ年計画」の一環。
『アリエッティ』、ジブリ美術館用の短編を数本、そしてもう一本中編映画を作ることによりスタッフの力を育成し、満を持して長編を作るという、新人育成&宮崎駿作品のクオリティアップという一石二鳥を狙った計画のことです。ちなみにこの計画により作り上げた長編が『風立ちぬ』な訳です。
本作はこの計画の第三の矢として放たれたもの。
宮崎駿が高度経済成長の時代を描きたいと言い出し、その題材として持ち出したのが「なかよし」に掲載されていた少女漫画「コクリコ坂から」だった。
ジブリの名物プロデューサーである鈴木敏夫は、ちょうど本作の登場人物たちと同じ時代に学生時代を過ごしており、宮崎駿が鈴木敏夫から様々な話を聞き込んでイマジネーションを膨らませたということです。
だからこの映画、原作とは全く違う話らしいですね。原作は未読なので詳しくはわからないが、原作には「カルチェラタン」が出てこないというのは驚いた。アレンジしすぎだろ💦
はっきり言ってこの映画、宮崎駿&鈴木敏夫が言いたい放題で吾朗監督に作らせた映画であり、吾朗監督は「雇われ演出家」という歯車の一つになってしまっている。監督自身の意思や熱意が出発点の作品ではない訳です。
「親父に脚本を渡され、プロデューサーからもいろいろ言われて、吾朗くんにとってはしんどい仕事だったかもしれません」とは鈴木敏夫の言葉。
いや、マジでしんどい仕事だと思うわ…😅怪物みたいな爺さん2人にプレッシャーかけられ続けるんだもんなぁ。吾朗監督はドMかな?
とはいえ、吾朗監督の穏やかな気質や現場の人間に好かれる性格はこの「雇われ演出家」という立場にピッタリとマッチしたようで、制作現場は和やかな雰囲気だったらしい。地獄のような宮崎駿監督の現場とは対照的ですね。
その和やかさが作品にも表れているような感じがする。
本作は大した事件も起こらない穏やかな物語であり、それが吾朗監督の淡々としていて、かつスロウリィなテンポ感の演出と調和している様に感じられる。
上品というか、優しいというか、とにかく心地よい作風で、面白いかどうかは置いておいて、非常に好感が持てる作品なのは間違いない。
本作の白眉はなんと言っても「カルチェラタン」!この魅力に尽きる。
この『ハウルの動く城』のような、ごちゃごちゃした内装や外観も素敵だし、その中で蟲のように蠢く部員達もみんな魅力的💕
大学時代の部室棟が、まさにこんな感じだったなぁ。
ウチの部は男だらけだったし、まさに「カルチェラタン」のような魔窟だった。このシンパシーだけで、胸が熱くなってしまった。
おそらくこの「カルチェラタン」の描写は、押井守監督の『ビューティフル・ドリーマー』から着想を得ているのではないだろうか?
吾朗監督は『風の谷のナウシカ』より『ビューティフル・ドリーマー』の方が面白かったと発言したこともあり(この2作は同年公開で、放映開始日もかなり近い)、相当思い入れがあるんじゃないかなぁ。勝手な想像だけど。
メガネがこっそりあの中に混じっていても絶対に違和感無い🤓。
哲研とかアマチュア無線部とか新聞部とか天文部とか数学研究会とか、側からみたらガラクタみたいな部活動に青春を燃やす学生たちって、なんであんなに魅力的に映るのか?
最近だと『映像研には手を出すな!』がまさにこんな感じで、この作品にも非常に心地良さを感じたなぁ。
とにかく、この「カルチェラタン」が好き過ぎるのでそれだけでこの映画合格!💮…と言いたいところなんだけど、やっぱりつまんないだよなぁ😅
メイン・ストーリーである海と俊、2人の恋愛がどうでもよ過ぎる。なにこれ?
実は2人は兄弟かも!?という問題提起と、それに伴う不器用なすれ違い描写は良かったのだが、問題の解決描写があまりにもおざなり。
終盤になって海のお母さんとか、俊と海の父親の友達とかが突然出てきて、「いや、実は云々…」という会話だけでミステリーが解決してしまうのは如何なものか。
俊の出生の秘密を、もっとドラマチックに、もっとサスペンスフルに描くことだって出来るはず。
大体、海の親父さんが口ベタ過ぎるが全ての問題なんだよっ💦明雄さんにちゃんと説明をしろ、説明を!とは誰もが思った筈。
思い切って、海と俊の兄弟疑惑を完全に捨てて、カルチェラタンを巡る学生運動に重点を置いた学園ドラマにしてしまった方が面白くなったのでは?
そうすると「コクリコ坂から」を原作にした意味全く無いけど😅
あと、細かいところだと海が友達や近所の人から「メル」って呼ばれている点。これなんの説明もないから初見の時には混乱してしまった。「ん?海とメルっていう名前の双子?」みたいな感じで。
海はフランス語で「メール」というから「メル」という渾名で呼ばれている。なるほど〜…。
いや、それを作中で説明せんかい!
こういう細かい所、すごく気になってしまう。説明しないのなら渾名という原作設定は無くせば良いし、渾名で呼ぶなら説明すべき。
あと、美大生の広小路さん。この人めっちゃ可愛い😍
…というのは置いといて。この人が描いた画を見て、旗に応答している船があることに海が気付く。このことは良いんだけど、広小路さんの絵がアーティスティックすぎて、観客の目からはあの絵が海で、あのモニョモニョしたのが船だとは到底思えない。
もっとわかりやすい風景画で良かったんじゃない?
海の家庭環境や「コクリコ荘」の描写は、複雑な割には説明が不足しており、鑑賞時のノイズになるところが多かった。
過剰に説明的にしないというのは映画の鉄則だけれども、その分設定や背景をわかりやすくする努力はすべきだと思う。
決して嫌いな映画ではないし、好感が持てる作品なのは間違いない。
でも、宮崎駿監督作品や題材が似ている『耳をすませば』など、他のジブリ作品に比べ優れているかといえばそれはやっぱりNOと言わざるを得ない。
吾朗監督は親の七光りだとか言われるけど、色んな意味で注目すべき監督の1人なのは間違いない。
近年の吾朗監督はCGアニメを手掛けている。その分野での飛躍を願ってます👍
余談だが、『耳をすませば』にすらあったファンタジー要素が、本作には一切ないのは一種の実験らしい。
つまり、ファンタジー要素が無い作品でもお客さんは来てくれるのかどうか、宮崎駿監督は試したかったのです。
Q:それは何故か?
A:ファンタジー作品ではない『風立ちぬ』を作りたかったから。
ノー・ファンタジーのアニメにどれだけ観客が来るのか、息子の作品を試金石にして見定める宮崎駿の悪魔っぷり…。あな恐ろしや😱
すっごくいいレビューで 随所で吐息が漏れるほどでした。
いろんな豆知識も裏話もなるほど、と。
私の独りよがりの、人間の小ささ満開のレビューが恥ずかしい!って思ってしまいましたww
セロファンさん、コメントありがとうございます😊
あんまり印象に残らない作品ですよね😅自分は久しぶりに鑑賞したんですが、やっぱり退屈でした笑
声優陣はかつてジブリ作品に出ていた人たちが集まっており、かなり豪華でした♪
『千と千尋』で千尋の声を演じていた柊瑠美さんが、大人の女性を演じていることに感動しました😆