「泣いたオバサン。」フレンズ もののけ島のナキ ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
泣いたオバサン。
子供の頃に読んだ「泣いた赤おに」は、とてもシンプルなお話だ。
人間好きの赤おにが村の人々となんとか仲良くなりたいと思う。
しかし村の人々は(もちろん鬼だから)怖がって近づこうとしない。
そこで仲間の青おにがある思案をもちかける。さて、どうなったか。
このお話の素晴らしいところは、「ともだち」「なかま」の存在である。
だから今作がタイトルに「friends」と付けたところは頷ける。
誰もが自分ひとりで生きているのではなく、大勢の仲間に支えられ、
どこかで助けられているのだということを教えるお話でもある。
だから学校教材にも使われるわけだ。至極納得のいく話である。
で、VFXオタクの山崎監督が^^;ど~しても撮りたくなっちゃって、
なんとプレスコから二年もかけて制作し、やっと公開にこぎつけた。
この監督ならではのこだわり(画への)はいつもながらスゴイと思う。
でも私は(すいませんが)2Dで観ちゃった。それでもかなりキレイ。
コタケの顔形はどうなんだろうとか、動きがおかしくないかとか、
どう見てもナキとグンジョーはポケモンに出てくる怪獣じゃないか^^;
とか、いろいろありますけど…やっぱり泣けるんだわ、最後の最後。
泣きじゃくるナキを見て、単純ながら、友達の意味を考えてしまう。
よく恋愛なんかでも
大好きなアナタのために(私ではダメだから)別れる、ってのがある。
相手を想って身を退く…ってやつですが^^;コレできる人少ないよねぇ。
そもそもどうしてそんなことが自分で分かるんだ?とも思えるし、
相手の気持ちは聞かないでいいのか?なんて風にも思えてしまう。
だけど真に心から相手を想うと、それができちゃうのかもしれない。
相手にとっての幸せって何だ?どうすればいちばん幸せになれる?
常に相手を見つめていなければ(見つめてるだけじゃダメですけど^^;)
絶対に起こせないような行動を(深く考えあぐねて)実現させてしまう。
友情も(少し違うけど)それに近いものがあるにはある。
自分の大切な親友が、大きな夢を持っていたとする。
しかし夢の実現には大きな壁があり、友人が自立する必要がある。
叱咤激励を超え、自分から突き放す勇気が持てるかどうか。
相手の幸せを祈る。とか、成功を祈る。なんて、口では言えるが、
とかく自分に甘い人間にはとても難しい。何たって一番は自分だから。
寂しい想いをするのは自分で、成功を治めるのは向こうだ(という前提)
それでも相手を一番に考えようとする人間が、この世にはいるのだ。
素晴らしき哉、友だちの存在。
悲しい、口惜しい、情けない、憎い、恨めしい、怒り心頭、バカ野郎、
子供の頃に「泣く」のはそんな感情の起伏が主だった。
そこに「歓び」や「感謝」で泣くことを教えてくれたのがこの本だった。
今作にはアニメらしい味付けが随所に為され、時間的にもまぁ長い^^;
それでも大切なテーマはしっかりと後半で描かれる。
コタケの愛らしさとグンジョーの名演(さすが山ちゃん)、ナキ以上に
目を真っ赤に泣きはらしたオバサンが私で「泣いたオバサン」なのだ。
(だけど本当は差別のない世の中で皆と仲良くできるのが一番だよね)