「二人三脚」ブルーバレンタイン 77さんの映画レビュー(感想・評価)
二人三脚
他人と他人が出会って家族になる。同じ季節を先の何十年“健やかなるときも病めるときも”ずっと一緒に生きていくことの素晴らしさ。それと同じくらいの大変さや難しさ。
本作は後者にとてもリアルにスポットライトを当てています。リアルさにより拍車をかけてたのはミシェル・ウィリアムズが“お母さん体型”に仕上げてきていたこと。体型だけでなくM・ウィリアムズが持つ色んな魅力を抑えての好演が素晴らしかったです。
【映画論評】にも書いてありましたが私もこの映画を観てすぐに“愛するというのはお互いを見つめることじゃなく一緒の方向を向いていることである”という言葉を思い出しました。
私の結婚願望の薄さはこういう風になってしまうことへの怖さというのも多少影響してたりするのでなんだか胸にチクチクくる物語でした。
愛がないのは嫌だけど愛だけでもやっていけない。
この夫婦は“若気の至り”というオプションもついていたけど、(妻の気持ちもわかるけどこれらがあるから彼女には共鳴はできない)“価値観の違い”なんて違う人間なんだから長く一緒にいれば誰にでも起こりうるすれ違いの種。
それが拗れると二人のように出会った頃の魅力だと思ってたことにいつの間にかイライラしてたり、ああして欲しいのに、なんでそうなの?と自分のことは棚に上げて相手の長所より短所ばかりに目がいったり、気持ちを押し付けてしまったり、同じ音楽が虚しく響いたり、あの頃とは違う意味で二人して泣いたり。
この二人もまだまだ歩み寄って自分たちだけの形を作れたように思うけど、それもこうやって遠くから見てるから言えることなのかも。他人からみたそれと当人達のそれは全然違う。
人と人が出会ったりくっついたり別れたり。ただそれだけのことなんだけど、ただそれだけの間にどれだけ縦にも横にも心が揺さぶられることか。二人に共感できなくてもこういう気持ちなら多くの人が痛いほどわかる。
好きな話ではないけれど誰もが「あー。。」ってなっちゃうような生易しいだけじゃないリアルな人間や愛の物語というのは貴重だと思いました。