劇場公開日 2011年9月23日

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スリーデイズ : 映画評論・批評

2011年9月13日更新

2011年9月23日より丸の内ルーブルほかにてロードショー

社会派ポール・ハギスが再び問いかける現代アメリカにおける個人の正義

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フランス映画「すべて彼女のために」のリメイクである。クライム・ムービーとラブストーリーというフランス映画十八番のジャンルを見事に融合した秀作ではあるが、かといって社会派のポール・ハギスがなぜジャンル映画を、しかも比較的新しい作品をあえてリメイクするのか、その理由がわからなかった。しかし見てみると、ハギスはこの物語の中にオリジナルとはまったく違うテーマを見出していた。

宗教的なモラルや社会的な正義では計れないことに遭遇したら、人は何をもって正しい道を選ぶのか。彼は前2作で人種差別、帰還兵のPTSDを描いてきたが、考えてみれば本作も含めすべてが個人の正義についての物語であったといえる。長いことアメリカの正義の名の下に犠牲にされてきた個人の正義。彼が最も関心を持っているのは実はそこではないのか。

そのため物語はオリジナルと同じでありながら、本作では主人公だけでなく妻にもこの命題をつきつけ、彼女の心も大きく揺らす。そして社会の正義と個人の正義の間で、愛し合っていたはずの夫婦に生まれる超えがたい溝を描く。これによりただ愛のためだけに大きな犯罪をやってのける平凡な男の話が、共にリスクを負うことで絆が結ばれる夫婦の話になった。だから同じ結末でありながらも、その意味するところは両作品でまったく違うのだ。リメイクは往々にして監督の演出法で比較されるが、監督が属する時代や社会もまたリメイク作品の大きな見どころなのである。

木村満里子

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