「催涙弾映画。」唐山大地震 三遊亭大ピンチさんの映画レビュー(感想・評価)
催涙弾映画。
「唐山大地震」見ました。
東日本大地震の発生による公開中止から、4年越しの鑑賞。端的に、これは当時公開しなくて良かった。
まず序盤の大地震の映像の凄惨さに驚いた。虫螻のように人がバタバタと死んでいく。僕は神奈川県在住なので大震災が直撃したとは言えないが、その凄まじい映像の中に、日本人も同じ様な体験をしたのかもしれないと思い、涙を流してしまった。ただし、実際の唐山の様子は映像以上に酷かったのは容易に想像できる。こういったCGはもちろん完成度が凄く高かったし、それより驚いたのは70年代の中国の風景。スケール感がハンパなくて、一体どうやって撮影したんだろうと不思議に思うくらいだ。そのスケール感はさながら「フォレスト・ガンプ」のようだった。
映画としては、オープニングのトンボの大群〜地震が起きるまでの約20分間の雰囲気が、まるでJホラー的な不気味さを感じる。その雰囲気一発で観客を引き込む演出も、映画として秀逸であった。
僕が映画を見る時は、素人ながらも批評精神が出てしまって、無心で見ることなどほぼ無い。この映画は本当に無心で見ることが出来た。それは、主人公家族がこの先どうなるんだろう?という薄い話ではなく、居る”場所”を一瞬にして奪われた人々がいかにしてその”場所”を再び手にするのかを見届けたかったからに他ならない。
日本人にとっては辛い鑑賞になるかもしれないが、心打たれる作品であるのは間違いないないし、なにより素直に素晴らしい作品です。偏に、実際にこんな大災害があったとしれて良かった。中国国内では催涙弾映画と言われているようだが、全くその通りで、見える限り周りの観客は全員泣いていた。中国映画をナメていたが、凄いのを作るのですね。