アンチクライストのレビュー・感想・評価
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箔付紳士、暴発中
「奇跡の海」などの作品で知られるラース・フォン・トリアー監督が、ウィリアム・デフォー、シャルロット・ゲンズブールを主演に迎えて描く、人間ドラマ。
「タガ」が外れてしまった人間ほど、面白いものはない。それまで自分を抑えつけていた制約から解き放たれ、もう欲望と野望の赴くままに突き進む疾走感と、幸福感。それが、激しい表現への情熱と技術をもった芸術家ならばなおさらである。
自らの過ちで我が子を殺してしまった罪悪感に苦しむ妻、彼女をどうにかして助けようとするセラピストの夫。衝突と理解を繰り返しながら、絶望を超えて前へと踏み出す姿を追いかけていく・・・ような展開を予測させる本作。
冒頭に神々しく流れるミサ曲から中盤まで、いたって質素に、かつ無駄の無いシリアスな物語として機能しているのだが、中盤以降、妻が取り掛かっていた「魔女狩り」研究のくだりが出現すると、おや?おや?あれよあれよという間に、何が何だか理解できない(理解する必要も無い)混沌みなぎるエロ地獄へと、変貌を遂げてしまう。
脱いで、脱いで、叩いて、脱いで、気の向くままに刺してみる。神妙な顔をして身も心もさらけ出すキャスト二人の奮闘ぶりには大いに賞賛するべき鬼気迫るものがある。しかしながら、展開はどうにも涙よりも苦笑が溢れる変態本能丸出しの危険行為、お父さん許しませんよ!のフシダラ問題発言のオンパレード。よくぞ、劇場公開に踏み切ったものだと拍手を送りたい、配給サイドを無視した暴走である。
とにかく世間に賞賛される名誉を得るために、作風を巧妙に映画祭向きに動かしてきたといわれるトリアー監督。「ダンサー・イン・ザ・ダーク」で大きな箔を得た後の本性暴発作品群の最終形態となった本作の激しい自己主張は、他の追随を許さないどす黒さと旨みを生み出している。
箔付紳士の本能暴発は、これからどこに向かうのか。このトリアーおじ様の遅咲き反抗期映画には、是も非もつける余地がない。ひたすら、追いかけて行きたい可能性ばかりが、ある。
ネガティブの掛け算
ラース・フォン・トリア監督といえば、
「ダンサー・イン・ザ・ダーク」や「ドッグヴィル」
「マンダレイ」といったある意味衝撃的な映像作家として知られている。
特に「奇跡の海」という作品には大きな共感をもったものだ。
さて、待望の新作「アンチクライスト」は?
人間の想像力とは?ということを考えてしまった。
想像力は上手く使えば夢のような、例えば、月への旅も可能にする。
でも、ヘタに使えば、アウシュビッツや原爆投下まで、行なってしまう。
そう、トリア監督のいままでの作品は観る人の想像力を超えていて、
刺激してくれたように思う。
でも、この映画は超ネガティブである。
ネガティブが全部悪いとは言わないが、悪いほうへ悪いほうへ行きすぎ
ているようにみえる。世の中、悪いこともあればいいこともある。
その割合はそのときどきによって変わるものだろう。
「悲しみに暮れるカップルが森の中の小屋に引きこもり傷心と結婚生活
のトラブルを修復しようとするが、自然が牙を向き自体は悪化していく」
(ウィズペデア)とトリア監督自身が言っている。それにこの映画の撮影中にトリア監督は極度のうつ状態だったという。
そんな環境の中で撮った映画といえるだろう。
だから、観るのに耐えられないひともいるだろうと思う。
僕自身、いま結論を出してしまったのです。
また、観たらかわるかもしれないが、いまはダメだって・・・。
暗いなぁ
子供の死の前からもともと狂っていた妻と、それに振り回される夫。
やたらと無意味なSEXシーンが多く、後半は観客にも痛みを強いるほどのグロいシーンの連続で、不快感を覚えるほどだった。
哲学的、宗教的要素を匂わせる部分もあったが、とにかく思考や行動全てが暗すぎて自分にはそのメッセージがあまり理解できなかった。
あまりに納得いかなかったので、後日種種のレビュー等を見てみると、なるほど、ふむふむ、と思うところもあり、理解し切れなかった自分を悔やんだが、まああまり好きなタイプの映画でないことに変わりはなく、この映画を賞賛する側には立てなかった。
個人的には“暗いタイプ”の映画なら「白いリボン」のほうがすきだなぁ。
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