「贅沢なキャスト」RED レッド DOGLOVER AKIKOさんの映画レビュー(感想・評価)
贅沢なキャスト
映画「レッド」、原題「RED」を観た。
これぞハリウッドというくらいハリウッドらしい映画。REDという 同名のコミックブックを映画化したもの。
題名からして笑える。
REDとは、リタイヤード エクストリーム デンジャラス:超危険退職者の略字。
その超危険な退職老人とは
1) ブルース ウィルス (フランク) 55歳(役者の実際年齢)
2) モーガン フリーマン(ジョー) 73歳
3) ジョン マルコビッチ(マービン) 57歳
4) へレン ミレン (ヴィクトリア) 65歳
4人の平均年齢63歳
カーチェイス、機関銃、ショットガン、バズーカ砲、もちろんパトカーを始め 車なんか100台くらい燃えて、ただの鉄くずになるし、静かな郊外の家なんか、粉々のコンクリートの粉塵になる。
過去、アメリカ政府がCIAを使って 南米やアフリカに介入してたくさんの不正工作をした。今の政府にとって、退職した知りすぎたCIAエージェントが 生きていてくれては困ることもある。何年も前に 退職して田舎で静かな余生を送っているはずの おじいさんおばあさん元CIAの命が危ない。
ストーリーは
フランク(ブルース ウィルス)は 退職して年金暮らしになった。郊外に大きな家を買って 気ままな生活をしている。いまは年金配送係りの女性:サラと電話で たわいのない会話をすることが、楽しみになっている。会ったことはないが、彼女がハーレークイーンに はまっていれば、同じ本を買ってきて読んでみる。そんな単純で気の良いサラに フランクは魅かれていて、いつか会って見たいと思っている。サラも フランクに誘われて悪い気はしない。
そんな 平和に つつましく暮らすフランクが 突然何の前触れもなく プロのCIA集団に襲われる。家ごと木っ端微塵に襲撃されて破壊された。いつかこんなこともあるかもしれないと 日頃 準備をしていた通りに 完全武装して彼は脱出する。しかし、哀しいかな、長年CIAで生活してきたフランクには 友達がいない。まだ会ったことのないけれど、心のささえといえば、サラだけだ。そんなわけで、サラのアパートに転がりこむが、そこも安全ではない。サラの合意を得る間もなく フランクはサラを誘拐するような形で 逃亡劇が始まる。サラにしてみれば「恋」どころではない。電話で話しをするだけだった男がいきなり自分のアパートに居た と思ったら 何者かに襲われて自分の生活も何もかも捨てて 命からがら男と一緒に逃亡することになった。
フランクは昔の仲間を訪ねる。
老人ホームにいるジョー(モーガン フリーマン)、ジャングルの中 奥深く秘密の砦に暮らすマービン(ジョン マルコビッチ)、そして、ヴィクトリア(ヘレン ミレン)4人のREDがそろった。退職した元CIAエージェントたちだ。サラを含めて5人の元CIAと、現CIAとの戦争が始まる。
一体 どうして退職者が襲われたのか。
CIAの秘密文書管理室から得た情報によると、以前 フランクたちが関わったCIAのグアテマラでの不正工作をした男が 副大統領になった。彼が大統領の座を得るためには スキャンダルを事前に封じておかなければならない。事実を知っている もとCIAが生きているとめんどうなことになる。したがって処分するしかない。ということだった。
4人のREDたちは、副大統領を誘拐する。元CIAと現CIAとの戦争が始まった。
というおはなし。
ブルース ウィルスは 絶対死なないヒーローだ。ハリウッドの華だ。
「ダイ ハード」シリーズでも ボロボロになっても絶対死なないで、恋人や家族を守る。アメリカ人が一番望む男の理想の姿をいつも演じている。55歳になっても顔にも、体にも全く贅肉がついていない。良い顔をしている。画面では、追手を逃れる為に、次々と変装するが、警官姿がよく似合う。制服の似合う男に女は弱い。むかし 映画「コンコード」でアラン ドロンがパイロットの制服できめて出てきた時 失神しそうになった記憶がある。
ブルース ウィルスも、ジョン マルコビッチも二人とも背が高く 贅肉がなくて美しい体をしている。二人でバズーカ砲や機関銃をかついで走り回って、敵と格闘し ぶん殴りふっ飛ばしていても とても自然すぎて、年寄りが無理しているとは感じさせない。55歳と57歳なんて、いまは、若者か。だからRED(超危険な年寄りども)と呼ばれていても、あまり実感がわかない。そこを73歳のモーガン フリーマンとヘレン ミレンは加わって、やっと、まあREDと呼ばれてもいいかも という感じになる。
ヘレン ミレンは、エリザベス女王を演じてオスカー女優になり、「トルストイ謎の死」でトルストイの妻を演じて アカデミー女優主演女優賞をとった。素晴らしい女優。73歳の彼女が機関銃を持つ。白いロングドレスにクイーンイングリッシュで 「あいつのどてっ腹に5発 玉をぶっぱなしたんだよ。」などと言う。それがとても とても優雅で可愛い。
4人のベテラン役者たちの添え物 ブルース ウィルスが愛してしまったサラ役のマリー ルイーズ パーカーが、テイーンとか20歳代のピチピチギャルとかでなく、とりわけ美人でもなく頭が良いわけでもない 普通の女の役をやっていて とても良い。必死で戦って自分を守ろうとするREDたちに 次第に魅かれていく女の姿がとても自然だった。猿くつわをはめられて しゃべれない場面が やたらと多かったが、彼女 目だけでとても雄弁で、多くを語る。人質で殺されそうになって、怖がって泣きそうになるけど フランクを大きな目でみつめるときの雄弁な表現力は秀逸。
CIAの秘密資料図書館で 資料を管理していた俳優は ハリウッド映画で長年端役をやってきた役者さんで、93歳だそうだ。そんな貴重な人を使っているところもシャレている。
おもしろい映画だ。
これを観て まだまだ私もいけるかも、、、と思い込んで あきらめていたケンカを やりなおす人がでてくるかも。
本当にベテラン役者を 4人も使った 贅沢な映画だ。
平均年齢63歳の4人の役者たちの 今後の活躍を見守っていきたい。