「ラストシーンが圧巻」八日目の蝉 villageさんの映画レビュー(感想・評価)
ラストシーンが圧巻
10年前に観た映画の再鑑賞。
人によって語るべき論点や視座はたくさんあるだろうけれど、個人的に特に刺さった点について。
他人の子を拐って自分の子として育てた母。
「この子にもっと綺麗なもの、美しい景色をたくさん見せてやりたい」という思いは、親の持つ子への愛情そのもの。(個人的に10年の間に自分が親になり我が子に似たような感情を抱いたことから、より一層強く感じた。)
小豆島の美しい風景、伝統や文化。その風土に根付いた人々の暮らし。それらを映し出した映像の素晴らしさが、母と子のやり取りにに説得力を与えて、観る人の感情を揺さぶる(決して長くは続かないことが分かっている関係で、それを知っていたからこそなおさら響く)。海の前でじゃれ合って抱きしめ合っているシーンは、本当の親子であったらどんなに良かっただろうと心揺さぶられる。
憎むべき犯罪者と言い聞かされ封じ込めていた「確かに自分が愛されていた」という記憶。古い写真の現像液のネガから浮かび上がってくる描写。決して会うことが許されないその女も写真を取りに来ていたと告げられた事実。思わず坂道を走り出して、自分のお腹の子への愛情を吐露するラストシーン。
10年前に観たときから本当に良いシーンだなと感じたことを、今回また改めて感じた。
メリハリのついた脚本は秀逸で、難しい役どころを演じた永作さんと井上さんの演技は素晴らしい。本当に良い映画と思いました。
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