バスキアのすべて

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バスキアのすべて

解説

80年代のニューヨーク・アートシーンをすい星のごとく駆け抜けた夭逝の画家ジャン=ミシェル・バスキアに迫るドキュメンタリー。路上のスプレーペイントからキャリアをスタートしたバスキアは、瞬く間にトップ・アーティストの座にのぼりつめるが、薬物の過剰摂取で27歳の若さでこの世を去った。バスキアの友人でもあったタムラ・デイビス監督が、バスキア本人の貴重なインタビュー映像や関係者の証言を交えながらその素顔と真実に迫る。

2010年製作/93分/アメリカ
原題または英題:Jean-Michel Basquiat: The Radiant Child
配給:CJ Entertainment Japan
劇場公開日:2010年12月18日

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映画レビュー

4.0ニューヨーク・アートシーンを駆け抜けた天才芸術家に魅せられてみよう!

2010年11月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 この作品は、生前のバスキアにインタビューした、およそ20分のフィルムをもとにして製作されている。そのためにたくさん肉付けをしすぎたのか、私個人としては全体的にやや冗長した印象は否めないものに感じた。しかし、一時代を築いた芸術家を追ったドキュメンタリー映画としては、充分に評価できると思う。  このドキュメンタリー映画の中で印象的だったのは、バスキアのチャーミングな魅力だ。特に笑顔はとてもキュートで、その笑顔ひとつで多くの女性たちの心を掴んできたことを容易に想像できるほどだ。それほど魅力的な人間から生み出された芸術が、とても情熱的で新鮮、そして独創性に富んでいた、そのギャップを感覚的に楽しむのが、このドキュメンタリー前半の見どころだ。チャーミングな人間性を持ち合わせたバスキアの中に、どれほどの深遠な芸術的センスを持ちあわせていたのか。また、交流のあったさまざまな人々は、バスキアという魅力的な人間を語り、スクリーンに見入る我々もバスキアそのものに惹かれていくのだ。  後半になって、チャーミングなバスキアが崩れていく晩年が語られると、とても切ないものがこみあげてくる。  古来より、絵画には名作であっても、その時代の情報が描かれていることがよくある。それは、風景画が多い印象派の絵画であってもだ。そして現代においては、それが顕著となる。その代表が、アンディ・ウォーホルが生み出した芸術の数々だ。彼はコラージュの中に、現代の情報を組み入れたことで成功を遂げ、「時代の寵児」ともてはやされた。 ところが速い時代の流れに、ウォーホルの作品は世間から忘れ去られてくる。「時代の寵児」は、次第に「時代のアクセサリー」となっていた。ウォーホルが亡くなったとき、バスキアはウォーホルと同じ道を歩むかもしれない、との思いがこみあげ、悩みがつのって死が近づいてきたことを、このドキュメンタリーで読み取ることができる。  しかし、バスキアが「時代のアクセサリー」だったと評価する者はいないだろう。80年代のニューヨークやアメリカを鋭くとらええた情報的価値は高かったかもしれないが、バスキアの作品にはそれ以上のもの、とらえどころのない深みを感じずにはいられないからだ。それは、この映画に登場する証言者が、「バスキアの作品を、全部理解することはできない」と述べていることからも、バスキアの評価が今も全く変わっていないことを知ることができる。  おそらく、多くの方々がこのドキュメンタリーを観終わったあと、今生きていたら50歳のバスキアが、どのようなな絵画を残していたのかと思い、素晴らしい芸術家の存在を失ったことを残念でならなくなるはずだ。バスキアを知らない人でもこの映画で、あのキュートな笑顔に魅せられるだろう。そしてバスキアの絵画に興味を示す人が、今の時代に増えてくることがあれば、この映画は成功作と言えるのではないかと思う。

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こもねこ

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