「オモニ。」戦火の中へ ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
オモニ。
今作を観て、ますます思った。
そもそも戦争に正義など存在しない。
愛国心と忠誠心のみで構築された戦闘体制に、心ごと、
あるいは身体ごと飲まれ、意志まで侵される人間たち。
戦わざるを得ない状況下で、一縷の希望にかける彼らの
意気込みはいかばかりか、しかし今作で命を散らすのは
まだ年端もいかない71名の学徒兵たちである。
あらすじを聞いて、これは…と思ったが、さすがに泣けた。
原案となった実話は、この戦いで命を失ったある中学生の、
…もちろん届かなかった、母親に宛てた手紙だったそうだ。
冒頭でこの戦争のいきさつと、なぜ学徒兵が組織されたかの
大まかな説明、彼らが従軍トラックで町(村)を出発するシーン
が時折、何度も挿入される。ここに映る母親と息子の別れは、
後半のクライマックスで手紙と回想のかたちでサラリと流れる。
爆撃や銃撃、大砲など銃器を使った大掛かりな戦争シーンは
冒頭からラストまでものすごい勢いがあるが、観るに堪えない
ようなグロさはない。かなり劣勢の韓国軍が、勢いづく北朝鮮
軍の侵攻を食い止めるため、全兵力を洛東江へ集中させた
最中に起こった、浦項中学校での766部隊と学徒兵との戦い。
結果は…歴史の史実通りとなるが、今作のラストで、なんとか
ここで生き残った二名の元・学徒兵のインタビューが流れる。
これは絶対に、聞いておいてもらいたい。映画と実話、実際に
どのような状況下で彼らが戦ったのか酷明に語られている。
どこまでが実話として描かれたのかは不明だが、
今作では敵軍の少佐(すごく怖い)の人物像も丁寧に描きだす。
冷酷非道と思われたこの男の、学徒兵にとった態度にはむしろ
敬意を祓いたくもなる。殺し合いが本望ではない。かつては
同じ国の人民であったはずなのに、北か、南かで、その運命を
狂わされた一人の人間の叫びともとれる。もちろん学徒兵にも
降伏を受け入れ家に帰りたいと思った者もいたはずだ。すでに
結末が見えている戦いに血を流す必要はないと今なら思える。
だがリーダーのジャンボム(T.O.P)が出した結論とは。。
主役を演じたのがアイドルグループBIGBANGのT.O.Pなのだが、
(コレ名前なのね? チェ・スンヒョンとも書いてある)
なんともキレイな瞳をしている。すっかりオバサンはヤラれた^^;
演技面ではあまり台詞がないため…巧いかどうかは謎が多いが、
とにかく存在感は十二分にある。他に比べてずいぶん幼いが(爆)
何しろクォン・サンウが最年長の不良ときてる、その他の兵士も
わりと皆オジサンに見える人が多い。。まぁキャラ的には問題が
ないので、いいんだけど。このあたりはかなり脚色された感あり。
こういう作品は(日本映画でももちろん)、多くの若い戦後世代に
何度でも何年でも観てもらって、語り継がれなければいけない。
なぜ命を粗末にしてはいけないか、なぜ人を殺してはいけないか、
なぜ長生きしなければいけないか、なぜ平和である必要があるか。
説教くさい作品を観て、ちゃんと説教のできる人間にならなければ。
肝に銘じたくなる作品。
(韓国は母親を本当に大切にするのね。死に際に言うことも同じ…)