英国王のスピーチのレビュー・感想・評価
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二人の賢者。
アカデミー賞発表の前日に観に行った。
もちろん対抗馬の「ソーシャル~」と観比べたかったからだが、
よくよく考えてみれば、相反するようなこの二作品は、どちらも
他人に対するコミュニケーション能力についてを語ったような…
なにかどこかで似ている気がしたんだけど、、ハテ?^^;
で、結果はめでたく?今作が受賞し、ソーシャル~は三部門に。
こういう結果に正誤はないと思うので、個人的にどちらが好きか、
それに対してアカデミー会員たちはどちらが好きだったか、という
それだけのことだろうと私は思う^^;
私的な感想でいえば、私はソーシャル~の方が多分好きである。
でも観終えてこっちだな、とは今作を観て素直に感じたのだった。
今作は歴史的事実を丹念に(やや面白く)描いたものだが、全てに
バランスがとれている。俳優の演技、演出、脚本、サラリと淡々と
描く一方で、主人公のイメージアップ(爆)に貢献しており後味がいい。
もちろん歴代の英国王を描いたものに違いないのだから、どこぞの
変人大学生なんかより^^;観応えが悪かったらハッキリいって困る?
というわけでして…。
いやしかし~。吃音症って今作を観る限り精神的な病いですよねぇ。
子供の頃からあんなにこっぴどく父親に怒鳴りつけられ、利き手の
矯正からX脚の矯正、乳母からの虐待も…って、なんじゃそりゃあxx
奔放なお兄様の(今作ではまさにそう描かれてましたねぇ)陰に隠れ、
ひたすら目立たないように^^;生きてきたようなこのヨーク公が、何で
また王位を継ぐことになってしまったか!?コワくて号泣する夫って…
妻のエリザベスはどう、支えればいいのやら^^;という感じなんだけど
多分今作で描きたかったのはその、のちの国王を支えた二人の賢者、
妻のエリザベス(ヘレナ)と、スピーチ矯正専門家ローグ(ジェフリー)だと
思うのだ。彼らは主人公と行動を共にするが、決して出しゃばらず、
国王がひどい癇癪を起こそうが、耐えて容認する心を持ち合せている。
心や感情に傷を抱えた人間に一番必要なのは、こんな風に(母親の如く)
自身をすっぽり包み込んでくれる毛布のような存在なのだろうと感じた。
兄が既婚夫人に走った経緯も^^;父親が亡くなった時泣き崩れた身を
支えることすらしない母親(これは立場上、仕方ないのだろうが)に対して
命一杯反抗しているようにしか私には思えないのだ。本来当たり前の
愛情表現が簡単には為されない、許されない生活というのを知らない
私などからすれば、あ~これじゃあ、ああなっても仕方ないよねぇ…と
同情申し上げるしか、術はないのである^^; 王室って、、ホントに大変…
冒頭、エリザベスがローグの元を訪れ、事の経緯を話すシーン、
まさか王族とは思っていないローグの態度に、決してキレることもなく^^;
平然と切り返す頭の良さ、誇りを失うことなく相手の要求を受け入れ、
嫌がる夫を宥めすかし通院に成功、愚痴を聞いては、肩も抱いてやる。
教えるローグも、王の状態が分かるにつれ、宥めては突き放し、厳しく
優しく彼を指導し続ける。どんなに王に反抗&怒鳴りつけられても決して
挫けないこの二人の賢者あってこそのジョージ6世(善良王)だったのだと
幾度も幾度も今作は訴えかける。妻の結婚秘話なんて素晴らしすぎ^m^
ユーモアも英国調、ゲラゲラと下品な笑いは無く…と思ったら、唖然と
するスピーチ矯正術?の言い回しはあったが^^;
これはあのままほざいてOKかと。あの位大声で言いたかっただろうし。
もう内に秘めたものをぶわ~っ!と吐き出すに限るのだ、ストレスには。
チャーチル役のT・スポールや、ジョージ5世のM・ガンボンなど、
名優・個性派勢揃いの豪華な競演となっている今作だが、仰々しさが
ないのでとても観やすい。サラリとのたまう台詞にスパイスが効いていて
う~ん♪どこをとっても英国風で最後のスピーチまで楽しめる作品だった。
ひとつだけ言っちゃうと(やっぱり言うか^^;)
纏まりが良すぎて、どこもかしこも予定調和、不測の出来事は起こらない
(いや当たり前なんだけど)というあたりが、私的にもう少し…なのだった。
もっと深みが出せれば。
人物(私的に言えばローグ)の掘り下げがもっと欲しかった。彼の感情の
動き、彼にも失望や偏見など想いの丈があったと思うのだ。その辺りと
スピーチ矯正の場面、もっと面白く長々と時間をかけて良かった気がする。
さまざまな手法を試していた、あの場面。
ローグとジョージのやりとりを、私はもっと観たかったしもっと笑いたかった。
常に緊張感のある顔をしたコリンは、とても好きな俳優の一人なのだが、
彼の面白さはブチ切れる寸前まで我慢し通して崩さなかった顔が崩れた時。
…みたいな意外箇所で発揮されるので、コメディ要素をふんだんに取り入れ、
もっと笑える作品に…あ、そんなことしたらラジー賞になっちゃったかしら^^;
(ラストのスピーチ、エンドに流れるその後、…まさに素晴らしき哉、友情!)
ちょっと残念・・・
様々な葛藤や困難を乗り越え、吃音障害を克服。
そして、第二次世界大戦に臨まなくてはならなくなった国民に対して、見事なスピーチ。
感動的なシーンのはずですが・・・
スピーチを見事やり終えた国王に、周囲の人たちが拍手とともに、「Congratulation!」と声をかけます。
これって、スピーチの内容に対して?それとも、吃音障害を克服して見事スピーチが出来たことに対して?
でも、スピーチの原稿は国王が自ら書いたものではなかったような・・
しかも、これから戦争が始まるというのに。
国民は、生活も命もかけなくてはいけない事態に突入するかも・・
そういったことを思う時、やり終えたことを讃えるべきシーンだとは思えませんでした。
国王は世襲で、本人の器量で選ばれるものではありません。
でも、国民からは畏敬の念を持って迎えられ、その人の発する言葉は、時代によっては大きな影響力もありました。
日本が過去そうであったように・・
この映画を単なる吃音障害克服の映画と思えば、それなりのサクセスストーリかもしれません。
でも、見終わった後、私は、なんだか残念な思いを禁じえませんでした。
笑えるか、どうか、評価の分かれ目
この映画を観て不安な点
1.アメリカ人のシンプソン夫人をこきおろす描き方。必要以上?に品のない女に描いている。その夫たる兄王も、そういうつまらない女にうつつをぬかすつまらない男に描かれている。良いのかなあ。
2.公爵殿下に対する呼びかけ、王に対する王女の呼びかけなど、言葉にまつわる細かい描写が多く、日本人にきびしい。
3.吃音になった要因をさぐりあてつつ、対策があれだけなのか?という感あり。描ききれない感はあり。雅子様のことも考えて、他人事じゃない気はするが。
4.公爵の口に、医者がガラス玉を七つもいれさせる場面で、もっと笑いがくるかと思ったが、映画館の反応は皆無。そもそも「吃音の王」というとんでもない状況を、アハハと笑えるかどうか。
英国王室に対しての敬意が全く感じられない、というコメントもあったが同感。
だからこそ、王室をおもちゃにしてここまで遊ぶか・・・、アメリカ女をそこまで貶めるか・・・、オーストラリア植民地人をそこまでバカにするか・・・、など一切を、可笑しい、面白いといって、笑い飛ばすことのできる人には、この映画は最優秀賞である。
笑えない人にとっては、最悪かも。
感情移入はできないけど…
アカデミー賞の基準は分かりませんが、良作でした。
退屈な前半、予定調和的な終末。主演も助演も演技力は高い。
ヒトラーのスピーチを見て、意味は分からないが上手い、などというくすぐりはなかなか。資格を持たない言語聴覚士が役者志願者としてのテクニックを取り入れて、治していく様などもおもしろかった(もう少し丁寧に描いても良かったと思うが)。
しかし、感情移入がしきれない。実感を持って理解できない。
英国の階級のしくみや植民地制度を当たり前(植民地を差別する)ことなど、日本人にはいまいち理解できないので、この映画を真に理解することは難しいのだろう。
階級制度と馴染みがない日本人には、英国王になる者と植民地訛を持つ庶民が友人関係になる、そして尊敬されるべき英国王がコンプレックスを解消していく…このすごさは実感できない。
でも、後味は悪くない映画だな。
日本の戦後世代には単なるサクセスストーリー
ハンディーを克服して立派な王様になってゆく様子を描くこの作品が話題になるのは、王室と平民の対照だろう。今も存在する英国の階級社会の実感がストーリーに迫力をつけている。しかし 大戦に負けて一応それらがリセットされた日本では、特に戦後生まれの自分にはその感覚がないので深く入れない。背景を勉強して観賞すればきっと随所に見所がいっぱいちりばめられている作品なのだろう。
映像は、イギリスを描くとこうなるのだろうけど彩度を落とした渋い画像。時に魚眼っぽいワイドレンズを使い、また望遠で撮ったり カメラワークも楽しんだ。
霧の公園を歩きながらファースが治療を拒絶するシーンは二人の気持ちがまったく見事に画像に表れて 思わずニンマリしてしまった。
映画としての面白さが・・・
コリン・ファースの熱演は分かるが、映画自体としては面白みに欠ける。家族愛も描きたかったのだろうが、ヘレナ・ボナム=カーターにあまり感じなかった。アカデミー作品賞と主演男優賞は決まりだろう(実話が強いので)。主演女優賞はナタリー・ポートマンに獲って欲しい。
☆アカデミー賞に確定だと思います☆
試写会でみました。
前評判通りの、本年度最高傑作になると思います。
英国王室を舞台にしているので、
難しいストーリーかと思いきや、
笑いありのエンタテイメントにしあがっています。
メインの俳優3人の演技、英国の景色・映像、笑い、家族愛、、、
どの観点からも素晴らしかったです。
ラストのスピーチは圧巻です。
もう一度、何度も観たい作品に出合いました。
コリンファース アカデミー主演男優賞か
現在 イギリスとオーストラリアの国家元首である、エリザベス女王の父親にあたるジョージ6世のお話だ。
この映画、ゴールデングローブ賞で、アルバート ジョージ6世を演じたコリン ファースが 主演男優賞を獲得した。アカデミー賞では 作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞にノミネイトされている。
監督:トム ホッカー 37歳の新鋭の監督
キャスト
アルバート ジョージ6世:コリン ファース
言語療法士:ジェフリー ラッシュ
エドワード8世:ガイ ピアース(アルバートの兄)
アルバートの妻:ヘレナ ボナム カーター
シンプソン夫人:エバ ベスト
ストーリーは
1936年、英国王ジョージ5世がに亡くなった。次期国王は当然長男の プリンス エドワード8世(ガイ ピアース)が 継承するはずだった。王政学を学び ジョージ5世を支え、次期家長として活躍し 陸軍に従事し 国民から慕われていた。にも関わらず 彼は離婚暦のあるアメリカ女性 シンプソン夫人に夢中だった。英国議会も大英教会も 国王が離婚暦のある平民の女性と結婚することは 英国憲法違反であることを指摘する。国王の座をとるか、平民となって離婚した女性と一緒になるか 選択を迫られて、プリンス エドワードは シンプソン夫人を取る。「シンプソン夫人の支えなしには 国民のための いかなる執務も行うことは出来ない」という歴史的で感動的なスピーチを残して 彼は去る。
にわかに脚光をあびることになったのは 次男のプリンス アルバート(コリン ファース)だった。彼は 海軍出身。華やかで社交的で国民に人気があったエドワードに比べて 正反対の性格。シャイで吃音障害を持っていた。吃音を治すべく 今までに何人もの専門医師や言語療法士の治療を受けていたが 効果がない。生まれもっての短気で激しやすい性格もあって、正常な会話ができないことに困りきっていたところだった。
心配した妻 エリザベスは ドクターライオネル ロークという新しい言語療法士に会いに行く。オーストラリア パース出身の変わり者。彼は プリンスの妻に向かって 治療してもらいたかったら 自分の家の診療室に来るように、と言って、プリンスを呼びつける。古いロークの家には 極寒のロンドンにもかかわらず充分な暖房さえない。そんな彼の自宅で治療が始まった。発声練習から歌ったり踊ったり ワルツを踊りながらシェイクスピアを読む。意表をつく独特の治療法に、幾度も幾度も アルバートは 怒りを爆発させ 治療を中止させる。
しかし、そんなことを繰り返すうち、アルバートは次第に 今まで誰にも打ち明けられなかった胸のうちを ロークに聞いてもらうことができるようになる。序序に、二人の間に友情が芽生えてくる。
時に、ナチスドイツがポーランドを始めとするヨーロッパで侵略を進める。フランスに次いで 英国も参戦せざるを得ない。英国の誇りをもって開戦するに当たって、国王は国民に向かって スピーチをする。歴史に残る名スピーチだ。アルバートは ロークを伴って放送室に入って マイクロフォンに向かう。何度も 詰まりそうになりながら オークの励ましのもとに スピーチを最後まで 声高らかに威厳をもって読み上げる。
というお話。
とても良い映画だ。
どんなに吃音障害をもつことが苦しいか よくわかった。映画を観ている人は アルバートと一緒になって 理路整然としている自分の考えを 伝えることができない苦しみを味わう。言葉が出てこない。うやうやしく待ち構える人々や、議会や教会の官僚達の前に立って 口を開く瞬間の緊張感。失敗に失敗を繰り返し 自己嫌悪に身をこがし、こみ上げる怒りをぶつける相手もいない。立場が立場なだけに どもって言葉が出てこなくても 笑う人はいない。人々はただ かしこまって次の言葉を待っているだけだ。それが本人には 余計なプレッシャーになってますます言葉が出てこない。家に帰れば 二人の幼い娘達が待っている。愉快なお話を作って話して聞かせる ふつうの父親だ。父親が言葉につまれば 娘達は幼いながらも 根気よく次の言葉を待っていてくれる。それが またつらい。
コリン ファースの いかにも外見からして誠実でまじめな姿が 吃音障害に苦しむ国王の役に適役だ。今年のアカデミー主演男優賞を獲るだろう。とても良い役者だ。
対する 人を食ったようなジェフリー ラッシュの名演技、、こればかりは他の役者にまねができない。この映画で ロークがシェイクスピアの「ヘンリー4世」を 舞台のオーデイションで演じてみせるシーンがある。さすがにうまい。ゾクゾクするほどだ。何年か前、彼は 映画「シャイン」で精神分裂症のピアニストを演じてアカデミー主演男優賞を獲った。
英国教会が どこの馬の骨かわからないロークを退けて 権威ある専門の言語療法士をつけるように圧力をかけたとき、アルバートは ロークは自分にとって個人的に特別必要な人なので やめさせるわけにはいかない と擁護する。そのとき初めて ロークは自分が 医者でも専門の言語療法士でもない。パースからきた役者にすぎないと言う。かれは 役者として発声訓練をしているうちに 戦争から帰ってきて 体や心に傷を受けた兵士達が 言葉を失っているのを見て それらの人々を治療してきた。経験の多様さでは専門の言語療法士よりも自信を持っている。そんなロークの告白を 驚きもせず聴くアルバート。二人は すでに分かちがたい固い友情で結びついていたのだ。名優どうしの名場面だ。
アルバートが兄エドワードのむかって どうして王位を捨てるのか 問い詰めた時 残酷にもエドワードがアルバートの口調を真似して からかって 立ち去る場面がある。温厚で人格者だという評判のエドワードだが、兄は いつも強い立場だから、からかわれて こき下ろされてつらい思いをする弟のつらい立場には理解が及ばない。強いものは常に弱いものに対して 無自覚だ。
アルバートの吃音障害は 左利きを 教育係に厳しく更正させられたことが契機だが、年上の兄に 大事な玩具をとりあげられたりしたトラウマも要因になっている。何気ない兄弟間のやりとりで内気な年少者の方が傷を負う。年下にしか わからないつらさだ。
妻エリザベスのヘレナ ボナム カーターも良い役者だ。「アリスのワンダーランド」でスペードの女王をやったり「スウィートチャーリー」で 人肉パイを作る悪魔のような女を演じた。今回は 出過ぎず、語り過ぎず ただ夫を支える妻の役が良かった。夫とともに傷つき 共に不安に慄き、歓びを共にする、ひかえめだが なくてはならない役を よく演じていた。役作りのために 歴史学者に会ったり 古い英国のしきたりなど、すごく勉強したそうだ。
それと、子役のふたりの娘達。長女のエリザベス(いまのクイーン エリザベス)役の子供の利発そうな姿が ひときわ目立っていた。
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