ヤコブへの手紙のレビュー・感想・評価
全7件を表示
ジーンと胸を打つ感動作。
静かなピアノ曲をバックに、静謐な空気感のなか物語は映し出されます。
ゆったりとした気分で観ていると、最後にジーンと胸を打つ感動が待っています。
人の心、相手を思いやる心は目の色肌の色が違っても同じなんだと、今更ながら思い知らされます。
盲目の年老いた牧師。
受刑者だった中年の孤独な女。
郵便を配達する男。
この三人が織り成す物語。
疲れたあなたの心を癒す小品です。
一片のパンと一杯の紅茶。
外からの光差す以外は薄暗く雨漏りのする部屋。
そんな家でヤコブはあなたを待っています。
とても哀しくて温かくなる素敵な映画です
片田舎の古びた家に一人で暮らす盲目の牧師のもとに、恩赦を受けた女受刑者がやってくる。彼女に与えられた仕事はただ一つ、牧師に届く手紙を読み上げること。
登場人物3人。愛想のないおばちゃん、年老いた牧師、郵便配達人。
たったこれだけだからこそ集中してどっぷりとこの映画の世界に浸れるのかもしれないですね。真実が明らかになったときの感動とおどろきも魅力ではありますが、それ以上に、人々に祈りを捧げ続け頼られてきたはずの牧師が実はこんなにも孤独であるということに胸が締め付けられました。
久しぶりに良い映画に出会えました。
ずっと手紙を書く人。
名画座にて。
大変失礼な告白をしちゃうと^^;
私はこのチラシ(は持っていた)のレイラ役カーリナさんを
長いこと、オッサンだと思っていた(爆)
いや、なんか郵便配達系のお話なんだな~と見つめていて、
作品を観て初めて、エ!オバサンだったの?と気付いたのだ。
いやはや~^^;
だってなんだか恰幅がいいもんですから(爆)すいません~。
こんな失礼な告白をしておきながらナンだけど、
これはとてもいい作品である。本当だ!(力を入れておく)
牧師の家を舞台に、盲目の牧師に届く手紙を読み返事を書く、
という仕事を仰せつかった元・囚人の心の機微と変化を描く。
誰にも心を拓かなかった囚人レイラが、突然の恩赦で出所、
行き先が牧師の家、という一見ワケの分からないストーリー
になるのだが、これがなんと、後半(というよりほぼラスト)で、
意外な結末を迎える。ネタバレ厳禁かな、ある意味^^;
レイラと共に、なぜこの家でこの仕事をすることになったのか。
を考えさせられ、自分の身の上を、家族の有り難さを、手紙の
持つ力と願いに魅せられる佳作。チラシ以上にインパクトあり。
(シンプルすぎるほど単純で静かな物語。手紙が懐かしくなる)
ヤコブ牧師 郵便ですよ~
映画「ヤコブへの手紙」(クラウス・ハロ監督)から。
フィンランド映画らしい、静かな作品の中にも、
人間そのものにスポットを当てた作品として評価したい。
恩赦を受けて12年ぶりに刑務所を出所した女性が、
ヤコブ牧師と一緒に過ごす間に、少しずつ心を開いていく物語。
盲目の牧師宛に、毎日のように悩み相談や、
お祈りを依頼する手紙が届き、それにひとつずつ丁寧に返事を出す。
なぜか「手紙」の持つ意味に、心が震えるのを覚えた。
しかし、世界中から寄せられる、その手紙を
一番楽しみにしていたのは、ヤコブ牧師、本人であった。
手紙を受け取ることで、自分の存在価値を見いだし、
自分の使命のように生きがいを感じていた、とも言えそうだ。
郵便配達人の自転車の音にさえ、ワクワク感を感じ、
遠くから聞こえる「ヤコブ牧師 郵便ですよ~」の掛け声に、
高齢で盲目である彼の生気がみなぎるのが、わかった。
今の時代の「携帯メールの着信音」に等しい気がする。
自分宛に、手紙・メールが届くのは、いつの世も嬉しいもの。
だからって、そう頻繁に届くはずがないのに、
一日に何度もメールを確認する人たちの気持ちが理解できた。
物語内の「ヤコブ牧師 郵便ですよ~」って掛け声は、
「ユー・ガット・メール」と呟くメール着信音と同じだな、きっと。
原野に咲く一輪の花のような人間の美しさに感動する小品
主要な登場人物は、たった三人。舞台は、北欧の原野にたつ古い牧師館と教会だけ。上映時間はたったの75分しかない、この映画は文字通りの小品だ。しかし、語られている内容は深く、人間がどこまでも大きな存在であることを感じさせてくれた。
物語は、刑務所の談話室から始まる。終身刑の女性が恩赦を受けて出所するのだが、本人は出たいとも思わないし、出ても帰るところがない。ところが刑務官は、女性の身元引受人である牧師のもとへ行くことを告げる。その牧師は、盲目になってしまったために、信者たちからくる手紙が読めないので、恩赦をうける女性に手紙を読んで返事を書く仕事をするのだ。しかし、女性はまったく気が進まない。それは、刑務所に入って以来、誰とも気を許さず、面会も断る、孤独な日々を送っていたからだ。当然、刑務所にありがちな教会関係者との接見も断っていたのだから、女性にとって牧師は「天敵」のような存在だ。
ここまで説明すると、女性と牧師の関係は、最初はギクシャクしたものだったことは、まだこの作品を見てない人でも想像がつくだろう。そして、この作品の主要な物語は、女性と牧師の関係性の行方であることも分かっていただけると思う。
この作品のひとつのテーマは孤独だ。女性も終身刑を背負う孤独な人生を過ごしてきた。そして盲目の牧師も、手紙が絶えてしまったことと、「神の沈黙」と向き合い、孤独を強いられてしまう。しかし、物語が進むにつれて、人間は孤独でないこと、人間の心の大きさが絆をしっかりと育むことを、女性だけでなく観客にも教えてくれるのだ。
これ以上は映画について話すことは許されない。だから、私個人の見終わった後の感想だけを述べさせてもらうと、盲目の牧師は、原野の咲く一輪の花、のような存在で、恩赦を受けた女性は、花に誘われたチョウかミツバチのように感じられた。原野にたったひとつある花は、見落としてしまいがちなほど素朴なものだ。しかし、その花もミツバチやチョウにとっては大事な糧となる。盲目の牧師は、老醜をさらけだしていて、とても花に似ているとは言えない。しかし、花のような人間的な美しさに感動させられる。それが、この小品の最大の魅力なのだ。
全7件を表示