BIUTIFUL ビューティフルのレビュー・感想・評価
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バルデムさん,渋い。
もう少しはっきりとキャラ立ちさせてくれると観やすかったと思う。 ちょっとした能力があるのはわかったけど だから今の彼がある、っていうふうにはつながりが見えずらかった。
【ハビエル・バルデム演じる霊媒師ウスバルの哀切な姿が忘れがたい作品。アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督が”21グラム””バベル”を経て、ステップアップした作品でもある。】
スペイン・バルセロナが舞台である。 が、今作では観光都市の側面は一切描かれない。 厳しい日々を送る人々の姿が、暗いトーンで描かれる。 主役は、妻と別れ幼い子供二人と暮らすウスバル。(ハビエル・バルデム)定職につけず、社会の底辺の生活を送る日々。 だが、身体の不調を覚えた彼に告げられた非情な宣告。 ウスバルは宣告を受け、薬物に走ってしまった妻マランブラ(マリセル・アルバレス:アルゼンチンの舞台女優さんで、今作が映画初出演。退廃的な雰囲気を身に纏う姿が魅力的であった。残念ながら、今作以降映画には出演していない・・)と残された時間の中でもう一度、家族の絆を取り戻そうとするが・・。 ウスバルが出稼ぎの中国人たちのために、良かれと思って行った事が、悲劇を招いてしまう。 劇中、明らかには描かれないが、ウスバルは彷徨える死者の魂と交信することができる霊媒師という設定が効いている。 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督はその設定を前面に出さずに哀しき物語を描きだし、観客に”あるメッセージ”を発信する。 <厳しい状況の中で、残された時間の中で”生きる”という意味を見る側に鋭く問いかけてくる作品。決して楽しくはないが、見応えがあった作品である。> <2011年9月8日 劇場にて鑑賞>
それでも、懸命に生きた男のたどり着くところ
黒澤監督『生きる』にインスパイアされ、オマージュをささげた場面を挟む本作。 『生きる』は、志村氏の鬼気迫る演技と、構成が見事で、唯一無二の作品になったが、 本作は、プロローグとエピローグが特に秀逸であるものの、基本的にひたすら時系列で進んでいく。 主演のバルデム氏は、様々な表情を見せる。慈愛に満ちた温かさ・愛おしさ。怒り。嘆き。後悔。懺悔。すがりつき、哀願し、彷徨い。~~、空ろな眼。賞受賞も納得。 周りを囲む役者も見事。一人として替えがきかない。 ”死体”としても演技させているよ。驚愕。 これでもか、と次から次に起こる出来事に振り回され、その展開でも”生きる”ということを考えさせられる。これだけ盛り込んでいるのに、脚本がぶれない。 時系列的に進んでいく物語の中で、さりげなく背景にこれから起こる予言のようなシーンが挟まれていく。 決して、”美しい”とは言えない映像が、なぜか忘れられぬものになる。 時折挟まれる音楽も、この映画を印象付ける。 それらが見事に融合して、同じテーマを扱い、死にゆく男を描いているが、まったく別の、唯一無二の映画となった。 何をしても、努力しても、歯車がうまくかみ合わぬギシギシという音が聞こえてきそうな暮らし。 やっていることは犯罪なのだが、必死に生きる術を行っているだけ。 せめて、まともな生活ができる人に育てようと、子どもにマナーを、教育を身に着けさせようと心を配る姿が何度も描かれる。のに、娘に教えことができる綴りが「biutiful」なのが、胸をえぐる。 福祉については正面切って描かれていないが、ああ、彼らにとっては何の手助けにもならぬのだろうという雰囲気がひしひしと伝わってくる。 そんな状況に身を置くウスバルの生き様をひたすら追っており、同時に社会の闇の部分もあぶりだす。 その中で際立つ”家族”という存在。 血のつながりがあっても当てにならない家族。 ”愛人”にかき回される家族。 そして、血のつながり以外のところでの助け合い。けれど、それとて、なんともろいことよ。 メンターは心の支えにはなるが、家賃は払ってくれない。 信頼できる人に託せたとしても、親族がどう動くか。 「梟は死ぬとき毛玉を吐くという」映画の中で3回出てくる。 死んだ息子の言葉を知りたがる父親。 父から子へ。子から父へ。 ラスト、ウスバルの表情がいつまでも心に残る。 傑作です。
絶望とは
非現実的なまでに楽天的な映画は数多くありますが、ここまで非現実なまでに悲観的な映画はそうないのではないでしょうか。 詳しくは言えませんがどうしようもない不幸がどしどしやってきます。 その中で主人公はもがき戦います。 その中に、ありがちな絶望や諦め、安っぽいポジティブなどは一切ありません。ただ必死に問題をどうにかしようとするのみです。 観賞する側にも、相当な覚悟とリテラシーが要求される映画だと思います。人間の強さと愛が、どうしようもなく染み付いているから撮れる、また観れらる映画だと思いました。 演技も本当に素晴らしかったです。
背負った重荷
本作からイニャリトゥは一人の男を描く方向性で孤独に苦悶し苦闘する男の共通性がある。 何もかもがギリギリの状態の中、絶望的で這い上がる術もなく子供たちに遺せる何かは微々たるモノで。 家族で食卓を囲むシーンが多く唯一ソコが和める所でセネガルからの移民の母子に希望が託せる。 スピリチュアルな部分を前面に押し出さずに寧ろ意味ある?位な感じが良いバランスで。 希望はある美しい物語。
アントン・シガー
深い悲しみ、強烈な喜び、生き抜く逞しさ、思惑の鋭さ、生きている瞬間、残された者、去り行く者、死に行く瞬間――。どんなに激しい過去を生きようが、又は どんなに極端な未来が待ち構えていようが、自らが置かれた(自らが求めた とも言う)環境、時代、境遇の中で、その場所に、その時に感じる 感 情 の み に 支 配 さ れ る 感 覚。 才気 溢れる監督 Alejandro Gonzalez Inarritu 渾身の一撃に私は もう足元が ぐらぐらです!!!! アントン・シガっ…、ぢゃなかった(←ワザト デス/笑) Javier Bardem の雄弁な全身から発せられる体臭は主人公 Uxbal の感情にきっと近い、剥き出しの気持ちを運んでくれる。何度でも感じたい、普遍的な魅力に満ちた傑作。
絶望の中にも
妻と別れ、幼い2人の子と暮らすウスバル。 養う為に、時には裏社会の仕事も請け負っていた。 ある日、余命宣告を受け…。 監督が黒澤明の「生きる」に影響を受けて作ったらしく、ヒューマニズム溢れる感動作かと思うと大きく覆される。 受け止め切れない程の重みを放つ。 ウスバルを取り巻く環境は決してイイとは言えない。 生活は貧しい。裏社会の仕事は常に綱渡り状態。 そんな時、突如として宣告された死。 死に恐怖し、絶望する。 しかし、絶望の中にも光はあった。 愛する2人の子供。 ウスバルは子供たちの為に生きようとする。 映画は父と子の湿っぽいお涙頂戴ドラマへ媚びようとはしない。 裏社会の仕事は犯罪映画のような緊張感が張り詰める。 ヒリヒリとした苦しさ、厳しさ、辛さ…。 絶望の中の微かな光に、人生や救いを問いかける。 どんな映画に出ても圧倒的存在感を放つハヴィエル・バルデム。 今作での演技は、オスカーを受賞した「ノーカントリー」の時以上。
美しい最期。
開始序盤に「ん?これって霊との対話?オカルト?」的な描写があって、それで直ぐに分かるんですけど、ハビエル・バルデム演じるウスバルは霊能力者という設定なんですよね。だからストーリーもそっちに引き摺られるのかな、と思いきや、その考えは浅はかでした。 勿論、それも重要なファクターではあるんだけども、物語の重きはそっちじゃなくて。スーパーナチュラルで解決出来る程、リアルは決して甘いモノでは無くて。 裕福とは呼べず、問題だらけの環境で、慈愛に満ちた男が、余命僅かの中、家族と仲間を守ろうとする―その生き様なんですね、話の軸は。淡々と、それでも情熱的に。聖人の如く。 彼の詳しい生い立ちは分からないし、何故、今の様な苦境というか、まるで底辺を這う様な生活をしているのか、犯罪紛いの仕事に手を染めてるのか、詳しい説明はないです(彼の父母の話や妻との馴れ初めなんかは出てきます)。 まあ、冒頭の巧みな注射捌きで、どういう人生だったのかは、微妙に示唆されたりしてますけども。 でも、そこは問題じゃなくて。 この状況をどう打破すべきか、どうやったら皆が幸せになれるのか。彼の行動原理がほぼ自己犠牲。それが兎に角、胸を打つ。 なのに、彼の努力はいつも空しくて、状況はどんどん悪くなる。それと反比例するが如く、画面一杯に広がる空の色や雪景色、街並はやたらと美しくて。この、皮肉。 やがて犯してしまう、致命的で取り返しの付かないミス。 何も解決せず、山積する放り出された問題。 誰も救済できない最後。 最期。 ああ、それでも彼は救われたのか、と。 天国は、誰にも平等に美しいのか、と。 静かに、さり気なく張られてきた伏線が、ここに全て帰結してる。 本当に良かった。世界はやっぱり美しいんだ。彼は肯定されたんだ。 素敵な結末に、涙がそっと浮かびました。
残りの時間の過ごし方
これでもかと困難が次から次へとわいてくる。 人生の締めくくるために、実際的なことを片付けながら 心の準備もととのえなければいけないのに……。 社会の底辺で生きるって、つらい。 やることなすこと、裏目に出るし。 主人公が必死になるほど、切なくなる。 ものすごく重たい内容だけど、 観終わったときはすがすがしいというか、 腑に落ちた感じがした。 バルデムの演技、バルセロナの裏の顔 見ごたえがあった。
強い父親とは
2人の子供を育てる父親が末期がんを宣告され、死ぬまでの2か月間懸命に生きる姿を描く。 テーマはとても重い。テレノベラのダークバージョンといった感じ。プロローグから観客に謎を与え、最期に解決の手を差し伸べるというイニャリトゥ監督のテクニックは今まで同様顕在。今回はオムニバス形式ではなく一歩進化した感がある。 現実はとても重い。家族を支えるために、犯罪ぎりぎりまで手を染め家庭を立て直そうとするが、できない。でも父親はへこたれない。良いと思ってしたことが逆の結果を生むこともある。子供たちを託す相手にセネガルからの不法入国者を選ぶ。それが良かったかどうか、一縷の希望を託す。最期まで子供たちを思って生き抜く姿は一昔前の日本の父親像を見るようだ。父親というものの本質を描いた作品である。 黒沢明監督の映画「生きる」へのオマージュだそうだが、イニャリトゥ監督の料理の仕方は実にうまい! 主演のハビエル・バルデムの存在感ある演技素晴らしい。彼の最高傑作のひとつとなるだろう。 もう一度鑑賞したい作品。
2時間半、シビれました!!
試写会で観てから一週間。 やっとレビューを書ける気になってきました。 割と話題の作品であるにも関わらず、 まだ誰もコメントを入れていないのは、きっと言葉にするのが相当むずかしいのかな。(まあ、確かに127時間のように単純ではないかも) いや~2時間半。緊張しながら魅せられっぱなしでした。 ショーン・ペンも観た後、長い間立ち上がることすらできなかったと。 納得です。 最近の映画は公開前のトレイラーのほうが出来栄えがよく、本編を観てがっかりするものが本当に多いですが、この映画は全くそうではなかった。 1800円以上の価値あり。 言葉にするのは難しいし、何かのついでに気軽に観れる映画じゃないかもしれない。それほどまでにズシンとくるから。そして余韻がものすごい。 ハビエル・バルデムのアカデミーに匹敵する力演とイニャリトゥの最高傑作であることだけは間違いない。 久しぶり「これが映画だ!」というものを観た気がします。 今年観たものの中では、確実に一番良かった。
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