奇跡のレビュー・感想・評価
全58件中、1~20件目を表示
しっかりした子供達と、あったかい大人
お兄ちゃんが自分の部屋を自ら掃除するところ、
弟が自分で朝食食べて、ゴミ出しして、お父さん起こして仕事に行くところ、等。しっかりしていて逞しい!それでいて子供らしさも全開!
周りをとりまく友人たちもいい感じ。対等な関係って感じやね。
こんな子供時代いいなあと少しひねた子供時代を過ごした当方からは羨ましく映った。
阿部ちゃんも「デリカシーはないが根はいい教師」が演じられていた。こんな先生好きだな。
下記のくだりでは思わず吹き出してしまった(笑)
「エグザイルは職業なのか?」
「昆虫は職業なのか?」
本作の本当のテーマとは?
奇跡
2011年
是枝裕和監督作品
本作もまた、家族、親と子供をテーマにした作品ですが、子供の視点から撮られているところが他の作品と異なります
本作はスタンド・バイ・ミーのような子供達の冒険物語のようで実は違います
本作のテーマは子供へのネグレクトだったと思いました
子供達の演技があまりにのびのびとしているのでそこに目を奪われてしまいます
こんな程度のことがネグレクトといえるのか?そう感じる方もおられると思います
こんな家庭2025年のいまはどこにもあると思います
東京とかの大都会だけの事ではなく九州の地方都市でもこうした問題が起き始めた時代だからこそ監督は九州新幹線をモチーフに取り上げたのだと思います
いよいよ新幹線がすれ違うという時に、主人公の小6の航一は、決めていたはずの願い事を言えません
彼の頭の中では、桜島が大爆発しろ!とかまではイメージできていたのに、それからあとは、また家族が一つになって暮らせますようにとの肝心の願い事が頭から消えてしまい、最近の子供達だけの大冒険の様々なことが去来しただけで終わってしまったのです
昨晩泊めてくれた見ず知らずのお爺ちゃんとお婆ちゃんのことが大きく思い出されます
どこかの駅でみた理想の父親の後ろ姿と楽しそうにまとわりつく子供達の光景も
「願い事言えへんかってん」と彼は、弟の龍之介に打ち明けて謝ります
なんで?と聞かれて彼は「家族より世界を選んでしもうた、ごめん」と彼の父のような訳のわからないことを口走ります
弟は「龍之介も違う願い言うてもうてん」とそれに応え、兄は「父ちゃんのこと頼むで」と返します
きっと航一少年は強制的に大人になったしまったのです
奇跡なんか起こらない
桜島が大爆発しないように
家族はもう一つにはなりはしない
両親が、勝手気ままに生きているなら、子供は子供で生きていくしか無いのだと、あの瞬間思い知ったのです
龍之介も、家族をがもと通り一つになりますようにではなく、父のバンドが売れますようにと願ったようです
意味わからへんと何度も繰り返される言葉は、この現実を受けいれられないとの訴えでした、新幹線がすれ違った時、彼は意味が分かったのです
自分達は実は両親に深く愛されてはいない
昨晩泊めてくれた老夫婦の家のように、子供は大事に扱われるべきだ、可愛いがわれるべきだとは子供心に航一は思っています
それでも血が繋がってもいないのに一緒に暮らしてもいない家族でもないのになんでやろ、意味わからへん
でもあの家ではそうしてくれる大人がいた
しかし自分達の両親はそうでないのです
それでも自分達は生きていかないとならないのです
子供一人で生きていくことはできないことぐらいは分かっている
それが彼の言う「世界」ということなのです
その時、彼は子供を脱し、世界を受けいれたのです
子供達はそれぞれに決めていたそこ願い事を大声で叫びました
本当に奇跡が起きるのか?どうか
そんなことはあとにならないとわからない事です
レッドは愛犬が生き返るなんてことが起きるはずも無いのは彼自身がわかっています
彼は小さな妹と父だけの家族のようです
父の生活は荒れていて夕闇の中風俗店に消えます
父はレッドに妹を連れて先に帰れと言ってます
レッド兄妹はまたかと諦めて二人で家に帰るシーンがあります
家に帰っても母も夕飯も待っているとはとても思えません
たぶん、このまえに父が二人に食堂で何か食べさせたのでしょう
レッドには愛犬マーブルがいて面倒を見ています
自分達に家族の愛が振り向けられることがない代わりに犬を可愛いがって自分を慰めているように見えます
愛犬は公園のシーンの時から衰弱していたようです
老犬なのかもしれませんし、餌を満足に与えられていないからかもしれません
愛犬の死は自分達兄妹の運命を暗示しているようにレッドには感じられたかも知れません
奇跡が起きて犬が生き返らなければ、自分達兄妹の運命も変えられないことになる
彼はスーパーの駐車場のスロープを上るときそう思って怖じ気づいたのかもしれません
暗くなってきて小さな妹を一人残して来たことにも気がついたのかもしれません
それが彼に回れ右をさせたように思いました
それでもとにかく、子供の自分達にできることはやり遂げたのです
そこから先はいつかわかることです
阿部寛の演じた担任の男先生の反応のように片親のない子供は普通に一学級に何人もいる時代です
片親がいないからネグレクトされているとは決してイコールではありません
片親であっても子供達がより深い愛情に包まれて育てられている家庭はいくらでもあります
しかし航一の周りにはほかにもまだまだネグレクトされている子供がいそうです
子供達は福岡と鹿児島にそれぞれ帰ります
龍之介の父は息子が昨晩居なかったことに気がついてもいません
福岡の少女めぐみの家でも母も祖母も、
昨晩のことを真剣に心配していた素振りもありません
もしかしたら、少女が友達の家に泊まるなどと言っていたのかも知れませんが、それでもあまり関心がないのです
鹿児島の航一の家では祖父が帰りを今か今かと待っていたようです
祖父が航一の外泊をうまい理由をつけて母と祖母に言ってあったようです
それでも航一は携帯を持っているのに、母が大丈夫?と確認の電話もしていなかったのです
昭和の母だったなら、誰の家に泊まるの?とかしつこく確認して、その家に電話して迷惑をかけますとか挨拶していたでしょう
祖母も母が電話するかどうかを見守っていたはずです
子供達の誰にも親からの電話はなく、子供も親に電話をしません
つまり彼の母は子供に対して無関心だったのです
母は大きくなってと思っているのみです
航一もそれが自分の家庭では普通の事だと思っています
弟の龍之介は自分から淋しいと親に電話すると、その電話を鬱陶しいように思われて嫌われるのではないかと思っていたのです
母は都合の良いときだけ可愛いがるだけなのです
「お父ちゃんのこと頼むで」
子供達のほうがよほど親を心配しているのです、家族を求めているのです
その構造が、新幹線がすれ違った時航一にはわかったのです
そういう奇跡が起きたのです
2004年の「誰も知らない」の延長線上にある映画だと思います
そして2018年の「万引き家族」に繋がっていくベースになった作品と思います
つまり本当もまた日本の家族の崩壊がテーマだったのです
航一は12歳、龍之介は10歳
本作公開から14年過ぎました
あの兄弟はそれぞれ26歳、24歳になっています
早ければ結婚していたり、子供がいてもおかしくありません
親にしてもらったようにしか自分の子供を育てられないと良く言われます
ならば彼らの家庭ではネグレクトが拡大再生産されているのでしょうか?
少なくともこの兄弟が持つことになる家庭はそんなことはないと思います
あの時奇跡が起こっていたのですから
ただ桜島の大噴火の絵が赤く怖いです
何かの暗示とは思いたくありません
是枝版「スタンバイミー」
是枝版「スタンバイミー」で、本当に良く出来てる。ある意味職人的うまさを感じる。是枝裕和監督にかかると、日常的なものが、映画的に生き生き見えてくる。
今回の映画は、「まえだまえだ」の前田航基と前田 旺志郎を軸に、橋爪功、樹木希林、原田芳雄などの芸達者が、はみ出ることなく、二人を支えていて見事。市井の人々という感じ。りりいのおばあちゃんもよかったし。
よく見るとジャーナリスティックな面や、哲学的な面なども感じられて、いろんな見方のできる映画。時代をしっかり意識して、九州新幹線開通に合わせて作られ、その時代の世相まで入れ込んでいる。「事業仕分け」「中心市街地問題」(どこにでもある商店街問題です)、地方都市の疲弊など、うまく取り入れている。
で、オダギリジョーのバンド名が「ハイデッガー」と哲学者の名前。兄(前田航基)がよく口にする「意味が分からん」や、家族と世界、世界って何?とか、けっこう哲学している。
ハイデッガーは、私の覚えているところでは、時間は、映画のフィルムのように一瞬、一瞬がコマの連続で、生まれては消えて、また生まれる。いつも一瞬はこの世で初めての一瞬とか言っていたように思う。それは、過去、未来に縛られていない、目の前には今の一瞬しかないということ。そう考えると過去をくよくよしない、未来に不安を持たない、今をしっかり楽しく生きることができるという話だった。それを体現しているのが弟(前田 旺志郎)。
お兄ちゃんも、いろいろ考えて「意味が分からん」と言っていたが、ラストで鹿児島に帰ってくると、あれほど嫌っていた桜島を、最後は受け入れる。ようやく桜島が彼の「ふるさと」になったのだろう。
ラスト近く三人の少年が帰ってきての鹿児島の駅の俯瞰のロングショットは素晴しい。まちがあたたかく彼らを見守るよなカットだった。
(是枝作品の醍醐味はロングショットだと思う。「幻の光」でも、もう人物が見えないぐらいのロングショットで台詞を言わせていた。)
それとほとんど引きの画で、そのフレームのなかで役者が自由に動く、カメラが無駄に動かず、役者を動かす。うまいものだ。下手な演出家は、キャメラを動かす、上手い演出家は役者を動かすとよく言われている。
編集も特徴的で、緩やかなリズムがある。細かくカット割りをするのではないが、ゆったりとした編集のリズムがだんだん映画全体のリズムになる。メインタイトルが出るまでのゆったりしたリズムのカット割が気持ちいい。
あと今回は、本当に芸達者に無駄に演技をさせなくてよかった。「歩いても歩いても」の樹木希林と原田芳雄は、違和感があったが、今回はなかった。
謎のパワー
祖父のお菓子作りに対して「好きなもの作って商売やってる人なんていないでしょ」というセリフがある通り、是枝監督にとっては好きで作ったんじゃないような作品じゃないかと思う。
確かに大枠のテーマに家族があるという意味では他作品とも共通するような印象もあるが、どこか主人公前田兄弟が発するテンションに合わせて構成されたように見えるストーリーは、他の作品に共通してみられるいわゆる是枝節とは味わいが異なっている。
簡単に言うと、他の作品においては中年側の視点の成長が描かれているのに対し、本作は珍しく子ども側の成長にフォーカスを合わせていて、その点においては「誰も知らない」に近いと言えば近いのだが、テイストはまるで違っている。
難点としては、クライマックスに向かう物語の接着/または一番描きたかった主人公の成長との物語の接着が妙に甘く、「んなわけあるか」と思ってしまうようなシーンが多かった。
ただ、本来そういうのが気になると物語に没頭できない私が、何故か文句なしにのめりこめるぐらい強力に美しい冒険が描かれていた。
特徴的だったのは子どもたちが本当によく走っていたこと。大人は急いでいる時以外は絶対に走らない。しかし、彼らは頻繁に無邪気に走り、その度にそのスピードをもって感情を伝えてきていて、ところどころ、ただ彼らが走っているだけで感動してしまっていた気がする。
子役主体の難しさかしら
子供たちの冒険と成長が微笑ましい
子供でも十人十色様々な事情と願いを持っている。その願いを叶えるために奇跡が起こる都市伝説のような話を信じ、子供なりに知恵を出して冒険をする。大人からしたらささやかな冒険でも、それは子供達を成長させる。冒険の中で、自分の願いに少しだけ客観的に向き合い成長する姿がとても微笑ましく感動した。いい映画でした。
スタンドバイミーのよう、キャストも豪華です
子供の成長は輝かしい
社会風刺、時には厳しい現実を突き付ける是枝作品の中でも、物語全体通して明るい作品で、少し面食らった。親の離婚により、それぞれ離れ離れで暮らす兄弟だが、互いに良い友達にも恵まれ、強く生きている。そこに悲壮感はなく、特に弟は年頃なのに母親にも甘えるところもなく、逆に母親が寂しがる。当たり前の感情だと思うが。兄も一家四人で再び暮らすことを願っているが、ラスト結局願わなかった。何か吹っ切れたのか、旅行後のそれぞれ子どもたちの成長した顔が眩しい。分からなかったのは鹿児島に帰ってきた時、リュックの中を見て、3人一斉に走り出したのは犬が生き返ったのか??だとしたら、思いっきりファンタジーに振ってほしかった。エンドロールで橋本環奈を見て、初めて気付いた。
【”家族4人で、又一緒に暮らせるように・・” 九州新幹線全線開業の日に起こる”ある”奇跡を信じて、”子供たちの冒険”を描く・・。現代邦画を支える若き日の女優さんたち、多数出演作品でもある。】
ー両親(大塚寧々&オダギリジョー)の離婚のため、鹿児島と福岡で分かれて暮らすようになった、兄、こーちゃん(前田航基)と弟、龍之介(前田旺志郎)とその友人たちが、”奇跡の瞬間”を観るために、子供たちだけでの小旅行をする姿を軸に、様々な家族の姿を明るいタッチで是枝監督が描いた作品。-
・兄、こーちゃん(航一)と弟、龍之介は離れ離れになっても、携帯電話で日々、話をする。危なっかしい両親に比べ、二人は健気なまでに大人っぽく振舞う。”お父ちゃんを頼むで!””お母ちゃんを頼む!”
こーちゃん(航一)は桜島の近くに住んでいる事に対し”意味わからん…”と呟く日々。龍之介はミュージシャンの父を家事をして、健気に支える。
が、二人に悲壮感はない。
・ある日、九州新幹線全線開通日、鹿児島から福岡に向かう新幹線”つばめ”と”鹿児島に向かう新幹線”さくら”がすれ違う際に奇跡が起きるといううわさを聞き、二人は有る行動を計画する・・。
ー家族をテーマに映画を撮り続ける是枝監督作品の中では、明るいトーンの作品。子供たちの生き生きとした姿や、彼らから見た”大人”に対する言葉が面白い作品。ー
・龍之介の友人、恵美(内田伽羅:樹木希林さんの孫で、お父さんは‥あの人。今作後、名作「あん」で成長した姿を見せてくれる。)は、女優になりたいが、母恭子(夏川結衣)は“先輩”として、冷静に見ている。
ー龍之介の友人には、今を時めく橋本環奈さん(小学生かな)や平祐奈さんもいる。”羨ましいぞ!龍之介!”-
・更に、二人が通う学校には美しい先生が・・。
サチ先生(長澤まさみ:ショートカット)の生足を見るマセタ子供たち。
優しい保健の先生には、中村ゆり・・。
ー羨ましいぞ!君たち!(すいません・・)-
<そして、奇跡の瞬間、子供たちはそれぞれの夢を叫ぶが・・。子供たちの一夏の冒険を描いた作品でもある。>
<2012年 DVDにて鑑賞>
<2020年 別媒体にて再鑑賞>
軽羹
内容は、少年達だけで旅をする、所謂「スタンドバイミー」もの。
兄は、みんなの願いはきっと同じだ、と信じて旅に向かい、
弟は、ただ兄貴に会いたいが為に(寧ろそれすら無いかも)旅をする。
その旅に出る動機付けが不充分かな。
「奇跡が起こるんだって」
まあ子供の言いそうな台詞なんだが、
今時そんな夢見がちな子供の方が希少じゃないか?
無理に子供達を会わせなくても、
福岡と鹿児島で、それぞれがお互いを想っているだけの方が、
話の抑揚は出来た気がするが、
そうすると、是枝映画じゃ無い様な気もする。
この「奇跡の起こる」場所への旅以外(前菜、デザート)は結構好き。
でも主菜(メインテーマ)は変な味がした。
JRのプロパガンダと見られても仕方ないかも。
主演のまえだ兄弟は、良くもなく悪くもなく。
大人達は是枝ファミリー含め、抑えた演出。
今回の橋爪さんは好きな役だな。この人台詞少ない方が合ってる。
特筆すべきは、まえだ弟の友人の少女。
1人は本木雅弘の娘、つまり樹木希林の孫、内田伽羅。
複雑な役をちゃんと演じていて立派でした。
ただ、おばあちゃんは孫が居る所為か、いつもより張り切りすぎ。
もう1人は橋本環奈。確かにカワイイがさすがにまだ小学生。
この話で初めて鹿児島のお菓子、軽羹(カルカン)を知った。
「何かぼんやりした味やなぁ」(弟)
この映画自体が、軽羹の味の様な気がした。
食べたこと無いけど。
DVDでの観賞がオススメ
眩しい
交通費を捻出するため奮闘する子供たち。どこで新幹線がすれ違うかと...
交通費を捻出するため奮闘する子供たち。どこで新幹線がすれ違うかと研究したり、もちろん親には内緒なので、学校を早退するにはどうするかといった相談をする姿が微笑ましい。計画自体が頓挫するかと思えば、かなり決意が固い子供たち。朝一番の列車を見に行くのだから、泊まることまで考えなければならないのに、そこだけは行き当たりばったり。警官に質問されながらも、女優になりたい恵美が機転を効かせて、ある老夫婦(高橋長英、りりィ)の家に孫だと偽りたどり着いたのだ。このくだりがとてもいい!泊まった子どもたちはまるで修学旅行のようにはしゃぎまくりだったけど、老夫婦にとってはこれが奇跡だとも言えるくらいの嬉しい出来事だったのだ。高架ばかりの新幹線を見るためのトンネルの上まで送ってくれるほど優しかった。
奇跡なんて起こったら、ハリウッド映画と変わりない。是枝監督の真骨頂、台本なしの素の演技とベテラン俳優の確かな演技を絡み合わせ、時折見せるドキュメンタリー・タッチの演出によってリアル感を増しているのだ。すれ違う瞬間、願いを“せかい”に変えてしまった航一だったが、これもまた面白い。そして龍之介は父親が音楽で成功することを願ったおかげで、帰宅したとき幸せな表情を見れた。彼らが帰宅の途についたとき、子どもだった頃にした冒険のようなものを思い出すほどノスタルジックな作品。
お笑いコンビのまえだまえだもなかなかの演技だったけど、一番光ってたのは内田伽羅。本木雅弘と内田也哉子の娘なのだ。しかも実祖母の樹木希林も出演している。彼女の女優になるという夢がこの映画で叶ったんだな~
懐かしさや感慨も起こるが、無駄が多すぎる作品
映画は監督だけのものではないが、これが是枝さんの作品と言われれば、物足りなさも期待外れ感もあるし、“らしさ”もあった作品だったと思う。
生活感のようなリアリティを土台として、離婚や子供の心情にフォーカスを当てる意図は分かる気がする。観ていて安心感がある。
ストーリーを語る作品ではないし、流れや話の筋をどうこうは思わない。主張や結論なんか無くてもいい。
ただ、前田まえだの2人の演技なのか、"子供らしさ"のような嘘くささ、そこまで馬鹿で純真ではないのでは、という疑念が観ているあいだ、ずっと頭にあって気になった。くるり、の歌は好きなのでエンドロールはほんわかしたが。
序盤のほうでオダギリが言う台詞に「世の中には無駄なもんも必要やねん。全部に意味があってみ、息苦しいで。」というのがある。まさにこの映画に当てはまると思った。無駄が多い。多すぎる。
そのあとの弟の台詞をそのまま言いたくなる。「無駄だけじゃあかんやろ。」
チルアウト系是枝映画の良作
是枝映画の中でもマイナーな作品だと思いますが、結構な逸品ではないでしょうか。
本作は『海街Diary』寄りのチルアウト映画でした。仕事帰りに飛び込んで鑑賞したため、のんびりしたムードが心地よく、前半は爆睡してしまいました。かろうじて覚えているのは、兄と弟が見た夢が、まるで正反対だったことくらいです。
兄は家族4人で暮らすことを夢見てますが、弟はぜんぜん思っておらず、福岡で楽しく適応しているのがイカしてました。弟たくましいですね〜。
また、ミュージシャン崩れのダメ父親をオダジョーが演じていたのですが、だらしないイケメンを演じさせると右に出るものはいないですね。クズ野郎だが優しい男なので、弟もともに暮らすのが楽しいのかもしれませんね。しかし、子ども手当でテメーのギターを買おうとしているのはいただけないぜ。
後半の冒険パートも楽しかったです。熊本で見知らぬおじいちゃんおばあちゃんに世話になるという超ご都合展開がありますが、ご都合展開がむしろ逆に心地よかったです。まぁ、全編にわたりご都合感は否めず、しかしそれがクオリティを下げているわけではないのが良いです。
子どもたちの演技も楽しげで好感を持ちました。女優を目指す女の子が目立ってましたが、あれで小4は無理があるのでは。また、女優の子よりも絵が好きな女の子の方が美少女じゃないの、と思って観ていましたが、鑑賞後に橋本環奈だったと知り、おったまげました。
小ネタも効いているし、総合的にハッピーな良作でした。前半寝ないで観ることができたら、もっと良さを体験できたかもしれません。残念。
全58件中、1~20件目を表示