「共感の出来ない家族」SOMEWHERE キューブさんの映画レビュー(感想・評価)
共感の出来ない家族
まず、良いところを挙げよう。スター独特の高級感あふれる生活が良い。普段僕たちが見ない生活だから新鮮なのだ。久々に出会った親子の空気感も絶妙だ。さすがはコッポラ監督、といったところか。そして主演のドーフよりもその娘役のエル・ファニングの演技が良い。日本のどこぞのガキみたいな過剰な演技じゃない。いかにも普通のアメリカの子供で時折、映画を見ていることを忘れるぐらいだった。
では問題点を挙げよう。一つ目はセレブの生活を描いていることそのものが弱点にもなっている。はっきり言うと共感しにくいのだ。高級ホテルで毎日暮らすスター俳優に共感できるのはセレブだけだ。だからベネチア国際映画祭では金獅子賞だったのだろうと思われる。二つ目は「普通の生活」を描いていること。僕は我慢できたが、隣にいる糞野郎は途中から飽きたのか携帯をいじってた。親子だから新しい出会いとかではないし、離婚問題がどうのこうのとかいう盛り上がりさえ見せない。芸術映画を気取っているのか何なのか知らないがこれは致命的だ。三つ目の問題点は主役の浅さ。主演のドーフはけっして悪い演技ではなく、堅実に「スター」を演じていた。だけど彼が演じるジョニーの設定が最悪なのだ。満ち足りたはずの生活に空虚さを感じているらしいが、ただ何も考えてないように見える。静かなる悲しみが全く描き切れてないのだ。
ジョニーは最後にこう言う。「俺は空っぽなんだ。」そんなこと分かってるよ。
(11年4月8日)
コメントする