劇場公開日 2010年11月6日

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「マチェーテの強烈な個性と激しいアクションに魅了されました。」マチェーテ 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5マチェーテの強烈な個性と激しいアクションに魅了されました。

2010年12月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 タランティーノの作品は、えぐすぎるのと不条理に満ちていて、好きになれなかったのですが、本作はスカッとする活劇に徹していて、とても楽しめました。これはタランティーノというよりもロドリゲス監督ならではのエスプリが一杯詰まった作品と言えます。
 短いカットを重ねたスピード感のある銃撃戦や接近戦が持ち味のロドリゲス監督ではありますが、これをダニー・トレホにやらせてしまうところが凄いのです。

 これがリュック・ベッソンだったら、たとえメキシコが舞台でも、きっとイケメンのムキムキマンを登場させて、華麗な格闘シーンを描くところでしょう。それがロドリゲス監督にかかると、ゴリラのようなヒーローに似つかわしくない厳つい男が、ライフル乱射ももどかしく、手にしたナイフや芝刈り機で力任せにバッタバッタと襲いかかるものをなぎ倒していくのです。この凄まじい存在感に圧倒されました。けれども登場時には、全く冴えない移民の失業者でしか過ぎなかったのです。それが一転悪党に立ち向かっていくとき見せる力強さのギャップが、見ていて溜飲を下す痛快さを生んでいるものと思います。

 ナイフによる接近戦が主体なので、当然血しぶきが飛ぶえぐいアクションシーンが避けられないのは仕方がありませんが、それでもタランティーノ作品と比べれば序の口でしょう。そして、敵が臆病者とわかれば、むげに殺さないという元捜査員らしさを見せるところもご愛敬のひとつです。
 一番ショッキングなのは、敵に追い詰められたとき、襲ってきた敵のはらわたをえぐり、腸をロープ代わりに掴みだして、ビルの窓から飛び出すところでしょう。

 本作の面白さは、マチューテの強烈な個性だけではありません。マチューテが立ち向かう巨悪のスケールの大きさも半端ではありません。メキシコと国境を接するテキサスが舞台だからといって、単純にマチューテの敵となる相手は、麻薬王ではありませんでした。麻薬王と裏で繋がった保守派のマクローリン上院議員と彼が組織した移民狩りをしている自警団の面々だったのです。
 遺恨の始まりは、麻薬王トーレスにマチェーテの愛する者を殺されたことから。復讐に意気込んだマチューテは、捜査官を止めて、トーレスが麻薬流通を仕切るテキサスの国境地帯へと流れ着いたのでした。
 そこでは、マクローリンや自警団も一部の警察官までもが、麻薬流通で利益を上げていたのです。狡猾なマクローリン陣営は、親分の再選のために、マチェーテに狙撃を依頼するものの、間一髪でマクローリンの急所を外させて、テロにあったと選挙に利用されてしまいます。マチェーテは狙撃犯として追われる身に。
 警察に、麻薬組織に、最後には武装した自警団が立てこもる基地へ、相手がどんなに強くとも、人数が多くとも怯まず立ち向かっていくマチューテの折れない闘争心が本作の見所でしょう。

 かなり激しいアクション映画なのに、お色気とユーモアもたっぷりでした。特にマクローリンの腹心で、マチューテを狙撃犯に仕立てたブース邸に単身乗り込み、あれよという間に、ブースの妻と娘を『親子丼』でやってしまうシーンが可笑しかったです。要するに、仇のマチューテと知らずに抱かれてしまうなんて。親子揃ってバカなんです。

 さて、本作はB級作品ながら出演陣は豪華です。デ・ニーロやセガールまで出演しています。また、ジェシカ・アルバ、ミシェル・ロドリゲス、リンジー・ローハンの3大スターが、そろってセクシーなシーンに挑戦しているのもびっくりものですよ。(全身ヌードの濡れ場シーンあり。)
 特にセガールは、ありきたりな麻薬王のキャラクターでありながらな、セガールの主演映画ではまず見られない展開なんです。でも最後は、「ハラキリ」でしめるところは、日本通である彼らしい決着の仕方ですね。

 そしてラストの自警団隊、移民グループの全面戦争シーンは、見応えあるバトルシーンでした。
 続編のありそうな終わり方だったので、続きを多いに期待しています。

流山の小地蔵