「マイルドになった皮肉」人生万歳! CRAFT BOXさんの映画レビュー(感想・評価)
マイルドになった皮肉
いかにもウディ・アレンらしい作風とも言えるが、昔にくれべて、その捻くれたスノップな視点は幾分マイルドになっている。
後から知ったが、脚本そのものは70年代に作られているとのこと。なるほど、昔の作風を彷彿させるのはその成果と納得。もともとウディ・アレンは、ニューヨーカー以外は人間ではないと言わんばかりで、アメリカの中西南部の白人への蔑視の仕方は、いくらなんでもあまりにも酷い。本作にいたっては、自分以外は馬鹿ばかりという言い草。
そんなウディ・アレンが好きな人には、彼のスノップぶりが痛快かもしれないが、昔から、嫌いとは言い切れないのだが、どうにも好きになれない。近年は別にしても、少なくとも90年代までの彼は、ひたすら自らを肯定し続ける作品を作り続けていたと評価している。
そんな自分にも、本作はなかなか楽しめる味付けになっている。一つは、主人公がウディ・アレンではなく、ラリー・デヴィッドが演じているせいだろう。また、自称天才で、すべてがお見通しだと言ってる主人公本人もまた、予想も出来ない展開で恋をし、間抜けな姿をさらけ出して生きているという事が、ちゃんと提示されているのも、単に皮肉屋としての物言いになっていないのだろう。
もともとテンポが良いアレン作品ではあるが、1時間半という上映時間が程良く、気分よく見られた。
余談ながら、恵比寿ガーデンシネマで見る最後の作品となった。同劇場らしい作品でよかったと思う。
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