Ricky リッキーのレビュー・感想・評価
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天使ものにはハズレがない
科学薬品工場に勤めるカティ(ラミー)。そこへ新入りのパコ(ロペス)がやってくる。出会った日、お互いに惹かれるモノがあったのか、休憩時間にトイレの中で・・・(映像はない)・・・
男の子リッキーが生まれてからも家庭は順調だったが、リッキーの背中に痣があるのを見つけてから、虐待してるんじゃないかと夫パコを疑ったカティ。口論となり、パコは家を飛び出してしまった。
やがて、リッキーには翼が生えてきた。将来いじめられることを恐れ、医者にも診せず娘のリザ(マヤンス)とともに大切に育てようとする。ロトくじが当たり、買い物へとでかけたとき、リッキーは店内を飛び回る。おかげでリッキーの姿は多くの人の目に晒されることとなった・・・当初はマスコミの取材も入院も一切断り続けたカティだったが、やがてニュースを見たパコが戻ってきて、金のためにマスコミに取材させることを提案する。アパートの前でマスコミに取り囲まれた途端、カティは紐を話してしまい、リッキーはどこかへ飛んで行ってしまう・・・
行方不明になって何日も過ぎたが、依然リッキーの行方はわからない。嘆いたカティは一人で湖のほとりへ。入水自殺?しようとしていたのだが、そこへ空からリッキーがやってきた。捕まえてまた一緒に暮らせる・・・と考えたのも束の間、リッキーはまた空へ飛び立ってしまうのだ。ずぶぬれになりながら家へと戻ったカティ。そこには仲良くなっているパコとリザの姿。
きみは天使?などというキャッチコピーもようやくわかる。新しい家族の絆を取り戻すためにのみ生まれてきたんだね。ラストシーンは新たに子を宿したカティの姿。そしてスクーターで仲良く学校へと向かうパコとリザ。こうなってくると冒頭の「子どもたちを育てるのが辛い」と訴えていたカティのシーンは意味があったんだろうか?とも思えるが、パコが出て行った直後はそれほど辛かったのだと、女の弱さを表現していたんだな。
☆☆☆★★ ※ 鑑賞直後のメモから リッキーを主役として考えてしま...
☆☆☆★★
※ 鑑賞直後のメモから
リッキーを主役として考えてしまうと、終盤の展開に違和感を覚える事間違い無し。
お姉ちゃんから見たリッキーを想像するとすんなりするのでは?
2010年12月14日 Bunkamura ル・シネマ1
素晴らしかった!
超地味な人間ドラマだと思ってみていて、お母さんと娘がスクーター二人乗りで登校、出勤する場面などとても素敵でこういう映画いいなと思っていたら、とんでもない展開があって、それでも地に足のついたドラマですごくよかった。7歳の娘役の女の子がとても可愛くて、気持ちの揺らぎが伝わるように演じていて泣きそうだった。天使という存在に日本人が抱く感覚と違うのかもしれないのだが、ドラマとして大変面白かった。傑作だ!
リアルな羽の生え方。
名画座にて。
F・オゾン監督作品はほとんどここで観ていることが多い^^;
だってほぼ毎作かけてくれるから(爆)ファンなのだろうか。
予告で観た赤ちゃんの背中に羽が生えるというファンタジー、
もっとほのぼのしたコメディかと思いきや、けっこう現実的。
やはりオゾンって普通にハナシを持っていかない監督だ。。
現実的というのは、その、赤ちゃん抜きで家族を顕した部分。
夫不在で(出ていったらしい)7歳の娘と暮らす工場勤めのカティ。
ある日スペイン人のパコが入社し、またたく間に関係を持つ^^;
長らく?夫のいない生活だったカティは突然に色気づき(汗)
その変調を目の当たりにする娘のリザ。お母さんを盗られる…!
こんな時の子供の視線を描くのがとっても巧い監督^^;
やがてリザの苦悩など知らず子供を身ごもり産んでしまうカティ。
まぁ…生まれたら生まれたで可愛がるのだ、おねいちゃんは。
あれほど嫌だったパコに対しても心を拓き、自分と赤ちゃんの
パパとして認めはじめたその矢先…。思わぬ事実が!!
…ハイ、ここからもう、ファンタジーなんで^^;
赤ちゃんの背中にアザができて、コブになって、羽が生えます。
アザの時点で母親は激怒、パコの仕業だと勝手に決めつける…。
右往左往させられるのはやはりまた娘のリザで^^;
あーなんだか母親の方が感情露わで子供っぽい、こんな時、
娘はさすがに冷静だ…と、何だかおかしなところで感無量な私。
やがてその天使?リッキーは、マスコミの話題をさらい始めるが…
羽が生えなかったとしても、子育ては大変!!
その大変さと面白さを巧く描いていると思うのだが、この子を
天使にしたのは、何か意味があるんだろうなぁ~と思いながら、
しばし観ていって…でも最後まで分かんないんだよなぁ・・・^^;
夫婦と家族の再生。はまずまず描けているし、お母さんカティの
やたら裸にこだわる姿勢(多いよね^^;)にはオゾンの趣味が??
顕れているのかもしれず、様々な憶測と感性が交差するお話。
不思議な感覚とややブラックな笑いに包まれながら、
娘の可愛らしさ&美しさ、羽が生えるときの異様なリアル感に
何ともいえない心持ちになる作品。不思議だけど面白い。
(天使ってやっぱり飛びたいんだね?しかもけっこう高速!?)
ダメママのリアルな日常
背中に翼を持つ赤ちゃんは「天使」か「モンスター」か?オゾン監督が甘いファンタジーを撮るはずがない。これは特異な赤ん坊を授かったことによって、変化していく家族の「リアルな日常生活」を描いた人間ドラマだ。
何よりヒロインである母親の弱さや愚かさが際立つ。彼女の刹那的な行動が、長女の心を深く傷つけている。シングルマザーとして工場で働く彼女は、「仕事に行きたくない」とごねたり、娘の迎えを忘れたりと無責任で子供っぽい。その上、その日に知り合った男と仕事中にトイレでSEXしてしまう始末だ。これらの行動は、貧しい日々の生活からの疲れや逃避から来る行動と温かい目で見てやれないこともないが、幼い娘目線で見るととても腹立たしい。朝起きると下着姿の母が男と朝食をとっているのを目の当たりにする娘の気持ちは・・・。「今日からこの人と暮らすから(今日からこの人があなたのパパよ)。」と言われて素直に納得する娘がいるだろうか?クローズアップされてはいないが、母親よりしっかりしている娘の奮闘振りが涙ぐましい。
さて、問題の翼を持つ赤ん坊リッキー(この名前も娘が名づけた)の存在は、見方によってずいぶんと違ってくる。バラバラになった家族を再生するために授けられた天使というファンタジーとして見るか、チキンの手羽先のような形態の生々しい翼の描写がホラーと見るか、それとも「障害」を持った子供を受け入れる家族の社会派ドラマと見るか。どの要素も少しずつ入っているのだろう。茶色い翼(チキンの手羽先から成長するとニワトリではなくまるで鷹・・・?)をバタバタさせて空を飛び回るリッキーはかわいらしいが、「モンスター」と呼ばれマスコミに追いかけまわされ、私利私欲を呼ぶやっかいな存在となる。これまた母親のうっかりから大空に姿を消したリッキーを、本当の意味で心配するのはやっぱり娘だけだ。リッキーが消えてしまってからが、オゾン監督が描きたかった本当のストーリーだと思う。娘と義理の父が絆を強めていく中で、母親は罪悪感でウジウジしている。そしてまたまた考えなしに自殺未遂を起こす。しかしここで奇跡的に目の前に現れるリッキーによって、彼女は母親としての責任感をようやく持つことができるのだ。こう考えるとやはりリッキーは天使だったのだろうか?
愛情ある絆を掴み取った家族、再び妊娠した母の幸せそうな微笑で物語は終わるが、今度の赤ちゃんにシッポとか生えてこないかと心配してしまうのは私だけではないはずだ・・・(汗)。
後味として静かに感動が全身を浸します。
やはり、オゾン監督は油断できない。常識的な作品の中に、ゾクッとさせられる女性のエロティシズムが随所に散りばめられている。女性の心情を冴えた映像で表現する事が出来る監督だと実感する。物語は、自分が生んだ赤ん坊の背中から羽が生えてくると云うシュールさ、しかし、行き過ぎた演出が無い為か、意外とリアリティがある様に感じる。更に、物語の設定が工場で働くシングルマザーのカティとスペインからの出稼ぎのパコとが恋に落ちると云う設定にも現実感がある。ばらばらだった家族が、それぞれの居場所を見付け調和していく様子を、説教的ではなく役者の表情や信頼感で表現していく。特にカティの表情が変化していく様に説得力があり、観客は納得させられる。これは、オゾン監督の成せる技だと思う。この監督は女性の心情を最もよく理解している。何よりも、リッキーを通して成長するカティの母性愛が、切なくも後味として静かに感動が全身を浸します。いつも一緒にいて育てるのは大変だと思うけど、ある意味、赤ん坊は翼の生えた天使だ。この映画は、ママになる人、パパになる人に是非!観てもらいたい。私は、もう直ぐ子供が生まれる弟夫婦にチケットをプレゼントしました。
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