ばかもののレビュー・感想・評価
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【”一組の男女の流転の人生を描いた作品。”今作は、中盤は鑑賞していて心理的に厳しいが、成宮寛貴さんと、内田有紀さんの凄みある演技に観られた作品である。】
■19歳の甘い考えを持ちながら日々意味のない生き方をする薄っぺらい男、秀成(成宮寛貴)は強気な年上女・額子(内田有紀)と初体験をする。
美人で率直にものを言う額子に、秀成はのめりこんでいく。
しかしある日突然、額子は一方的にヒデを捨て別の男と一緒になる。
そして10年後、2人は再会する…。
◆感想
・今作品は、酒、宗教、セックスに溺れて行く弱き人々の姿を前半では描いていく。
・その結果、秀成はアルコール依存症になり、宗教に溺れた女は命を失い、男を誘惑した女、額子は戒めの如く、仕事中の事故により左腕を失う。
ー 観ていて、非常にキツイシーンが続く。
だが、秀成の家族や大学以来の友人加藤(池内博之)は、必死に彼を真人間にしようとする。
そして、秀成は何とか立ち直り、額子の母が営む店に行き、額子に会う決意をする。
10年振りにあった額子は、白髪で左腕が無い状態で一人暮らしをしている。
口の悪さは相変わらずだが、山裾の額子が住む家には清潔感がある。-
・秀成は、心機一転中華屋で真面目に働き始めるが、どうしても額子の事が忘れられず、惜しまれながら店を辞める。
■今作で、白眉のシーンは額子が、左腕を無くしたがために洗えない右手を秀成に洗って貰うシーンであろう。額子を演じた内田有紀さんの女優根性が伺えるシーンであり、額子と秀成が心を再び通わせる美しきシーンだと思う。
そして、今作での内田有紀さんと、成宮寛貴さんの演技は特筆に値すると思う。
<非常にキツイシーンが中盤は続くが、ラスト、額子が笑顔を浮かべながら清流の上に枝を伸ばす木に登り、額子が落ちても大丈夫なように川に入って、笑顔でその姿を見る秀成の爽やかな表情が印象的な作品である。
きっと、二人はあの清潔感ある小さな家で、人生の再出発をするのだろうな、と思った作品でもある。>
違和感ばかりで集中できず。
みなさん高評価でビックリ。
原作未読で鑑賞したのでアル中になるのが額子への未練とは感じられなかった。
ただSEXしてばかりの額子との関係が捨てられた形で終わるも何とか就職し、彼女が出来たあたりからアルコールが手放せなくなる。
世話好きで怒れない彼女の翔子と
同じく甘やかしてばかりで怒れない両親のほうに
アル中の原因を感じてしまった。
煩いくらいのBGMのバイオリンの音楽は邪魔だし
生ゴミ臭い大須は綺麗に髭が剃られ
腕のない額子の右手には綺麗にマニキュアが塗られ
センスの悪い紫のタイツに白髪頭。でも顔は疲れのない
美貌で登場って
違和感ばかり感じてしまった。
前半勢いすごい。逆ナンして出会って即合体のエロ展開。大学生男子は無...
前半勢いすごい。逆ナンして出会って即合体のエロ展開。大学生男子は無限にできるのでやりまくる。中盤くらいまでは溺れることの愚かさを描いた話。女に、金に、宗教に、酒に溺れ破滅の道を辿る。
後半は連作もののTVドラマ風な感じ。
しんみり。救いのあるラストで良かった。
競馬場近くのおでん屋の娘・額子(内田)。バイト先のスーパーがたま...
競馬場近くのおでん屋の娘・額子(内田)。バイト先のスーパーがたまたま一緒だったことで、強引に映画館に誘われ、その後彼女のアパートへ。『ガメラ3』・・・って、なんつうギャグだ(笑)。観たのは「セックスはやめられない」だったのに・・・
2人はセックスだけの関係を続け、19歳のヒデは額子にのめり込んでゆく。ある日、面白いことしようと言われ、公園の木に縛りつけられたヒデ。額子は動けないヒデにフェラをするが、そのまま「結婚する」と言い置き去ってゆく。
ショックは後を引き、大学も留年。友人・加藤(池内博之)も東京で就職し、周りからは付き合ってると思われていた山根ユキ(中村ゆり)も中退しデイトレーダーをやっていた。ユキは怪しげな宗教にのめり込み、教祖に多くの男性と交われと言われたのでヒデと交わろうとするが、ヒデはそんな関係じゃないだろう!と色仕掛けも断ってしまう。
加藤の結婚式で知り合った年上の理科教師・翔子(白石)と付き合うことになったヒデ。やがて徐々にアルコールの量が増え、絡むだけじゃなく乱暴も働くように・・・ついにアルコール依存症となり、事故を起こして、勤めていたヤマダ電機もクビになった。断酒のため入院し、翔子とも別れ、中華料理屋で働くことになったヒデだったが、額子が飼っていた犬“ホシノ”と再会し、おでん屋へと向かう。何度も通ううちに額子のことを母である女将(小手川祐子)から聞くことに・・・
職場で事故に遭い左腕を失った額子は離婚し、田舎で隠遁生活をしていたのだ。会いにいくと、髪の毛は真っ白。実は、ヒデがアル中になったのは自分のせいだとショックを受けたためだったらしい。何度も通うとかつての情が再燃し・・・
「右腕をごしごし洗ってほしい」「わきの毛を剃ってほしい」という要求。片腕となった額子をこの後も愛していけるだろうかと考える姿。中華料理屋では娘との縁談もあったが、それをあっさり断り、彼女の元へ走る。純愛?を貫きとおすといったストーリーは共感できる。せめて乳見せがあるか、わき見せがあればもう1点献上。俺なら白石美帆を選ぶがな・・・
☆☆☆★★ ※鑑賞直後のメモから 新しく腐れ縁映画の佳作。 似た者...
☆☆☆★★
※鑑賞直後のメモから
新しく腐れ縁映画の佳作。
似た者同士の2人。H出来る女だった《額子》とは別れに…。
Hする関係にならなかった彼女ほ《神》へ…。
Hは出来るけれど、似た者同士では無かった女とは上手く行かない事で《酒》へ…。
内田有紀に制約が有るために裸の濡れ場が撮れないのは勿体無かった。
(彼女が女優として一代飛躍出来る最大のチャンスだった筈なのだが…。)
別に裸が見たい訳では無く、(まあ、出来れば!)終盤のお風呂場の場面は裸を映せない事で。本来なら感動的な場面になった筈なのだが、違和感の有るカメラアングルになってしまっているのが悔やまれる。
それでもなかなかの良作かと思う?
2010年12月20日 シネマート新宿/シアター1
愛情表現の仕方が素直でない二人、その愛が実る瞬間が最高に素晴らしい
主演は内田有紀さんと、成宮寛貴さん。
内田さんは、やはり、いつものような気丈な性格な役柄設定です。
成宮さんは、10年という年月をかけて、内田さんのことを愛しつつけるという役柄を設定したため、その年代(カットシーン)にはかなり苦労されているように思えました。
この作品は確か、女性の芥川賞を受賞した方だと記憶していますが、その完成度の高さを見事に映像に再現出来ていると思います。
不器用な二人が真の愛を掴み取るまでに掛かる十年というとてもつもない時間、そして、その間、それぞれに起きた色々な大きな問題。それらを乗り越え、感動のラストシーンになります。
恋愛作品に興味が無い方にも是非お勧めしたいですね。
考えさせられる
アルコール依存症。アルコール依存症を若者のパターンで描いた作品は僕のなかで初めてだったのですごく衝撃を受けました。なんか、自分もそうなっちゃうんじゃないかって、怖かった。内田有紀さん本当に可愛いし美しい。最初はただのラブストーリーかとおもったけどこんな作品だったなんて!一度見て損はない作品です。
男女の思い
成宮寛貴くんが大好きで見たのですが、キャスト選択が素晴らしい。一人ひとり合った役柄で気持ちや言葉が凄く伝わってきて 作品にのめり込めました。
内田有紀もサバサバして綺麗な身体♪男女の行為では細かな足先やキスの仕方などうまくキレイに映されてて、とても良かった。
最初はHばかりの関係・・・だけどどんどん会う内に身体だけじゃないものに惹かれていき 本気になっていくのが怖くなり 別れを選択。
納得いかない別れ スッキリしない気持ちのまま未練を引きずったまま アルコール依存症になっていく。
私がこないだ付き合ってた彼を思い出しながら見て・・・
依存するのは 本気の愛がうまく相手に伝わらない、束縛したい、心が弱い 自信のなさなど が依存したり・・・
結局、酒癖の悪さで別れて連絡とってないけど、ちょっと気になっちゃいました。元気してるかな?
話はそれましたが、久しぶりに2人が再会し
入浴シーンと殴ったシーン高崎市の滝や川、印象的でした。
男女の思い この作品は分かりやすくうまく表現され感動しました。
言葉よりも、薬よりも
「デスノート」などの作品で知られる金子修介監督が、成宮寛貴、内田有紀を主演に迎えて描く、ラブストーリー。
最悪の別れを経験した男と女。それぞれにその悲しみから抜け出せないまま葛藤、悩み、絶望の闇へと突き進んでいく。本作は、観客に高度な理解力であったり、高く飛翔する想像力を求める作品ではない。明解な言葉を持って、簡潔なキーワードと描写を持って、一組の男女が迷い込む恋愛の迷宮、その厄介さと美しさを突きつける性格の物語である。
もっと難解な展開であったり、時間軸の操作といった映画ならではの創意工夫があっても、この作品の持ち味であったり魅力は色褪せないだろう。ならば、何故ここまでストレートに物語を進めていくのか。
その答えもまた、極めて明解である。この物語は、アルコール中毒に苦しむ男性の痛みや、片腕を失った女性の喪失をテーマに掲げていない。ただ、一つ。そのたった一つの「結論」を描くために壮大に編み込まれた寓話だからだ。その「結論」とは?
「本当に、人を前に進ませるものは、愛する人、大切な人の一発の拳だ」
成宮扮するヒデが、とある出来事に心を痛め禁じてきた酒に手を出そうとする一幕がある。そこで内田扮する額子は、右手の拳で思い切りヒデを殴りつける。物語中で、拳をもって他人を制する場面が現れるのはここだけである。葛藤、痛み、やるせなさ・・・。全てを受け止めようともがく男の顔が初めて、ここで頬を崩して笑う。「怖い女だよ、お前は」。曇りを称えた映像がここから、鮮やかな光を持って動き出す。
ここに、作り手が本当に描きたかった「結論」が結実している。そのために用意された舞台を違和感無く創造するために奮闘した成宮、内田の影を抱えた佇まいに対して、観客は高い賞賛を贈るべきであるし、目を背けることなく彼等が私達に提示した絶望に向き合う覚悟が必要だ。
決して、温かいだけの映画ではない。でも、苦しいだけの自虐劇場でもない。人が、本当に生きていくために、前に一歩踏み出すために必要なものを端的に、軽やかに導き差し出してくれる。穏やかな希望に満ちた世界である。
成宮さんほど
成宮さんみたいにかっこいいわけじゃないのですが…。
恥ずかしい話を書きます。
僕もアルコール依存症でした。
もう飲まなくなって3年弱になりますが、飲んでた頃を思い出すといまだに恥ずかしいやら情けないやら…、穴があったら入って一生出てきたくないぐらい恥ずかしい思い出ばかりが残るだけ、の何の価値もない飲酒生活を過ごしてきました。
僕の知り合いの一人は、僕と同じ酒におぼれた人生からつまらない傷害事件を起こしてしまい、依存症も相まってうつ病を発症、精神病院に強制入院させられた挙句に強制的に断酒を強いられたことにより、一層精神に障害を来してしまったか、入院後半年を経て、首つり自殺をしてしまいました。
僕がアルコール依存症に至ったきっかけは、成宮さん演じるヒデ同様に失恋でした。酒を飲んでいれば、彼女のことが忘れられる、楽しい気分がもたらされ失恋の嫌な記憶が失われていく、…やがて目的は行動へと昇華し逆転し、記憶が飛ぶほど飲むことが常態となっていったのです。
酒を飲んでは暴力を振るう父への潜在的な恐れ、アルコール依存症だった父のようにはならないぞという強い気持ちが逆にアダとなり強迫観念をもたらしたことも、酒への依存を一層強めた要因だと思います。酒に飲まれず父を凌駕するうわばみになってやるぞと意気込んではみたものの、やはり同じ血を分けたもの、父と同じアリ地獄に陥ってしまったわけです。
いずれもいいわけは全くきくものでないことは重々承知しています。
すべて自分の弱さに起因するものであることはいうまでもありません。
これまでの人生を心から反省しているものです。
知り合いの死、さらに酒井法子さんの覚せい剤依存の実態を目の当たりにしたことも大きなきっかけになり、自分の弱さに気が付いた3年前、酒から自然と足が遠のきました。
飲酒運転を規制する機運が社会全体にいや増しに高まった頃に、深夜に運転せざるを得なかった状況に置かれてしまったことも、酒から足を洗うことができた理由の一つです。これも恋愛が原因です。
僕は女で酒におぼれ人生を棒にふり、女で酒から卒業し残りの人生を「恥をさらしながら」細々と生きていくことになったのです。
成宮さん演じるヒデのような愛され方をして、そして心より彼女を愛し、酒から身を引く、なんてハッピーエンドってわけにはいかないのですが…。
内田有紀さん、好演でした。
ずっとずっと一緒にいたかっただろうに、別れなければよかったのに、ヒデに「恥をさらさせて」嫌な思いをさせてまでして、強引に自ら身を引いて人の妻になっていく。年の違い、自分との釣り合いの落差、…人間って考えなくてもいいことを考えてしまって、すれ違っていく、ものですものね。
この辺りをしつこからず、わかりやすく、演じていて、とてもすがすがしかったと思います。
後半の彼女は近寄りがたい、妖艶さまで漂わせ、これがあの元アイドルか、と思わせるほどの存在感、「悪人」での深津絵里さんと双璧でしょう。
すばらしかったです。
さまざまな葛藤を経て…、
でもやっぱり納まりのいいもとの鞘に収まっていく。
自分の人生と引き比べ、とてもとても考えさせられた映画でした。
もちろん映画としての完成度もとても高く、今年の一本といっても過言ではないでしょう。
書を捨て吹割の滝に行こう!
映画のタイトルを博多弁でいうと「このばかちんが」となる。
映画の序盤、だらだら進行していてあまり良い感じはしなかったが
アル中(うっ、差別用語か?)になってからの成宮寛貴の演技は鬼気迫るものがあり良かった。それにしても最近アルコールモノが多いなあ。「The Hangover」「 酔いがさめたら、うちに帰ろう。」しかり。
どうなることかと思いきや、急転結末。
最期は片品村のすばらしい景色に救われた。
後半の後半、ほのぼのしたしあわせを描ききる為にも前半のだらだらは残念。
ちなみに、「このばかちんが」っていうのは愛情が入っているのです。。。
人生を切り取って、スクリーンに映したような。
映画史上には残る大作ではないかもしれないけれど、
これを観られた今日はいい日だったな、と思える映画だ。
決して壮大な感激な語り口調の物語ではなく、
ひとりの人が出くわす出来事や感情を丁寧に描いている。
たとえるなら、スポットライトで照らして見せるのじゃなく、
陰を映すことで物事の形をハッキリ浮かび上がらせるような丁寧さ。
映像的にも、昼間の暗い廊下とか、喫茶店の窓際の陰影とか、
顔の表情はよく見えないはずなのに思いが伝わってくる、
というシーンが多かった。
それを踏まえた上でのラストシーンも美しい。
成長とか挫折とか恋愛とか友情とか愛情とか、安易に使われる言葉だけれど、そして使ってしまいそうになるけれど、そういうカテゴリーで語れるもんばっかりがこの世にあるんだろうか本当だろうか? そんなふうに安易には名付けられないものを、原作者の絲山さんは生き生きと描く作家だ。
名付けの代わりに物語があるんだなー、
ということを納得させてくれる。
原作のディティールを、映画向けに変更している部分もあり
それが自然に仕上がっているのも心地よかった。
内田有紀のハダカは麗しかったし、
成宮寛貴のアル中っぷりは迫力があった。
良い俳優さんばかりの邦画は見応えがある。
なんだかな〜
見ていて思った事。
お酒は怖い((゚Д゚ll))(笑)
二人が一緒になるまでかなりのものを犠牲にしたが本当に良かったのか疑問に思った。
理由は結婚するとの理由で振っておいて離婚したからとヨリを戻した点。
そして散々お世話になった中華料理店の店長を裏切った点。娘さんと結婚しなくても働き続ける選択肢もあったはず。正直に好きな人が居ると告げた結果での退職なら仕方ないが、あの場面を見ているとそうでは無い。恩をアダで返すに等しい。
二人が良ければそれでいいのだけど、人間一人で生きている訳ではないので…
世の中綺麗事だけではないけど、やはり越えてはいけない一線がある。
はちゃめちゃ過ぎて共感できなかった(>_<)
「ばかもの」とは、愚か者ではなく、親愛の情を示す言葉だったのですね。
予告編を見ただけで、こんな愚か者の情けない姿を金を払ってまで見る価値があるのかと日記でコメントしておりました。けれども、映画って実際に見てみないと分からないものですね。
アルコール中毒なって、落ちていく主人公の大学生秀成と、彼を弄んだあげく、捨ててしまった年上の娘額子との関係は、単なる愚か者同士でなくて、お互いを思いやる気持ちを上手く表現できない、不器用なもの同志だったのです。
タイトルの『ばかもの』とは、ラストで額子が親愛の情を込めて、秀成に告げる台詞。いろいろあったふたりの関係が、過去をジョークで語れるほどに、一つに繋がった気持ちが、『ばかもの』に込められていました。映画を見なければ、ずっと本作の『ばかもの』の意味を「愚か者」と思い込んでいたことでしょう。
最後には、ハッピーエンドでこころ温まる終わり方になっている展開として、同じアルコール中毒を扱った『毎日かあさん』よりは、希望が持てることと、心理描写の深さで、見応えがありました。
内田有紀の清純なイメージと違って、額子は小悪魔的な女。セックスに開放的で、知り合ったばかりの秀成をいきなりポルノ映画に誘い、その足で自宅に招いて、童貞を奪ってしまうのです。
若い秀成は、すっかり額子に溺れしまい、毎日がやってやって、やりまくるというセックス三昧の日々を送るのでした。ただベットシーンの描き方は、腰が引けていて、情事を重ねているところは、カットされてしまうところが目立ちました。だからといって、別にポルノ映画まがいにする必要はないと思います。でも、お互いがセックスを通じてしか、こころのつながりを確認する術がなかったふたり。それだけに、体を重ね合う描写に、狂おしいほど相手を求める激しさが映像としては必要ではないでしょうか。
但し、高崎観音(ここの住職とは親しいです。)の真下で、野外セックスするのは、あまりに
額子が秀成を捨てるシーンは、強烈でした。秀成を面白い遊びをしようと誘い、大木にに鎖で巻き付けて、動けなくした上で、ズボンを下ろして、フェラチオをしようとするのです。しかし、額子はそれを途中で止めて、長いキスをすると、唐突に結婚を決めたことを告げます。「遊び以外のなんだっていうんだよ」と言い放ち、下半身を露出したままの秀成をそのまま放置して去っていったのでした。
茫然自失の秀成。
額子によって酒の味を覚えてしまった秀成は、次第に酒浸りとなり、荒んでいきます。大学も卒業して就職したものの、酒に蝕まれた秀成は会社で疎まれ、さらに酒に手を出す悪循環。せっかく友人の紹介で出会った、額子とは違う清楚で真面目な性格の祥子との恋も、酒癖の悪さから、一方的に去られてしまいます。
仕事を休んで部屋で酒を飲み続ける秀成。姉の結婚式では泥酔して暴れ、会社も辞める羽目に。そして、遂には飲酒運転で交通事故を起こしてしまうのでした。
交通事故を契機に秀成はアルコール依存症の治療を受け、苦しみながらも快復していきます。中華料理屋でバイトを始め、新しい一歩も踏み出していきました。
そんなある晩、秀成は額子の愛犬ホシノの導きで、額子の母親と再会します。そこで、そして秀成と別れてから、事故に遭い障害者となってしまった惨い運命を知るのです。
ホシノと秀成の関係は、なかなかユーモラスで、面白かったです。
気づけば、額子と出会ってから10年もの年月が流れていました。気持ちを抑えられない秀成は、額子が住んでいる街へ向かいます。待ち合わせたバス停で佇む額子は、変わり果てた姿だったのです。まるで老婆の如く、髪が白くなり、すっかり老け込んだ姿に変わり果ててしまった額子が変わった訳が、本作の大きなポイントとなります。
左腕を失った額子のために、秀成は風呂で右腕を洗ってやったり、昔のようにいい関係をふたりはとり戻していきます。しかし、帰ろうとする秀成を引き留めた、額子はいつセックスをすればいいのだと、昔のようにあからさまに秀成に迫ります。
しかし、以前強烈な捨てられ方をされた秀成は、また騙されるのが怖くて、額子を拒みます。ここで言い放つ額子の台詞がキョーレツでした。「セックス以外に、どうやって私の気持ちを伝えるのよ」と。
額子は、決して小悪魔な女ではなかったのです。自分の気持ちを素直に伝えるのが苦手な、シャイな小心者だったのです。そして、秀成を本気で愛していました。だから、自分を忘れさせるために、別な結婚相手を決め、別れ際にむごい仕打ちを放ったのです。それだけではありません。額子の母親から、秀成は、額子が白髪に変身した理由を聞かされて嗚咽します。小地蔵も、思わず涙してしまいました。
別れた秀成がアルコール中毒になり、荒んだ生活を送っていると母親から聞かされた額子は、自分の責任を痛感するあまりに、ショックで白髪になってしまったそうなのです。以来ずっと、秀成の行く末を案じていたというのが、意外でした。
本当に人の気持ちって外見からは察することは難しいものですね。本作の場合も、愛する人から害されたという思いが、秀成を苦しめ追い詰めていったわけですが、真実は違ったところにありました。愛憎は、一筋の縄のごとしです。
そんな秀成にバイト先の中華料理店の店主が、娘を貰ってあとを継いでくれないかと持ちかけられます。秀成は、それが引っかかり、額子の元にあまり通わなくなってしまいます。秀成の家族も、額子との交際は反対でした。
さて、ふたりの関係がどうなっていくのかは、劇場でご確認ください。
汚れ役としては、内田有紀は充分に役に体当たりして新境地を開拓していると思います。でもやっぱり凄いのは、アル中になったときの成宮寛貴の演技。童顔の秀成が人が変わったように、きつい顔つきに変わるところは演技の上手さを感じさせました。あと年上の女性に対して甘え上手なところも。あんな甘い顔つきで、じゃれてきたら、きっと母性本能をくすぐられるのでしょうね。
中盤のアル中のシーンが長めで、後半の額子の本当の気持ちがネタバレしていくところが駆け足になってしまった残念ですが、金子監督の巧みな心理描写が堪能できる作品としてお勧めします。また、高崎が舞台になっていて、随所に高崎のシーンが登場します。群馬県民や出身者なら、必見でしょう。
秀成は、母校の高崎文化大学をバカ大学と自嘲しますが、ロケに使われた高崎経済大学は、結構レベルが高い大学だと思います。
大人が楽しめるラブストーリー
内田有紀が体を張って大胆なベッドシーンにチャレンジしているものの、いまいち話題になっていない本作は、公開規模は小さいものの、大人が楽しめる良作だった。
ひどい失恋を経て酒に溺れ、満たされない気持ちを埋めようとするものの、アルコール依存症になってしまう成宮寛貴の熱演も光るが、10年の歳月を経て再び出会う男女の微妙な距離が埋まって行く様を描く過程は、静かな感動に満ちあふれている。内田有紀が女優として1ランクも2ランクも上のステージに上がった作品だと重います。ありきたり&お決まりのラブストーリーに飽き飽きしている方にはオススメです。
全22件中、1~20件目を表示