ばかもの : インタビュー
内田有紀、3年ぶり映画主演で“不器用な愛”に体当たり
アルコール依存症と事故による片腕の喪失──気ままな大学生ヒデと強気な年上の女・額子、かつての恋人同士がそれぞれの傷を乗り越え、再びめぐり会うまでの10年にわたる恋の軌跡を描いた「ばかもの」。芥川賞作家・絲山秋子の同名小説を原作に、「デスノート」の金子修介監督がメガホンをとった同作で、ヒロイン額子を熱演した内田有紀に話を聞いた。(取材・文:編集部)
内田の映画主演とは、2007年の「クワイエットルームにようこそ」以来3年ぶりとなったが、気負いはなかったように笑う。「主演ということには比重はないです。これはやっぱり成宮(寛貴)くんが演じるヒデという男の子の人生の一部分にかかわっていくという女性でしたから、(私と成宮くんで)一緒に共同作業していった感じですね」
内田が演じる額子は、成宮演じるヒデよりも8歳年上で初体験の相手。強気でぶっきらぼうながら、内面は繊細で情に厚いという複雑なキャラクター。序盤はヒデとの情熱的なベッドシーンを見せつつ、終盤では、片腕を失い、うちに悲しみをたたえた姿で登場するという難役でもある。彼女は、額子にひかれた理由をこう語る。
「額子を“演じる”というよりも、単純に“チャレンジ”してみたかったんですね。生きるのがヘタくそな女性を少しでもチャーミングに見せたい、なんとか表現したいと思ったんです。それは見てくださっているお客さんにかわいいと思ってもらうことじゃなくて、こんなに不器用なのに、でもその姿が愛おしく見える……それって、ヒデが恋する女(の姿)なんですよね。男性が好きになる女の子ってなんとなく分かるんですね。“こうすれば好きになるんだろうな”って。でも、そうできない人ほどすごくかわいいと思うことがあって、本当はもっと素直になれるのにどうしてできないんだろう? と知りたくなったり。不思議な魅力のある女の人だったんですね、額子は」
共演の成宮は、同作を「屈折していて回りくどくて、でも愛しい」と語っている。確かに、愛し合いながらも一度は離れ、そしておちきった果てにふたりは再会を果たすのだから、一筋縄ではいかない。
「自分のなかでは、幅広い方々に見ていただきたいですが、ぜひ若い人たちにも見てほしいなと思っています。それは金子監督の温度や思いによるものなんですけど。これから恋愛する人は、こんな恋愛もあるのかって見ればいいでしょうし、今までいろんな恋愛をしてきた人なら、“ああこんな思いをしたなあ”って見方もいいと思うんです。いわゆる分かりやすいラブストーリーではなくて、いろんな人間が生きていくうちにどういう思いをするのか? ということでもあるんですよね。“不器用な愛”なんです。」
人を愛することと生きることは、どれだけ愚かで悲しくて、そして愛おしいのか。その意味を描く「ばかもの」は、12月18日から全国で公開。