「親も子供も大丈夫。」キッズ・オールライト ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
親も子供も大丈夫。
小作品ながらアカデミー賞を賑わせたA・ベニングのその演技が観たくて、
まぁ~この上映館の少なさでは、名画座待ちになるんだろうと思った矢先、
地元のシネコンで上映が決定!!やった!!大好きだよ、ムーヴィックスv
というわけで期待度は大◎
そして観終えた結果は…同じく◎だった。素晴らしかった、A・ベニング!
まずレズビアンのカップルに子供が二人…っていう、すごい設定だ^^;
双方が精子提供を受け出産、二人は子供の母親であり両親でもある(複雑)
で、今までは何事もなく仲良く過ごしてきた…長女は大学合格、長男は今や
思春期真っ只中、反抗期の真っ最中でもある。それなりに親は頭を悩ます…。
これ、どこの家庭にもある光景だ^^;日本でもこういう家庭が多いだろうし。
もちろん父親はノーマルが大多数でしょうが、でも今作のA・ベニングはその
亭主関白を地でいく頑固者、支配的で、教育熱心で、威張りくさっている^^;
役回り的には妻になる?J・ムーア。仕事などするなという夫?の言いつけを
守り専業主婦、でも何か自分にも出来るんじゃないかしらと仕事を開拓中…。
あ~もうどこの家庭でもある光景。すごく普通ですごく良く分かる。
口うるさい親に嫌気がさす子供達の年代も、そんな彼らが気になって気になって
仕方ない親達の心積もりも、すっごく分かるんだな…この歳になるとホントに…。
で。
そんな最中、とある人間が彼らに入り込んでくる。
子供達が親に内緒で精子提供者の男性(つまり生物学上の父親)を探し当て、
逢って仲良くなり、ついには家に招くことになってしまうのである。
これ日本だったら絶対ムリなんじゃないの??種元そんな簡単に明かすのか?
どう考えたって~まずいだろ、そりゃ。波風立つに決まってるじゃないの。
そう思わせといて、このポールって男(M・ラファロ新境地)イイ人すぎるし!!
これじゃあねぇ、子供達は懐くし、妻もヨロめいちゃうわな、それはもう…。
ハイ、そうなりますと黙ってられません、父親は!!(ってか夫役のベニング)
自分の立場危うし!ですからね。ポールなんかに奪われてたまるか!そもそも
ただ精子提供をしただけの男に、なんで自分ちを乗っ取られなきゃならんのだ?
もう、この面白さときたら♪ゲラゲラ、クスクス、ニヤニヤ、もう笑いっぱなし。
やがて。。。
仲良しだった家族に少しずつヒビが入り始める。ポールの出現以来、さらに
口喧しく威張り散らす夫(ベニング)に、皆が困惑し嫌気がさしてくるのである。。
とはいえ家族一番!のベニングであるからして^^;改善策を講じ、ポールとも
何とか仲良くやっていこうと思い始めた矢先に…とある事実が発覚してしまう…
思いきり笑ったと思ったら急転直下、ラスト付近からは涙がポロポロ出始めた。
なんなんだろう、この映画は。
どこの家庭にもある悲喜劇に他ならない。ゲイだといって特別な生活ではない。
家族が皆それぞれに思い合い、愛し合い、何とか上手くやっていこうと思うのに
気持ばかりすれ違う…この可笑しみと哀しみ。巧いな、この脚本。すごくリアル。
J・ムーアの独白、それに続くA・ベニングの演技には、なんで受賞しなかった!?
と思わせるほどの説得力があり、ラストに車中で交わす仕草にも頷くこと然り。。
夫婦って…子供って…人生って…様々な思いが交錯する中、このタイトルが光る。
「子供達は、大丈夫!!」
…ホントそうだよな。でもね、なんでこの子供達がたくましくなったか、それは、
両親の素晴らしい愛に育まれて育ってきたから、そういうことが言えるんですよ。
間違っちゃいないのだ、何にも。間違っちゃいないけど、失敗からいろいろ学んで
また家族の絆が深まったってことなのだ。愛は互いを許すことにも繋がるんだよね。
子供達の名演も素晴らしい。なんで小さな作品がこんなに大きな感動を残すのか。
鼻水すすりっぱなしでトイレに駆け込んだ…。我が家も、大丈夫!?だといいが…。
あとポール、その後の人生よい方向へ向かいますよう。
(ベニングに耐えたで賞、ムーアに愛してるで賞、子供達に生まれて良かったで賞を)