「酒を憎んで家族を愛する」毎日かあさん 全竜さんの映画レビュー(感想・評価)
酒を憎んで家族を愛する
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先日観た『酔いがさめたら、うちに帰ろう』が、鴨志田穣自らアルコール依存症と向かい合う闘病記ならば、元妻西原理恵子の漫画エッセイを原作とした今作は、克服を待つ家族の闘病記という意味合いが強い。
裏切りの繰り返しにウンザリしながらも、受け入れる奇妙な絆を自虐的に面白可笑しく、そして、ホロリと描く家族像は西原節が冴えていて、時に笑い、最後は涙が零れた。
親子を通して、だらしなくて甘えん坊の男と尻を叩いて飯を食わせる自立した女という、男には胸の痛い男女関係の悲喜こもごもこそ、西原自身の永遠のテーマである家族愛を凝縮した作品と云えよう。
故にその後、中毒が悪化し、戦地でのトラウマが肥大し、狂っていく模様が際立ち、この病の恐ろしさを浮き彫りにさせる。
約束を破ったダメ亭主を呆れ顔で罵りながらも、心の奥では信じている距離感を実際に元夫婦だった小泉今日子&永瀬正敏が表現し、何とも云えない夫婦の気まずさにお互いの本音が宿っている。
現実から逃げる男と、待ちながらも進む女が同じ方向へ向かう時、初めて愛ってヤツが生まれ、それが輪になり、広がっていく事が家族なのかもしれない。
ドタバタ慌ただしい中、両親以上に絆がしっかり成長していく幼い兄妹の笑顔を目の当たりにした時、混じり気の無い涙を流している自分に気付く。
作者がさり気なく本音で描いているから、我々もさり気なく純粋に観られる。
偽善も悪意も優しさも全て詰まった愛の世界。
西原ワールドが一切、眠くならない理由がわかったような気がした。
では最後に短歌を一首
『宵(酔い)の果て 握るフォーカス 藍(愛)のそば 好きだからこそ 嫌いにならなきゃ』
by全竜
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