「明日も家族。」犬とあなたの物語 いぬのえいが ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
明日も家族。
犬好きには「ある、ある!」づくしのこたえられない作品。
この類は好き好きになるので、出来不出来は差し置いて
観たい人が観ればいい作品。と化している(爆)
前回同様、笑わせて…泣かせて…の構成になっており、
これといった変化はないのだが、どの話にグッとくるかは
人それぞれかな…といった感じ。
冒頭の中尾彬と、犬アキラのコラボには大笑い!!
しかもあのカフェは、よく行く名画座の近くのカフェだ。
けっこうロケ地になってるんだなぁ~なんて思ってたら、
中盤で高畑淳子がキスぅ~!って叫んでいた結婚式場も
知っているところだった(爆)…なんだか面白いv
ある、ある!そういうの!という愛犬家紹介や、
子供より犬を誘拐してしまう犯人とこれまた犬好きな刑事、
おふざけモード全開で、前半は終了。
メインとなる長編と、ラストの一編になるのだが。。。
ラストの一編は、前作の「ねえ、マリモ」と同じなのだが、
少し軽やかな感じ。号泣度では前回の方が泣ける(T_T)
何をしても動物はいつか、先に死んでしまう。
自分にはその想い出ばかりが悲しみと後悔となって襲い、
そこからなかなか立ち直れない(それはもちろん)ものだ。
でも、その一生を通して過ごした想い出は何よりの宝物、
元気な頃は家族の一員として共に飛び回っていたはず。
ペット達も、おそらくその想い出に感謝している(といいな)
もう少し時が経って…悲しみが癒えた頃、そんな想い出を
また作ってみたくなるのだから、動物好きは不思議である。
そしてあの長編…。
まぁこれがメインの話となるのは分かってはいたのだが、
まさかここまで辛い話だとは思わず(病に倒れるのは人間)
子供時代の飼い犬を亡くした想い出を引き摺り、大人に
なっても犬を飼えずにいた主人公が、妻の強引なやる気に
負けて飼うことになるのだが、徐々に近づき、段々仲良く
なっていく主人公とペットを、まさかあんな病が襲うとは…
悪いがこれは、観ていて本当に辛かった。犬より人間が。
渡辺謙の「明日の記憶」を思い出してしまった。
なんであの若さで、やっと犬と仲良くなれたのに…しかし、
どんな立場でも場合でも、犬は飼い主にピタリと寄り添い、
彼のために尽しとおす…うん、描きたいのはそれと分かる。
が、主人公夫婦の於かれた立場と生活に、こちらの視線は
一気に呑まれてしまった。妻の疲労がピークに達した時、
何を思ったか、犬を保健所(のような施設)に連れていき、
何度も振り返る犬を、ただボ~っと見つめるシーンがある。
気持ち的にはゾッとするシーンなのだが、妻を責められない。
だけど本当は、いなきゃいけない家族の一員だったのだ。
記憶を失くしていく夫とそれを支える妻の間にはラッキーが。
ああそうか。だから犬とあなた、の物語なんだ。
辛さに負けそうな話だったが、記憶が退行した彼が、ふと、
昔の飼い犬の名前を読んだ時(これが実際にあるか謎だが)
ラッキーがそれに応えるシーンには、やはり泣けた。
世話をするものが増えると大変だと思いがちなところだが、
それは子供が増えるのと似ていて、不幸ではないのである。
手を尽くすものが増えるのは、本当は有り難いことなんだな。
人間も負けちゃいられねぇ!犬はみんな強いな。
(エンドで流れる愛犬達の名前、俳優陣より多分多いでしょう)