ヌードの夜 愛は惜しみなく奪う : 映画評論・批評
2010年9月21日更新
2010年10月2日より銀座シネパトスほかにてロードショー
いつものように主演女優と観客に覚悟を求める石井ノワール最新形
つねに主演女優に覚悟を求める石井隆監督だが、前作の「人が人を愛することのどうしようもなさ」の喜多嶋舞に続いて、今回の「ヌードの夜 愛は惜しみなく奪う」で、悩み、追いつめられ、しかし、果敢に自己解放を成し遂げたのが、ヒロイン=れん役の元グラビア・アイドルの佐藤寛子だ。
肉体すべてをさらけ出し、彼女は石井式ファム・ファタル最新形にけなげに必死に応えている。タイトルからもわかるように、映画は17年前の「ヌードの夜」の続編という形をとる。代行屋=紅次郎(竹中直人)にも当然のように老いが忍び寄っていて、竹中の老いと佐藤の弾ける肉体の対比が哀愁を生む。彼の事務所に、手書きポスターを頼りにひとりの女が訪ねてくる。富士山麓に散骨したが、一緒にロレックスも捨てたようだ。探していただけますか……。
その女は、続けて、ある女性の捜索も頼んでくる。この依頼には当然のように裏があり、竹中はその罠におちつつ、ひとりの女のおぞましい過去とさらに悲惨な現在の境遇に向き合わされることになる。<散骨>という言葉は美しい嘘で、その男は母娘3人(大竹しのぶ、井上晴美、佐藤)によって保険金をかけられ殺された老人の解体死体であった。冒頭の浴室での解体シーンのパワフルとしかいえない描写はあえていえばまさに<映画的>な躍動がみなぎっていて、すばらしい。もちろん、ここだけで引く人は引く(笑)だろうが、そもそも観客も覚悟をもって臨まねばならない。
(滝本誠)