スプライス : 映画評論・批評
2011年1月11日更新
2011年1月8日より新宿バルト9ほかにてロードショー
<新生命体>ジャンルをひねりにひねったB級ホラー
DNA実験が生んだ新生命体、といっただけで素敵ないかがわしさが漂う。このジャンルはどう転ぼうが面白い。医学倫理からの逸脱が生んだクリーチャーの形状、与えられた性格はどのようなものか? そうしたポイントだけでもワクワクする。このわくわく感こそジャンル継続のDNAといっていい。まして、脚本・監督が「CUBE」のビンチェンゾ・ナタリと聞けば、いかがわしさと期待が観る前に全開する。ナタリは<新生命体>ジャンルに、スリリングなアイデアを組み込んだ。成長の速さというのは多いが、ナタリはこれをまたひねったのである。ひねるというよりひねりきった。核心部分なので明かすわけにはいかない。アーシュラ・K・ルグインのあるSF長編の<性>に絡むアイデアをホラーに適用、というぐらいにとどめておく。
ただ、このひねりによって、当初のA級の香りがいきなり、B級モード、ホラーの常套モードに突入し、クリーチャーの造型も想定内の形状となるが、これもナタリのサービスと受け取っておきたい。「スプライス」は、結合の意味だが、映画の内容に即したいかにも卑猥なタイトルである。
登場人物は極小単位、クライブ(エイドリアン・ブロディ)とエルサ(サラ・ポーリー)の科学者夫婦にクリーチャー<ドレン>。このドレンは有尾にして、小動物のような手足、中央に切れ目の入った頭蓋、目と目の離れ具合がなんともチャーミング。まず、ドレンが試みたことは、クライブの誘惑であり、次に……。あとは観てのお楽しみ。
(滝本誠)