樺太1945年夏 氷雪の門

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樺太1945年夏 氷雪の門

解説

第二次世界大戦末の樺太を舞台に、ソ連の進攻作戦の真只中で最後まで通信連絡をとりつづけ、若い生命を投げうった、真岡郵便局電話交換手の九人の乙女を通して、戦争への怒りを描く。原作は金子俊男の「樺太一九四五年夏・樺太終戦記録」。脚本は国弘威雄、監督は「あゝ海軍」の村山三男、撮影は西山東男がそれぞれ担当。全国公開直前に急遽公開が中止され、その後北海道など一部地域での短縮版での限定公開となる。2010年にデジタルリマスター版(DV/119分)が製作され初の全国公開となった。オリジナル全長版は153分。

1974年製作/109分/日本
配給:東映洋画
劇場公開日:1974年8月17日

ストーリー

1945年夏、樺太西海岸・真岡町。太平洋戦争は既に終末を迎えようとし、報道機関は刻々迫る終焉を報じていたが、戦禍を浴びない樺太は、緊張の中にも平和な日々が続いていた。真岡郵便局の交換嬢たちは、四班にわかれて交替で任務についていた。彼女たちは仕事の合い間にスポーツや音楽会などで楽しい青春の時を適していた。8月6日、広島に原爆が投下された数日後、ソ連は突如、参戦し、日本への進撃を開始した。その報を聞いた律子は心を痛めた。彼女の恋人・忠夫が国境の日の丸監視哨の小隊長として警備についていたのだ。札幌での楽しかった二人の思い出が瞼に浮かぶ--だが、楽しかるべき青春を考える余地はなかった。怒涛の如く戦車を先頭に南下するソ連軍は、次々と町を占領していった。戦禍に追われた罹災者たちは、長蛇の列をなして真岡の町をめざした。交換嬢たちは、刻々と迫るソ連軍の進攻と、急を告げる人々の電話における緊迫した会話を、胸の張り裂ける思いで聞き入っていた。そして、彼女たちは、秘かに青酸カリを胸にかくし持っていた。8月15日--。全く突然に終戦の報がもたらせられた。それはあまりにも突然で信じられなかった。やがて、樺太全土に婦女子の強制疎開命令が出された。だが、交換嬢二十人は引揚げもせず、“決死隊”の編成に参加し、交換手として職務を遂行しようと互いに励ましあい、責任をはたそうと心に誓うのだった。しかし、ソ連の進攻はやまなかった。むしろ、その進攻に激しさを加えてきた。そして8月20日。突如、真岡の町の沿岸にソ連艦隊が現われ、艦砲射撃を開始した。人々はうろたえ、ある者は逃げ、ある者は最後の抵抗を試みようとした。しかし、艦砲射撃とマンドリン銃の前に、捨身の闘いは通じなかった。やがてソ連軍は上陸を開始、町は紅蓮の焔と銃の乱射によって様相を変えた……。この時、関根律子を班長とする第一班の交換嬢たちは局にいた。緊急を告げる電話の回線と、まだ避難を続ける町の人々へ、その避難経路を告げ、多くの人々の生命を守るためにも、彼女らは職場を死守した。じりじりと迫るソ連兵の群。ただ一本の電話廻線からは、局長の職場を捨てるように、との声が聞こえる。律子はポケットから青酸カリの瓶を出した。他の八人の乙女たちは律子の側に寄った。そして、彼女ら九人は服毒した。最後まで電話交換嬢として、プレスを耳にかけたまま……「みなさん、これが最後です。さようなら、さようなら……」。--現在、北海道稚内市・稚内公園内に、失われた樺太を遥かに望んで、厳しい風土に耐えて生きぬいた樺太民島を象徴するかのような女人像が建っている。これは「氷雪の門」と呼ばれている。

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スタッフ・キャスト

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(C)「氷雪の門」上映委員会

映画レビュー

5.0全国の中学、高校の学校で観せるべき映画

2019年12月18日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

氷雪の門
今では、同名の札幌すすきのにある高級かに料理店の方が有名だろう

しかし本当の氷雪の門は北海道稚内の高台にある
8月の稚内は快晴であっても、半袖では肌寒かった
終着駅の稚内駅からほど近くにある
最北端の宗谷岬は駅から少し遠いが、もう一つの岬ノシャップ岬は近い
遥か彼方にうっすらと樺太の山並みが望める

日ソ中立条約破棄、対日参戦
敗戦、無条件降伏による停戦
しかし、ソ連軍は停戦せず侵攻を続け、その結果何が起こったのかを本作は描く

日本領土であった南樺太は阿鼻叫喚の地獄と化したのだ

それを樺太西海岸にかってあった真岡という都市の当時は電話局も兼ねていた郵便局を舞台に、電話交換手の若い女性達の目を通して描く
その運命は実話を基にしたものなのだ

稚内の高台にある氷雪の門と、皆さんこれが最後です、さよなら、さよならとある慰霊碑は、だからそれを伝えるものなのだ
実際に起こったことなのだ

組織だってソ連軍の侵攻から防衛しようとする陸軍も描かれるが、ポツダム宣言受諾を前にして手足を縛ったような抵抗しかできない命令が下される有り様も描かれる

積極的攻勢に出て越境すべからずと

そして終戦後も停戦を無視して侵攻が続く中、このような命令が届く

先に武装解除、軍旗奉焼につき指示したるも、自衛の為の戦闘はあくまで継続すべしと

これは平和憲法と言われる内容を先取りした命令だ
軍備、交戦権の放棄と自衛権の並立だ

その結果、一体何が起こるのか
どのような事になるのか
それが描かれている

つまり平和憲法は、本作で描かれたその時点で時を停めているといえる

極めて危険で国民の生命と財産を危険にさらして
逆に戦争を呼び込んでいることがよくわかるだろう

自衛隊も手足を縛られていざとなったとき、本当に国民を守れるのだろうか?

本作はソ連のクレームがついて、大手映画会社が配給から手を引いた幻の映画とされる
本当かどうかは諸説あるようだ
しかし、今でいう忖度が行われたのは疑いようもない

沖縄のひめゆりの塔は21世紀の今日でも、大きく取り上げられて人々に広く知られているが、この樺太そして北方四島におこった悲惨なこと、本作に描かれた真岡の電話交換手の女性達の悲劇は忘れ去られようとしている
全く不思議でおかしなことだ

全国の中学、高校の学校の授業として平和教育として本作を観せるべきだ
平和憲法とは何なのか
本当に国民を守るものなのか
逆に戦争を呼び寄せて国民を危険にさらしているのではないのか
それを考える機会になるはずだ

戦争するくらいなら殺されようという、夢想的平和主義者、平和憲法を守ろうと叫ぶ団塊左翼老人達の主張は一体どのようなことなのかを本作を観れば理解することができるだろう

それは、本作で描かれる、自衛する手段もなく殺されていく樺太の日本人の阿鼻叫喚の姿だ

それを彼らは21世紀の日本に呼び寄せているのだ

追記
1983年9月1日に発生した大韓航空機撃墜事件の現場は奇しくも本作で描かれた樺太真岡の上空だったのです
ソ連軍の戦闘機のミサイルでジャンボ機が撃墜され、乗員・乗客合わせて269人全員が死亡した事件です
その慰霊碑は氷雪の門のあるノシャップ岬の近くのもう一つの岬、宗谷岬の公園にあります

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あき240

4.0ソ連の圧力でお蔵入りになった、隠れた名作

2019年10月31日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

真岡郵便局事件を描いている。
不可侵条約を破棄して突如侵攻を始めるという、いかに露助が卑劣なのか、そしてソ連から圧力をかけられ封印されたという怒り。本作を創った人たちの労苦を噛み締めながら観る。
大本営からの指示に反発し「なに?越境すべからず?」と怒鳴る丹波哲郎も必見。

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さすまー