劇場公開日 2010年8月7日

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「凍り付いた右手を離そうとするとき、皮膚がへばりついて、ぺろりと剥がれてしまう所は、ぞっとしました。」フローズン 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5凍り付いた右手を離そうとするとき、皮膚がへばりついて、ぺろりと剥がれてしまう所は、ぞっとしました。

2010年8月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 真夏に、真冬のスキーの話はチョット違和感があります。けれども、目的の身の毛もよだつような恐怖感を90分間たっぷりと味わされられて、緊張感で身体がガチガチに凍えました。猛暑にお奨めですね。

 さて、本作のキモはどういう過程で、3人を乗せたリフトがスキー場のど真ん中の空中に置き去りにされてしまうのか。そのシュチエーションのリアルさには、まずまずの仕掛けに成功していると思います。

 まずは、高額なスキー場のリフト利用を何とか安く挙げようと、ダンが仕組んだのは、現地の切符をもぎるスタッフの買収でした。イレギュラーの利用という伏線がまず一番目。次に、調子に乗って終了時間すれすれなのに、買収したよしみで強引にリフトの運転継続をさせてしまうことです。

 そしてここからが、いよいよです。買収されたスタッフは、トイレに行くためにしばらく他のスタッフに変わって貰います。短時間のつもりでしたが、ちゃんと3人のことは伝えました。ところが、山頂から運悪く3人のスキーヤーが駆け下りてきます。リフトに乗った3人も陽気にスキーヤーたちに声をかけます。引き継いだスタッフは、3人の顔も知らないので、3人のスキーヤーをリフトに乗った3人だと勘違い。営業を終了してしまいます。

 リフトもストップし、照明も落とされて、空中に宙づりとなった3名は、大慌てに叫びますが、既に時遅し。終末の3日間のみ営業するスキー場だけに、金曜日までの5日間は誰も救援に駆けつけることはない絶望状態に突入していくのでした。

 こういう流れで、孤立までの経緯としては、充分説得力があります。

 ただその次のシーンで、買収された例のスタッフが、雪上車でスキー場内をパトロールで廻るのです。接近したとき当然、取り残された3人は、リフト上から必至に板やステックなどを雪上車の目の前に投げ落としているのにもむこのスタッフは、全然気がつかないのは、ヘンだと思いました。買収されたことへの腹いせにわざと気がつかないフリをしたのでしょうか。

 雪上車も去り、取り残されたことを自覚した3人は、本気で脱出方法を考えます。勇敢なダンは、彼女のパーカーにいいところを見せようと、自分が先に飛び降りて、助けを呼んでくると、言い張りました。ダンの無二の親友だったジョーは、反対するものの、パーカーがOKしたため、結構するものの悲惨な結果に。
 ダンは、足の骨を骨折するばかりか、その骨が膝を棘のように突き刺す重傷を負い、全く歩けなくなったのです。ダンの足の状態が、リアルすぎて正視できませんでした。痛そう。動けなくなったダンにさらなるピンチが。飢えた狼の群れに襲われてしまうのです。 自分がOKしたばかりに、目の前で恋人が狼に食い殺されることになった、パーカーはパニックになります。そんなパーカーをジョーは、なんでOKしたんだと追い込んでいきます。ジョーにとって、最近恋人になったパーカーよりも、自分の方がダンとの付き合いが古くて、失いたくない親友だった。それを失うはめに導いたパーカーが許せなかったです。

 その後延々と続く、ふたりの会話。場所が固定されてしまっていて、登場人物が二人しかいない状況では、ふたりの昔話が延々と続いてしまうのは、仕方ないとしても、退屈してしまいます。ただその中で徐々に、ふたりが許し合って協力し合える関係に、変わっていくところは、脚本として頑張っているし、二人の演技力も大健闘していて、良く感情が伝わってきました。

 しかし、寒さは容赦なく二人に襲いかかります。パーカーが不注意で手袋を落としたのが、悲惨なことになるのです。一晩リフトのアームを掴んでいた右手が、凍り付いてしまうことに。右手を離そうとするとき、皮膚がへばりついて、ぺろりと剥がれてしまう所は、ぞっとしました。思い返すだけでも嫌なシーンです。
 女性の人は、パーカーが我慢できなくなって泣きながら失禁してしまうところにも、ちょっと嫌悪感を感じるかも知れませんね。

 さて、ジョーは最寄りの支柱までリフトを支えるロープ伝いに、ぶら下がって脱出する方法ほ試してみるのですが、金属ロープのエッジが鋭く、掴んでいる手のひらがすぐに傷だらけとなってしまい、うまくいきません。たとえ無事おりたとしても、飢えた狼の群れが待ち受けています。

 そんな中で、リフトのねじが緩みだして、今にも墜落しそうな危機を迎えます。このままふたりは狼の餌食になってしまうのでしょうか。
 さすがに、ここから先はネタバレできません。しかし、ふたりのうちどちらかが意外な偶然が重なり助かります。そのラストの意外性が、本作最大の見所。果たしてどのような過程で、狼をクリアーしていくのか。あなたはどう推理されますか?

 ネタが限られている中で、90分とコンパクトにまとめたことも良かったと思います。 ただ結構リアルなので、閉所に閉じ込められてしまうのが苦手な方には、お勧めできません。スキー営業期間中だったら、当分リフトに怖くて乗れなくなるかも知りませんね。 お金払ってでも、『REC』を見てしまったような人には、この恐怖感ははまるかもね?

流山の小地蔵
ディアさんのコメント
2016年4月6日

文章がうまくてドキドキする(^-^)

ディア