「この世で最も美しい映画」ぼくのエリ 200歳の少女 よねさんの映画レビュー(感想・評価)
この世で最も美しい映画
雪深い街に住む少年、オスカー。
母と二人暮らしの彼はいじめられっ子。
殺人事件記事のスクラップブック作りが趣味の内向的な子。
枕元に隠したナイフを手に取り、いじめっ子をいたぶる妄想に耽る毎日。
そんなある夜、彼のアパートの隣に年老いた男と少女が引っ越してくる。
数日後少女はアパートの前で妄想に耽るオスカーに声をかける。
"私はイーリ。
あなたと同じ12歳よ。
・・・だいたいだけど。"
不思議な雰囲気を持つ彼女とぎこちなく接するにつれ、オスカーはしだいに彼女に興味を抱き始める。
一方、男と少女が街に来て以来無差別連続殺人事件が起こり始める。
"いじめられたらやり返すのよ。
やられたよりもひどく、ね。
そうすればもう彼らはいじめないわ。"
そう静かに諭す彼女に導かれるようにしてオスカーは少しずつ彼女の秘密に気づき始める。
そして、自分の人生が薄氷の上を歩くように危なげで虚ろなものであることにも。
"私の一部になって・・・少しだけ"
その願いへの答えを胸に秘めたオスカーの運命はしだいに血と雪に彩られていく・・・。
『Let the Right One in』
とても印象的な響きを持ち、かつ物語を見事に表現しているタイトルだ。
今世紀最高のヴァンパイア映画と評判のスウェーデン映画。
どうしても観たかったがしばし叶わず、新橋の輸入DVD屋でようやく手に入れた一品。
スウェーデン映画を観るのは『ロッタちゃん~』以来か。
ただただ美しい雪景色の中で、惨劇が静かに繰り返される。
しかしこれはホラーの皮を被った儚く切ない恋物語だ。
陳腐な喩えをするならば、ヴァンパイアと少年の『小さな恋のメロディ』。
しかしこれが恋であるかどうかは白夜のように白と黒ともつかない。
鮮血と積雪によるコラージュとは対照的に映る。
メイキングの中で監督は言う。
「この映画のラストシーンをハッピーエンドだと思う人もいれば、残酷だという人もいる。それは観客が自分で決めることだ。私にとっては・・・ハッピーエンドだけどね!」
私にとってもやはりハッピーエンドだ、あなたと同世代だから。
・・・だいたいだけど。