「ゾンビの本気度が凄い」ザ・ホード 死霊の大群 クラさんの映画レビュー(感想・評価)
ゾンビの本気度が凄い
閉鎖的な環境で、警官VSマフィアの戦いが描かれ、平和ボケした日本ではまず無いであろう激しい殺し合いが始まる。そこにどこからともなくゾンビの大群が押し寄せ、生きるために反目しあう者同士でゾンビとの戦いに挑む。ストーリーは正直なところ大したことないが、冒頭からド迫力のシーンの連続であり、そのままの勢いでラストまで観る事が出来る作品だ。車の上に立つ人間に向って多数のゾンビの大群が押し寄せるシーンは、人間VSゾンビの象徴とも言える名シーンだと思う。銅像を作って欲しい位だ。
ゾンビの根絶に向けて動く様な大がかりな物語では無く、あくまでも地獄と化したマンションからの脱出というのが目的となっている為、余計な情報は入れず、頭を空にしてゾンビ大虐殺の様を観ていれば良いのである。世界がどうなっているのか位の描写はもう少し必要かも知れないが、それには重きを置いておらず、ハードボイルドな世界観を楽しんで欲しいという製作サイドの意図が伺える。
警官側からの描写が多いのと、相手はマフィアの為、どうしても観客としては警官側に付いてしまうが、意外とマフィアのボスが冷静沈着で物事の判別のついた人間であり、ゾンビ相手でも不要な暴力を振るう仲間に対して制止し、「俺たちが母国でどんな仕打ちを受けたか忘れたのか?」という少しグサっとくるセリフもあり、中盤からは彼に注目してしまう。意外と警官側にはこれと言ったマトモな人物がおらず、名シーンをかっさらって散った以外はモブキャラっぽい印象だ。ヒロインは不倫の沼にどハマりし、挙げ句の果てに仲間が死んでも「せいせいしたわ」と捨てゼリフを吐き、マフィアのボスがちょっと引いた顔をする位だ。彼女は生き残るのだが、ややラストの展開は不満が残る。紅一点のヒロインが生き残って"お前が生き残んのかよ"と思ったのは本作が初めてである。
だが本作はなんと言っても本気度100%のゾンビムービーだ。生ぬるいゾンビ映画では無く、目が覚める様なゾンビムービーを楽しみたい時に最適の作品である。
