劇場公開日 2015年4月25日

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「●ザ・キング・オブ・ドキュメンタリー。」ハーツ・アンド・マインズ ベトナム戦争の真実 うり坊033さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0●ザ・キング・オブ・ドキュメンタリー。

2016年7月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ザ・キング・オブ・ドキュメンタリー。膨大なインタビューと映像の数々。圧巻。
75年アカデミーの授賞式では、保守派のフランク・シナトラが「アカデミー賞に政治を持ち込むな」と抗議。シャーリー・マクレーンが「映画は真実を見つめて平和に貢献しなければならない」と即座に反論したというエピソードがある。

この映画がベトナム戦争終結を早めたとも。

ってことは戦争中に上映されたわけだ。この映画は。上映にも紆余曲折があったようだ。政治的報復を恐れて数々の配給会社が降り、ワーナーの配給が決まったものの、劇中のインタビューに出演した政府高官から出演シーン削除・上映差し止めの裁判を起こされたり。

ベトナム戦争は「自由な報道が許された最初で最後の戦争」だ。従軍したジャーナリストたちが戦場でインタビューする。製作者が主張するシーンは一切ない。だが、強いメッセージは観る者の骨の髄にまで衝撃を与える。
ナパーム弾、クラスター爆弾、枯れ葉剤散布、北爆。これらの凄まじさが映像で展開される。後にピュリッツァー賞を受賞した衝撃的なシーンも、写真ではなく映像で。
シューティング・ゲームのように村が爆撃される。実際、爆撃機に搭乗した兵士は喜々として爆弾を落としまくったという。これが戦争なのだ。そこには理性はない。想像力の欠如。

ドミノ理論。冷戦。政治家たちが激しく主導権争いを繰り返す。「東洋人の命は軽い」なんてことを平気でのたまう将軍も。

攻撃する側。憔悴しきった兵士たち。次々と仲間が戦死していく。娼婦を貪る兵士。脱走兵。捕虜を解放された帰還兵の演説。そして戦争に無関心な一般米国民たち。

攻撃される側。牢屋で腐った魚しか食べさせてもらえなかった政治犯。ひどく殴られて戦後も頭痛が止まらない。石灰と水で体を焼かれる。目の前で家を焼かれるが何もできない。彼らは言う。
「なんの恨みがあって俺たちを攻撃するんだ。娘たちは死んだ。大統領に叩きつけてくれ」
「アメリカが何十年かけてもベトナムは征服できない」

武力では何も解決できない。
イラク戦争。9.11。ISIL。安保関連法案。学ばぬ人類。

爆撃機の多くは沖縄から飛び立っていったという。決して無関係ではない。想像力の欠如の恐ろしさ。この作品を見たら、真実がわかる。

うり坊033