劇場公開日 2015年4月25日

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ハーツ・アンド・マインズ ベトナム戦争の真実 : 映画評論・批評

2010年6月15日更新

2015年4月25日より新宿武蔵野館ほかにてロードショー

ベトナムとイラクを繋げてみると、その病巣の深さが鮮明に

ベトナム戦争を題材にしたドキュメンタリーの金字塔といわれるこの作品では、関係者の膨大な証言と記録映像が緻密に構成され、戦争の全体像が見事に描き出される。

ベトナムの現状を歪曲し、国民を欺き続ける政権。プロパガンダによって強化される反共主義や愛国心、東洋人に対する差別意識。精神的・肉体的に深い傷を負った帰還兵や軍を告発する脱走兵。北爆で家族を奪われた人々の嘆きと怒り。私欲に走る南ベトナムの政治家や銀行家。南ベトナム政府と米軍に農地を奪われ、サイゴンのような大都市に流れ込み、窮乏生活を余儀なくされる難民。多様な視点から戦争の実態が掘り下げられていく。

その実態はイラク戦争と重ねてみることができる。アメリカは軍事介入や侵攻の口実を得るために、ベトナムではトンキン湾事件をでっち上げ、イラクでは大量破壊兵器に関する信憑性の低い情報に飛びついた。ジエムやチャラビという亡命ベトナム人やイラク人を担ぎ、アメリカ中心の資本主義的な世界秩序を構築する足がかりにしようとした。そして、政治的な欠陥を埋めるために圧倒的な軍事力に頼り、ゲリラ戦に翻弄されることになった。

アメリカはベトナムから何を学んだのか。その答えはひとつではない。ネオコンはベトナムのトラウマがあるからこそ、アメリカが再び弱体化することを恐れ、権力を握って世界を変えようとした。ベトナムとイラクを繋げてみると、その病巣の深さが鮮明になる。

(大場正明)

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