4匹の蝿のレビュー・感想・評価
全5件を表示
『白い肌に狂う鞭』『4匹の蝿』の名画座2本立て鑑賞。 ロックバンド...
『白い肌に狂う鞭』『4匹の蝿』の名画座2本立て鑑賞。
ロックバンドのドラマー、ロベルト(マイケル・ブランドン)。
演奏途中のスタジオに舞い込んだ蝿のために、いまひとつ調子が悪かったある日、演奏を終えたあと、謎の男につきまとわれてしまう。
コロセアムのようなところでナイフを取り出した男ともみ合ううち、誤って男を刺して殺してしまう。
殺しただけならまだしも、観客席様のところから、妖しい薄ら笑いのお面をつけた男に、その現場写真を撮られてしまう。
その後、ロベルトを脅迫するように、謎の人物から当時の写真が届けられ、ロベルトの家政婦が何者かによって殺されてしまう・・・
といったところからはじまる物語で、監督・脚本はダリオ・アルジェント。
なかなかミステリー要素の多い映画で、家政婦が殺された後、ロベルトに誤殺された件の男が実は生きており、その男も何者かに殺されるまでは、正統派ミステリーの雰囲気。
この中盤までは、かなりよろしい。
共に暮らしていた妻ニーナ(ミムジー・ファーマー)はロベルトのもとを離れ、ロベルトは事件の解明・犯人を暴くべく、友人のボヘミアン男性ふたりに調査を依頼するとともに、本職の私立探偵にも調査を依頼する。
妻がいなくなったロベルトのもとには妻の従妹ダリア(フランシーヌ・ラセット)が来、ロベルトと仲良くなり・・・というサーヴィスカットを挟んで、ダリアも殺されてしまう・・・
と展開するのだけれど、この中盤からは、ややだれ気味。
ボヘミアンの男性ふたりや、ゲイの私立探偵など、コミックリリーフを挟んでいるのだが、そこがあまり上手くいっていない。
ダリアも殺されてしまうが、死ぬ寸前に犯人を見ている筈と踏んだ警察は、ダリアの眼球を取り出し、網膜に残った像を解析。
そこに映っていたのは、横に並んだ「4匹の蝿」だった・・・
というのは、当時でも、現在でも新味の趣向。
もしかしたら、手塚治虫が『ブラックジャック』で換骨奪胎して使用していたかもしれませんが。
この網膜由来証拠で、ついには予期せぬ犯人が明らかになる・・・のだけれど、まぁ、だいたい予想は付くよね。
ただし、犯人の動機は、納得できない八つ当たり的で、そこいらあたりに納得できない御仁もいるかもしれないが、この手の映画では許せる範囲。
ダリオ・アルジェント監督としては、『サスペリア』などのオカルト趣味&血まみれ映画を作る前の作品で、サスペンス&ミステリーを真面目にやろうとしているあたりに好感が持てます。
出演陣では、マイケル・ブランドンはイケメンでもなく、それほどのところでもないが、ニーナ役のミムジー・ファーマーは少々エキセントリックで役にうってつけ。
そういえば、未見ながら『炎のいけにえ』『危険旅行』など、この後、微妙なB級映画にちょくちょく主演していたのを思い出し、先の2本も観たくなりました。
蝿
イタリアを代表する名匠ダリオ・アルジェント。
彼の作品中、唯一ソフト化されず、1973年の日本封切り以来、実に37年も封印されてきた幻の傑作!
理由は会社の著作権問題等々あるのですが、長くなるので割愛😅
「歓びの毒牙」(69)
「わたしは目撃者」(70)
に続く、ジャーロ(伊製ミステリーの総称)の1本で、後に続く「サスペリアPart2」へのミッシングリンクとしても知られていた、重要な位置を占める作品です。
本作のオープニングに用意されていたテレパシーによる導入を「サスペリアPart2」に流用した事実からも、本作が後の大傑作「サスペリアPart2」の布石になった事はお分かり頂けるかと思います。
エンニオ・モリコーネには珍しいビートのきいた(ロックとは言い難い😅)スコアと奇抜なアングルを駆使した導入部から、壮絶な惨死の瞬間をスーパースロー映像で美しく詩的に切り取ったラストシーンまで、全編に若き気鋭アルジェントの非凡な才気が炸裂しております。
チュニジアで撮影されたあまりにも見事で美しい均整のとれた幻想的シーンを盛り込みつつ、トリノを舞台にした恐怖と戦慄を丁寧な演出で構築してゆき、時にコミカルな笑いをも絡めるという、アルジェントの野心が至る所に介在している作品でもあります。
しかし所詮はジャーロ😅
フーダニット(誰が殺したか)よりもハウダニット(どの様に殺したか)を楽しめない方にはピンとこない作品と言わざるを得ません。
こと、本作に至っては人物関係や、ミスリード(犯人はこいつだ❕と思わせる仕掛け)さえもが中途半端で、純粋なミステリーを求める方は無視された方が賢明かと…😅
かなり辛辣な物言いですが、純然なアルジェント・マニア、若しくは映画製作に興味がある方にとっては宝箱の様な映画。
画面構成、編集、照明、どれをとっても緻密な仕事ぶりが伺え、ワンカット、ワンシーン、の全てがお手本みたいな作品です‼(言い過ぎかな😅)
ともあれ、本作最大の魅力とも言われているクライマックスのスローモーションについて。
実はこのスローモーションは、超高速度撮影によるもの😓
当然、通常の35㎜カメラでは不可能な為、金属の融解を研究する為に使用されていたペンタゼットというカメラをナポリにある大学から借りて撮影に漕ぎ付けたそうです。
時をほぼ同じくして、同イタリアの名匠ミケランジェロ・アントニオーニが「砂丘」という作品のクライマックスで、超高速度撮影によるスローモーションをピンク・フロイドの迫力あるスコアと共に、実に美しく使用しております。
偶然とはいえ、同じ撮影時期に、同じイタリア人が、同じスローモーションで、同じくクライマックスに使用するって…😅
変人は考える事同じかも😅
全5件を表示