アデル ファラオと復活の秘薬 : インタビュー
「レオン」「フィフス・エレメント」「ジャンヌ・ダルク」など、毎回異なる魅力を放つヒロインの活躍を描いてきたリュック・ベッソン監督が、新たに生み出したヒロインアドベンチャー「アデル ファラオと復活の秘薬」。プロモーションのため来日したベッソン監督と、主演に大抜てきされた新進女優ルイーズ・ブルゴワンを直撃した。(取材・文:編集部)
映画監督として再び走り始めたリュック・ベッソン監督
女優としての未来が開けたルイーズ・ブルゴワン
■自分の周囲を見渡す時間がほしかった(リュック・ベッソン)
1999年の「ジャンヌ・ダルク」以降、2000年代はプロデューサーとして精力的に活動していたリュック・ベッソン。05年に6年ぶりの監督作「アンジェラ」を手がけてからは、06年「アーサーとミニモイの不思議な国」、09年「アーサーと魔王マルタザールの逆襲」と再び映画監督として新作を送り出している。数年間の監督としての空白期間を、ベッソンは「充電期間」と話す。
「私としては、製作業に力を注いでいたというよりは、監督業に時間を置いていたという感じなんだ。自分の周囲をゆっくり見渡す時間が欲しかった。少し離れて酸素を吸って、外から自分を見るという時間が必要だった。たとえばインターネットでも、ひとつのサイトばかり見ていると情報がどうしても偏ってしまうよね。パソコンの前に座ってばかりではなく、外に出ることが必要だ。いろいろなことを見ることによって、多くのものが吸収できるんだ」
ベッソン監督はこれまで、「レオン」でナタリー・ポートマン、「フィフス・エレメント」でミラ・ジョボビッチらを見出してきた。「アデル」で抜てきしたのは、毎回趣向を凝らしたファッションで天気予報を伝える「ミス天気予報」として人気を博し、08年に女優デビューしたばかりの新人ルイーズ・ブルゴワンだ。
「アデルは原作コミックもあって、演じるキャラクター像がある程度決まっていたので、それに一番にあう女優を選んだ。年齢や身体的条件、もちろん才能や人間性も重視して候補をしぼっていったら、最終的にルイーズになった。人間性というのは重要だよ。エゴの強い男優や女優は、そういうのがどうしても出てくる。それに、長い時間一緒にいるわけだから、いい人とのほうがいいしね」
■今は女優という仕事を続けていきたい(ルイーズ・ブルゴワン)
世界に知られるベッソン監督作の主演に抜てきされ、一躍注目を浴びるブルゴワンだが、女優になったのは偶然の連続だったという。美術学校を卒業後、画家や美術に関する世界で生きようと思っていた彼女だったが、「偶然にもテレビの世界で仕事をするようになり、そしてまた、こうして映画のお仕事もさせてもらえるようになった。本当に偶然なんです。テレビでちょっと面白おかしいことをやっていたら、ある俳優さんに映画に出てみないかと誘われ、女優の仕事を始めることになりました」
そんなブルゴワンは今回、フランスを代表する名優マチュー・アマルリックと共演を果たした。アカデミー賞候補作「潜水服は蝶の夢を見る」の主演が知られ、ハリウッド映画「ミュンヘン」や「007 慰めの報酬」でも独特の存在感を放つアマルリックは、アデルの宿敵のマッドサイエンティスト、デュールヴー役で出演。特殊メイクを施し、強烈なインパクトを残している。この名優との共演に、ブルゴワンも「最初はちょっと緊張した」というが、「監督からの指導もあって、自然なかたちでできたと思う」と振り返る。「彼はもともと俳優になりたくてなった方ではなくて、いろいろなことをやってきて今の彼がある。だから、他の人とはちょっと違う面白いところがありますね。マチュー自身も私が自信をもってやれるような雰囲気作りをしてくれたと思います」
そして、ベッソン監督はこう付け加える。「そこでさっき言った人間性が大事ということになるんだ。マチューは人間として非常に心の深い人。ルイーズのような新人に対しても、会ってすぐにリハーサルを始めて、一緒に仕事をしてくれるんだ」
ベッソン監督作の主演という大役を務めた上げたことで今、ブルゴワンには女優としての未来が開けている。「テレビの時も、自分のやりたいことをやらせてもらって楽しかったけれど、今は女優という職業にどっぷりつかってしまいました。ぜひ続けていきたいですね」