「原作ラストの方がいい」インフェルノ REXさんの映画レビュー(感想・評価)
原作ラストの方がいい
原作とは違ったラストが、この映画を佳作で終わらせてしまった。
人口増加を食い止めるため過激な手段を声高に叫ぶ科学者(化学者)、それを食い止めるため奔走する主人公ー。
昨今手あかにまみれた題材を扱いつつも、インフェルノが他の作品と一線を画していたのは、主人公の力及ばず実際にウイルスがばら蒔かれてしまったという、驚きの展開があればこそだった。
しかもそのウイルスは毒性のあるものではなく、一定の人間を不妊せしめるために遺伝子を書き換えるというものだった。
主人公は、失敗する。
だが、ラングドンと仲間は諦めず、これから何年かかっても解決すると意志を強く持つ。
これから先どんな災難が人間に襲いかかろうと、困難に屈せず前向きに動き続け、立ち向かい続ける人間がいる限り、未来は決して暗くはないといういわば作者からのエール、そして人間讃歌へと物語は昇華していたのだった。
今回はダンテ自体の謎解きではなく、ダンテを敬愛する科学者が彼にまつわる美術品を暗号の道具として利用しただけにすぎず、はっきりいってシリーズ一、知的好奇心が満たされないものだった。
それでも【ロスト・シンボル】がすっ飛ばされてインフェルノが映像化されたのは、スピード感のある追跡と逃亡、ダンテの描く地獄に現代社会が近づいているのではというイメージが、強烈なメッセージ性をもっていたからだと思う。
即死に至らせるウイルスではなく不妊という緩慢的な死に向かうウイルスは、実は種の保存の観点からは正しい道なのかもしれないと読者に思わせる説得力さえもあった。
何の影響を恐れたのかわからないが、製作サイドでも様々な意見があったのでは?と推測する。
しかしこのラストなくしてインフェルノの本当の魅力は伝えられないと思うと、非常に残念。