「旅行嫌いには面倒臭い見応え」インフェルノ 全竜(3代目)さんの映画レビュー(感想・評価)
旅行嫌いには面倒臭い見応え
トム・ハンクス&ロン・ハワードの黄金コンビが組む謎解きシリーズ第3弾。
かなり大々的にプロモーションを展開しているが、『ダヴィンチ・コード』でCMの時点で犯人が解ってしまうぐらいサスペンス要素のハードルは低く、むしろ、観光案内をメインとしたトラベルミステリーの趣が強い。
故に日本の浅見光彦や金田一耕助etc. の2時間サスペンスの延長線のノリで劇場に出向くのがパターンと化してきた。
世界規模の細菌テロとの死闘は、古くは『12モンキーズ』の頃から散々、演り尽くしているネタでもある。
さすがに3作目となると、創り手もマンネリを打破したいのか、推理のエキスパート、トム・ハンクス教授を冒頭から瀕死の傷を負わせ、記憶をリセットさせる奇襲戦を仕掛けてきたのには、驚く。
なぜ、何処に、誰に、襲われ、更に狙われ続けている《??》だらけのシチュエーションからの幕開きは、いつも超人的活躍を連発する天才教授にハンデを課すことで、観客と同じ視線で追わせ、従来には無い緊張感を銀幕に臭わせ、支配している。
動向する美人看護師、殺人ウィルスで人口を抑制しようと企む大富豪、そして、教授を捕らえようと躍起になる秘密結社etc. etc. 次々と畳み掛ける謎を、今回は、ダンテの《地獄篇》を基にアカデミックに暴いていく。
教授自身も病原菌に感染しているかもしれないニュアンスを常に漂わせており、パニックホラーの世界も垣間見せているのは興味深かった。
しかし、ストーリー早々に犯人が直ぐ解り、トリックがイイワケがましく暴露され、関心が冷めてしまうのは、今シリーズ全体の致命傷と云えよう。
《裏切りの裏切り、つまりは嘘の串刺しは真実に通ずる》
はたまた《神に代わって人類を淘汰する思想はテロリストと何ら変わりない》
と云うメッセージ性は、大袈裟なスケールの割には、月並みに感じ、拍子抜けする。
よって、いつも通り、旅情サスペンスに面白味を求めるのは致し方無い。
しかし、イタリア・ヴェネチア、トルコ・イスタンブールetc. 目まぐるしく駆け巡るロケーションに台詞を追うのがやっとで、ただただ疲れた。
私みたいな旅行嫌いの面倒臭がりには、《謎》よりも先ず、睡魔との闘いを課せられてしまう。
つまりは、そんな映画なのである。
では、最後に短歌を一首
『終(つい)宿す 悪夢の滲み 伝う渦 孕(はら)む螺旋に 道ぞ散りばめ』
by全竜