「子供の犯す犯罪の完全性への説明が足りない」白夜行 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
子供の犯す犯罪の完全性への説明が足りない
総合65点 ( ストーリー:60点|キャスト:70点|演出:70点|ビジュアル:70点|音楽:70点 )
それぞれが抱える泥沼の地獄の苦悩に端を発して、何の力もない子供が心の闇を抱えながら自分を偽り人知れず怪物へと変貌していく。そういう物語の基本は悪くはない。
だがまずそれを裏付ける展開が薄い。小中高とどのようにして世間に知られることもなく彼らは自分たちの極めて密接な関係を長期間維持してきたのか。その手段がモールス信号だけならぱあまりに細い。いくら苦悩や重大な秘密を共有していたとしても、多感な成長期の子供がこれだけのことで人の生死を左右するような関係と行動を持ち続けることに違和感を覚える。また彼らの学生時代がかなりはしょられて描かれているから余計にそう思える。
次に、彼らの犯罪の完全性に疑問が残る。彼らの存在と行動は、彼らの犯した多くの犯罪が完全であり、警察にばれることなく、さらには疑われることすらもなかったから安泰であったといえる。例えば雪穂の母親が死んだとき、その部屋でどうやって内側から鍵をかけていたのか。その後の婦女暴行事件やさらに重大な殺人事件までもあり、特に殺人となれば警察も大規模に捜査をするであろうに、警察はどうしてこうも無能で犯人像に近寄ることすらできないのか。そのあたりが描かれていないのに、自分の立場をよくするためであろう計画通りの犯罪だけがあっさりと成功してすべてうまくいってしまうのには、釈然としない思いが残って納得いかない。まして子供がそこまでの知能をもって完全犯罪を次々に遂行してしまえるという理由が描かれていないのはおおいな不満である。
恐ろしい人の仮面を被った怪物の姿と、それが作られた原因ばかりが描かれていて、結局彼ら二人がそれをどうやって成すことが出来るようになるかについての具体性がこの作品には欠けているのだ。テレビ版も原作も見ていないのでもしかするとそちらにはそういうところまでしっかりと描いてあるのかもしれないが、少なくとも映画版だけ観ると片手押しに思える。自分たちの邪魔になるものは排除し自分たちの役にたつものは利用し、それらを犯罪行為で成し遂げました、でもずっとそれはばれてません、そしてどうやってそれを実行したかも最後まで教えません、というのは製作者側の都合が良すぎる。