劇場公開日 2010年9月11日

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「シリーズを見てきたものなら溜飲が下る完結編です。必見!」ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0シリーズを見てきたものなら溜飲が下る完結編です。必見!

2010年10月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 待望のラストとなる本作をやっと見てきました。捕まってしまったリスベットがどう持ち味を発揮して活躍するのか興味津々でしたが、今回はさすがに直接行動するのは難しかったようです。そのぶん彼女を取り巻く協力者たちが、リスベットと連絡を取りつつ、冤罪を解明していきます。タイトルの『狂卓の騎士』とは上手い表現で、取り巻きの活躍する様は、あたかも眠れる女王に使える騎士団といった風情でした。それにしても、前2作では、ミカエルに対して協力を頼むことは絶対しなくて、いつも単独行動だったのに、本作では明かにリスベットが仲間たちの活動に信頼を寄せている姿は意外でした。
 そしてラストでミカエルに感謝するリスベットに驚くと共に、これで孤独だった彼女の心も癒されたと、ホロリとさせられました。だって見ている方も、1年越しの長い道のりだったのですからね。

 そういう立場で見ていると、彼女の過去が明かされた前作は、身につつまされました。実の父親を殺してしまいたいくらい憎悪にかられた少女時代。その真相が明かされることで次第に、怒りの矛先が、後見人で彼女をレイプしまくったヒュルマンから、精神病院時代の主治医テレポリアンに移っていきました。こいつも影では、ロリコンマリアで、リスベットが強制入院されられた12歳の当時に、身体を拘束して、みだらな行為を楽しんでいたのです。

 狡猾なテレポリアンは、巧妙に自らの淫行を隠蔽し、裁判でものらりくらりと言い逃れします。それだけではありません。奴は事件の黒幕となる公安警察OBの秘密組織と結託し、逮捕されたリスベットにしたり顔でニセの精神鑑定を、裁判所に証拠書類として提出。再び精神病院に押し込む陰謀を立てていたのです。

 いくら優秀な弁護士であるミカエルの妹・アニカが弁護を務めても相手が精神科医では、反論ができません。彼らの目論見通りになるのかという瀬戸際で、仲間たちの活躍により、テレポリアンをギャフンとさせ、信用を失墜させる証拠がもたらせました。ご免なさいここまでは、絶対にネタバレしたかったのです。テレポリアンが本当に憎たらしく、溜飲が下る思いでした。

 本作の大詰めは、公安警察OBの秘密組織を追い詰めること。現職の公安警察から捜査協力を求められたミカエルは、ニュースソースを明かさない代わりに止むを得ず臨時スタッフとなります。警察の庇護を受けられるようになっても、相手は名うての公安警察OB。証拠や証人の抹殺を謀った彼らは、入院先のリスベットから、ミレニアム編集部にまで魔手を伸ばします。編集部自体の危機は、これまでにない展開でした。

 部下に生命の危機が及んだことを深刻に考えた編集長のエリカは、編集部の一時閉鎖とリスベットを弁護する特集号の発行を差し止めにします。
 特集号の発行を通じて、リスベットの無罪をアピールしたかったミカエルは、エリカと口論となり、ふたりの愛人関係にも深刻な亀裂が走りました。
 命の危険も顧みず、特集号の発行に付き進むミカエルの不屈の正義感には打たれました。恐らく観客の多くもエリカと同じように、何でそこまで身体を張らなくてはいけないのか、命あっての物種でしょい言いたくなるくらいです。

 そんなミカエルの骨折りがあるからこそ、ラストに感動してしまうのですね。そして裁判に、鋲と黒革のパンク・ファッションに逆立てた髪型で現れるリスベットは、圧倒的な存在感でした。

 3作を通じて、リスベットの強烈な個性と正義感溢れる社会派のサスペンスに魅了されるシリーズでした。迫力あるシーンが多いので、ぜひ劇場で続けての鑑賞をお勧めします。

 ところで、主演のリスベットを演じたノオミ・ラパスは本作の出演を通じて、一躍国際スターに浮上し、ハリウッドでのメジャーデビューが決まりました。えぐいシーンにも体当たりでぶつかっていく演技がとても印象的でした。次回作も期待しています。

流山の小地蔵