劇場公開日 2010年11月20日

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「家族という小宇宙の不思議」クリスマス・ストーリー マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5家族という小宇宙の不思議

2010年12月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

知的

幸せ

5人家族だが、幼くして亡くなった長男の影を未だに引きずっている。それも一因して、仲のいい者とそうでない者の棲み分けがついてしまったヴュイヤール一家。そこにそれぞれが夫や妻、子供たちを伴って結集するものだから、余計に人間関係が複雑になりギクシャクしてしまう。
そんな一家を中立的な立場で見守る父アベルをジャン=ポール・ルシヨンが好演。優しい目と憎めない唇がいい。むしろ一家を仕切るドンは母ジュノンの方で、すっかり貫禄がついたドヌーヴが、相変わらず好き嫌いがはっきりした自由奔放な魅力を撒き散らす。一家の問題児アンリは、常識を逸脱しているところもあるが、物事の本質を鋭い感性で射貫き、誰彼の区別なしに遠慮なく指摘する。「007 慰めの報酬」の悪役マチュー・アマルリックが狂気と無垢の狭間、すなわち大人になれなかった子供を見事に表出。

物語はというと、家族の誰もが過去を乗り越えられず、不安定な現在におののき、未来を見いだせないでいる。ところが、この作品は彼らの日常を追うだけで、母の命を助ける感動ドラマでもなければ、家族愛を切々と歌いあげる訳でもない。
クリスマスを迎える一週間の淡々とした日々、それぞれが抱える問題が吹き出しては消え、ときには本音をぶつけ合い、そしてまた朝がくる。その繰り返し…。家族という小宇宙の営み。
そうこうして、互いの腹の内が分かったり、少しは相手を思いやる気持ちも芽生えるのだけれど、やっぱりあいつはキライ!許せない!!
キライだけどどうしようもない、家族の本質をさらりとした味付けで描いて魅せる2時間半。

p.s.1 人物名と人間関係を追いかけるだけで精一杯のところがあったり、音楽がジャズからクラシックに前衛的なものまであって、使い分けに意図があったのかまでは解らず、機会があったらもう一度見直してみたいものだ。
p.s.2 三男の嫁さんシルヴィア、演じるのはドヌーヴの実の娘キアラ・マストロヤンニ。ドヌーヴの「あの娘は嫌いよ」という台詞が笑える。
p.s.3 それにしても、皆よく煙草を吸うねー。

マスター@だんだん