劇場公開日 2010年8月28日

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「同じトイレを共有し合うのが家族」トイレット マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5同じトイレを共有し合うのが家族

2010年9月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

少し長いです・・・。

どこの家にもあるトイレ。ほかの設備はなくても生活できるが、トイレがないのは困る。そんなトイレを話題の一画に置いといて、家族の繋がりを描いていく。

私が小さかった頃のトイレで印象的なのは、農家の離れを間借りしていたときのトイレ。外に6畳ほどの小屋があって、入ると暗くて板が何枚も渡してある。板敷きの下全体が溜め壺で、板の隙間から下が見えて恐い。中央だけ板がなくて、そこをまたいでしゃがむわけだ。次に越したところは家の中にトイレがあった。便器は陶器ではなく、よく時代劇に出てくるような大工が板で作ったヤツだ。やがて親父が家を建てて、便器が真っ白な陶器になった。間もなく親父の仕事の関係で、宿泊施設を持った大きな建物に移り住むが、ここがなんと水洗。和式の水洗だが、当時、街のデパートでさえ汲み取り式だった。昭和37年頃のことだ。

では、なぜそこが水洗だったかというと、その一帯はアメリカの進駐軍が撤退したところで、クラブハウスだの教会とともに、ボイラー室や下水処理の設備がそっくり残っていたからだ。小さな商店街の看板は横文字のままで、店のトイレを借りると洋式だったりする。もちろん水洗で、上に設置されたタンクから鎖がぶら下がっていて、鎖についた木のグリップを引っ張ると水が流れる。便器は陶器だったが、便座は木製だった。
アメリカって凄いなって思ったものである。

それが、今や日本の便器が世界の最先端を行くのだから、文化もまた生き物だなとつくづく思う。日本のトイレの洗浄力の発達は、あるものがあったからという話を聞いたことがある。何度も実験を繰り返すのに重宝なものが日本にはあった。←調味料です
文化の違いは、ときとして衝突を起こすが、笑いのネタになることも多く、この作品はそうした視点で描かれている。

萩上直子という監督、カメラもカットも特別凝ったものではない。同じことの繰り返しによって笑いを取る手法といい、セオリー通りの映画作りに見える。それでいて、ほかの監督にはない独特の間がある。まったりとして、おだやかな空気感が存在する。一歩間違えれば眠ってしまう、そんなきわどいライン上で人間の生態を描くのが巧い。
「かもめ食堂」「めがね」に比べると、本作がいちばん動きがある。
対照的に、何も言わぬが、もたいまさこの存在感は大きい。

家族とは何か? 血の繋がりか?
家族とは互いを思いやる者通しが同じ屋根の下で暮らすこと。
同じトイレを共有し合うのが家族と言っているような気がした。

p.s. もたいさんもエアギターに未練があったんだろうね。「かもめ食堂」で話題に出たものの、当時はエアギターなるものの存在を知らなくて、エアギターのコンテストってどんなのか、エンドロールでやってほしかったけど叶わなかった。今回、きっちり穴埋めをしてもらった。

ほんとに長いトイレになってしまった。m(__)m

マスター@だんだん