「ラストシーンが最高過ぎる」幸福(しあわせ)の黄色いハンカチ tricoさんの映画レビュー(感想・評価)
ラストシーンが最高過ぎる
後半、目頭が異常を起こしてずっと頭が痛くなるくらい泣けてくる映画。
やっぱり何度観てもこの映画は好きです。
序盤から一本気の男くささの権化のような勇作(高倉健)と、情けない恥ずかしい、そしてみっともないの3拍子が揃った欽也(武田鉄矢)のはまり様。
もう欽也のダメ加減と言ったら見ているだけでこちらが居た堪れない気持ちになってくるくらい。
ミーハーで、かっこつけで、プライドが高くて、威勢は良いのに喧嘩が弱くて、思い込みが激しくて、女のケツばかり追いかけて、おまけに調子乗りでガサツな上に見た目も悪い。
いたよな、こんな奴。
でも、こんな距離を置きたい奴にも拘らず、実は純粋で涙もろく情に厚かったりする。
そして根っこは優しくて、誰かを助ける事にまっすぐに向き合えたりする。
そんな欽也の成長物語でありつつ、完璧としか思えない勇作の「実は。。。」という謎めいた過去が3つくらい出てくる一人の男の強さも弱さも丸裸にして行くような悲哀に満ちた話でもあり、もう一人、朱美(桃井かおり)に関しても色々とドラマはあるのだけれど、もうそこはすっ飛ばして欽也と朱美が純愛に落ちていくラブストーリーでもあり。
それを偶然北海道で出会った3人の3日間の旅で描いてしまうっていうのがまた、良く出来たシナリオだと思います。
序盤は本当に、キラキラした目で見てしまう勇作と、冷めた目で見てしまう欽也という解り易い二人の関係でしかないのですが、後半に入って勇作がひより始めてグズグズしてくるのにつれ、欽也の方は一直線に前だけを向き、調子に乗って勇作を叱ったりする。
思わず欽也に「おい!」と言いたくなるが、どう考えても欽也が正しくて勇作が悪いのだから仕方がない。
ただ、ここで朱美が正反対の二人を取り持つ役どころとして、本当にいい仲裁をしていく。
いや、ほんとこの辺りの3人のバランスがラストにかけて絶妙になっていく一体感も堪らない。
ロードムービーって、ほんとこれだよな。という醍醐味も最高に味わえます。
でも勇作も完璧だと思ったのに、過去を振り返ると酷すぎる。これが。
光枝(倍賞千恵子)じゃなくても「あんたって勝手な人だねぇ。」と泣きたくなるくらい。
「不器用だから。」で許されるのも夕張に向かい始めるまで、向かってからのグズグズ具合はウジウジに近い。
『草野球のキャッチャー』っていうのは本当にこういう人の事を言うんだと思うくらい。
けれど、そんな今にも身投げするんじゃないか?と心配になる様なボロボロの勇作だからこそ、ラストの破壊力がとんでもなく凄い。
何が凄いってハンカチの枚数が凄い!
過去のやり取りでハンカチ1枚を想像していたのに、一面にはためく黄色いハンカチ。
もう見た瞬間に涙、涙、涙。。。
そして、この後の展開も良すぎる。
道端に車を止めて、優しく抱き合いながらキスする欽也と朱美。
もう、欽ちゃん大好きって、あっさり言わせてしまうこのラストシーンがまた最高過ぎる。
そんな感じで、最高に泣けて幸せになれて、男としてのかっこよさも感じられるいい映画なんですが、このどれだけ時代が経っても色褪せない感っていうのは凄いですよね。
特に欽也なんて、僕が産まれた頃の若者、勇作の世代からは異星人と思われるような新人類。
けれど、その世代に育てられ、とうに40も超えた自分が見ても、いつの時代も若さ故の見苦しさ、みっともなさ、情けなさってこんな男だよな。と思いつつ、とは言え、自分の過去を振り返っても、身に覚えがないとも言えず、少し同情した気持ちも感じてしまう。
そんな男の気恥ずかしさを何十年経っても思い起こさせる武田鉄矢の熱演ぶりは、普遍的で時代を超越した存在感のように感じます。
多分、この辺りは女性が朱美を見て気恥ずかしく感じたりする部分もあるんじゃないか?と思いながら。
きっと男が勇作には憧れるけれど欽也には同情してしまうように、女性には光江には 憧れる けれど朱美には同情してしまうという気持ちがあるんじゃないだろうか?
それから、演出もひたすら感心するのが夕張に近付くにつれ道端にある黄色が目立つようになるところ。
標識やら、看板やら、歩く人々の洋服やら、ラストへの暗示の様に黄色を意識させていく展開が納得と言うか面白いと言うか。
こう、3人の感情が一体感を増して進んでいく様が黄色を求める目線に乗り移っていくかのような。
果たしてこれにそういった効果まであるのか?はともかく、今黄色を見付けないといけないという切迫した思いが受け手に乗り移って来そうな熱意は凄く伝わったような気がして、個人的にこの演出も絶妙だと感じました。
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