劇場公開日 2010年4月10日

「しょうもない男だが、かわいい(笑)。」幸福(しあわせ)の黄色いハンカチ とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0しょうもない男だが、かわいい(笑)。

2021年7月17日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

幸せ

寡黙で背中で語る印象が強い健さん。
でも、この映画の役では、食べる・説教する・グジグジする。

相手の立場に立って考えることをしない男。妻のことをどう思っているんだ!
欣也に説教するけれど、じゃあ、自分は?
初めての子が流産したショックが大きいのはわかるけれど、それで傷害致死って。死んでしまった男がかわいそう。刑期終えればチャラになるもんではないだろう。
挙句に、「待っててくれるなら~」と手紙を出しているのに、その結果を見るのを怖がって逃げることばかり考えている。朱美に諭されて、恐る恐る勇気を出す。
しかも、最後、お礼も言わずに立ち去るとは。
気持ちはわかるけれど、格好のいい男とは程遠い。

それでも、
「こいつと一緒になれんかったら~」と思い詰めるときのあの表情。
光枝が独身だと知った時のあの表情。
光枝とデートしている時のあの表情。
家族に恵まれなかったからこそ、最愛の妻との間に子が授かった、家族ができると知った時のあの表情。
最後、お礼も言わずに、否、感あり余り過ぎて”言えずに”立ち去るときのあの表情。
かわいいんだなあ。

不器用な恋。
もっと、理性をはたらせて、自分を大切にしてくれる人に恋することができたらいいのに、と思う。

でも、現実は、そんな要領よくはできない。
身勝手な男。でも、誠実に愛してくれることは伝わってくる。なのに、やることなすこと、思いと行動が裏腹。そんな行動に振り回される。
傍目から見たら、損なくじを引いたかのよう。
でも、でも、でも…。なんだ。
そんな女の思いが、哀れで、でも羨ましくもあり。
「この女と一緒になれなければ…」そんな出会いがうらやましい。
二度目の恋。バツイチだからこその戸惑い。そんな女が、宝石のように美しすぎる。

そんな女の思いも察することができずに空回っている男。その逡巡が愛おしい。
こんなに無様なのに、なぜかとてつもなく愛おしい。
喜怒哀楽。一つ一つの表情がとっても新鮮。

そんな二人に対して、軽すぎるだろと思いたくなるような若い二人。でも、この二人も不器用。
イタすぎるけれど、どこか愛おしくなる女を演じさせたら桃井さんの右に出る人はいないな。

そのアンサンブルが見事。

物語の筋・結末は有名(って、タイトルやBOXでネタバレ)。
結果はわかっている。だのに役者の演技に引きずり込まれる。
賭けの結果を知るためのドライブでは、いつも胸が締め付けられる。
欣也と朱美に同化して、辺りを探してしまう。島に同化して祈るように目をつぶり手を組み祈りを捧げてしまう。道路のセンターラインにさえ、ぐいぐい引っ張られる。
光枝には、離婚したんだから、もっといい男探しなよと言いたくなるが、光枝の島に対する思い溢れた表情を見ていると、「島と幸せに」と祝福したくなる。

役者によって不朽の名作となった映画。

最後の欣也と朱美の場面はいらなかったかな。余韻がなくなっちゃう。

とみいじょん
とみいじょんさんのコメント
2021年10月10日

talismanさん、コメントありがとうございました。
talismanさんのレビューが見当たらなかったので、こちらにお返事します。

残念ながら、高倉氏×吉永さんの映画は未見です。
 残念映画なのですね…。

高倉氏も、吉永さんも、倍賞さんも、まだ数作しか鑑賞していなくて…。
 高倉氏の『ブラックレイン』も好きです。松田氏に食われてますが(笑)。
 倍賞さんも『男はつらいよ』(1969)の前田氏との倍賞さんもため息がでます。

とみいじょん
talismanさんのコメント
2021年10月9日

高倉健は吉永小百合と共演だと残念映画になりますが、倍賞千恵子が相手になるだけでまるで異なります。

talisman